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2018年度人工知能学会全国大会参加レポート④ ~ これからの人工知能。これからの人工知能社会。~

鹿児島県で、6月5日~6月8日の4日間開催された「2018年度人工知能学会全国大会」の現地レポートの最終回です!

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↑とってもおいしい黒豚とんかつ(とんかつ 丸一)



こんにちは、アナリティクスサービス部の藤田です。 JSAI2018参加レポート、最終回となる今回のテーマは 『これからの人工知能。これからの人工知能社会』。 人工知能分野の著名な研究者たちが、人工知能の未来、人工知能社会の未来をどう予想しているのか。学会の場で発表された内容について、私なりの解釈も加えてお伝えします!

前回までのレポートはこちら!

投稿順 テーマ
第1回 さまざまな業界で応用されているAI
第2回 工業における機械学習の最近
第3回 技術的観点による論文ピックアップ
第4回 (本記事) これからの人工知能。これからの人工知能社会 。

■目次

  • これからの人工知能
    • 『人間の知能とディープラーニング』(松尾 豊 先生)
    • 『人工知能と脳科学:人間にどこまで迫れるか』(甘利 俊一 先生)
  • これからの人工知能社会
    • 『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』(井上 智洋 先生)
  • まとめ

■『人間の知能とディープラーニング』松尾 豊 先生

セッションタイトル:最新の人工知能技術は,未解決問題をどう解決に導くか

※文中の用語 ニューラルネットワーク : 脳の神経回路網を模して数式で表現したモデル。複雑なニューラルネットワークを用いた手法をディープラーニング(深層学習)と呼ぶ。

1.最近のディープラーニング動向

近年のディープラーニング技術の進歩は目覚ましく、まさに日進月歩で次々と驚くべき研究成果が発表されています。

例えば、画像から写っている内容を説明する文章を生成する技術。こちらは画像処理が得意なCNN(Convolution Neural Network)と、言語処理が得意なRNN(Recurrent Neural Network)というニューラルネットワークを組み合わせて実現されています。下の図1は、左の画像を入力するとディープラーニングが何が移っているのかを解釈し、右の文章を生成している例を示しています。

https://ai.google/research/pubs/pub43274
【図1】画像引用元:Vinyals, O., Toshev, A., Bengio, S. & Erhan, D. Show and tell: a neural image caption generator. In _Proc. International Conference on Machine Learning(2014)

強化学習と呼ばれる技術も急速に進歩しています。強化学習をざっくりと説明すると、最初からAIに答えを教えることはせず、試行を何度も何度も繰り返し実行させることで、AIが自動的にコツを学習するという技術です。 下の動画は、 Google が行った実験で、ロボットアームにモノを掴ませるコツを学習させている様子です。

2.人間の知能は2種類のニューラルネットワークでできている?

ディープラーニングの中核となるニューラルネットワークは、脳の神経回路網をモデルにして作られた数理モデルですが、松尾先生は脳の中にある思考回路のこともニューラルネットワークと例えて、表現していました。 松尾先生は仮説として「人間の知能は大きく分けて2種類のニューラルネットワークで構成されている」と考えており、それぞれ認知運動系RNN記号処理系RNNと呼んでいるそうです。

認知運動系RNNとは、すべての動物が生まれながらに持っているニューラルネットワークで、頭の中の思考と外界を結びつける役割があるもの。 例えば、シマウマはライオンを見ると一目散に逃げます。これは認知運動系RNNが使われていると考えています。シマウマは、進化の過程で何度もライオンに食べられる経験を繰り返すことで、「ライオンを見たらすぐ逃げなければいけない」と認識するようになるのです。

記号処理系RNNは、主に言語を扱うニューラルネットワークを示します。認知運動系RNNと違い、外界と結びつかずに頭の中だけで完結できます。例えば、人間は鉛筆やパソコンを使わなくても、頭の中で文章を組み立てることができます。この記号処理系RNNを働かせることで、人間は言語、数字を発明し、数学、物理学などの科学を発展させてきました。

松尾先生は、人間の脳の中にある2つのニューラルネットワークは、少しずつディープラーニングで再現し始めていると考えているそうです。 例えば、シマウマが、自分の瞳に写っているものをライオンと認識することは、CNNによる画像認識と似ていますし、「ライオンを見たらすぐ逃げろ!」と学習する過程は、ロボットがコツを学ぶ強化学習と似ています。また、記号処理系RNNは以前から研究が盛んに進んでおり、例えばGoogle翻訳はニューラルネットワークを取り入れることで精度が飛躍的に向上しました。

3.知能に関する理論の全体像はもうすぐ明らかに

上で示したように、人間の知能は「認知運動系RNN」「記号処理系RNN」で構成されていると考えており、ディープラーニングによって徐々に表現されつつあります。 しかし、まだまだ向上の余地も大いにあるようです。例えば、現在のGoogle翻訳は、記号処理系RNNだけで実装されています。しかし、人間が言葉を使うとき、単純な言葉の文法だけでなく、過去の経験やイメージ、つまり認知運動系RNNも組み合わせて使っています。 したがって、認知運動系RNNと記号処理系RNNを組み合わせることに成功したとき、本当の意味での機械翻訳が完成すると考えているとのことでした。

4.感想

松尾先生の講演を聞き、ディープラーニングをただ単なるツールとしかとらえていなかった私としては、「ディープラーニングで人間の知能を表現する」という観点は非常に興味深いと感じました。 また、ディープラーニングが人間の知能を表現できるものだとすれば、今実現できていること(画像認識、機械翻訳など)はニューラルネットワークで表現可能な世界のほんの始まりに過ぎないということで、今後さらに多様な表現が可能なニューラルネットワークが出揃ってきたとき、それらを組み合わせて創造性を発揮するスキルこそが重要になってくると感じました。

■『人工知能と脳科学:人間にどこまで迫れるか』甘利 俊一 先生

セッションタイトル:[人工知能と脳科学:人間にどこまで迫れるか]

(https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2018/subject/2A0-01/advanced) enter image description here
続いて、数理脳科学の世界的権威である甘利 俊一先生の招待講演の紹介です。

松尾先生はディープラーニングの「可能性」を中心にお話されていましたが、甘利先生はディープラーニングの「弱点」についてもお話されていました。

1.ディープラーニングのブラックボックス問題

ディープラーニングの登場により、画像認識などの精度が飛躍的に向上し、実現可能なことが多様になってきました。大量の画像を用意してに覚え込ませることで簡単に機械が眼を持つことができます。

ただし、ディープラーニングにも弱点があるとのこと。それは、なぜうまくいくのかわからない、つまり、 理論がわかっていない、という問題です。甘利先生は、今後この解釈不可能性が解消されるのか、されないままなのかは非常に重要な問題だと強調されていました。

その理由として、「この場合は、こうすればうまくできる」といったような理論に基づいて、新しいものを作り出すことができない、逆に言うと、いろいろ試した結果、たまたま成功することでしか新しいものを作り出すことができないという点が挙げられます。

2.脳から何を学ぶべきか

人工知能を研究する中で脳を真似する動きがありますが、それは一概に正しいとは言えません。その理由は、人間の脳が作られた進化の過程にあります。人間はアウストラロピテクス以前から、何度も何度も失敗を繰り返し、種が絶滅しないように脳を作り変えてきました。つまり脳は、ランダムに出会った経験をもとに、なんの計画もなく作り上げてきたゴタゴタ設計なのです。

しかし、甘利先生によると、脳にも参考とすべき機能があるとのこと。それは、意識だそうです。 例えば、あることを脳が考えるとき、脳はいろいろな計算を巡らせて計算し、答えを出します。その後、その答えが本当に正しかったのか再考し、場合によっては理由づけて答えを変更します。この再考、変更という思考は「意識」によって実現するもので、今のディープラーニングにはできません。

この「意識」を人工知能で実現するためには、ディープラーニング以上のブレイクスルーを起こす技術が必要とのことでした

3.感想

「甘利先生の主張は、松尾先生の主張と逆なのでは?」と思われるかも知れませんが、私はむしろ近いと考えました。どちらの主張も人間の脳を「参考」に人工知能の発展を目指し、ディープラーニングはニューラルネットワークの発展の始まりに過ぎないという点で一致しているように感じました。

■『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』井上 智洋 先生

セッションタイトル:人工知能は未来の経済をどう変えるか?

最後の紹介は、人工知能が普及した社会において、経済はどのように変容するのかを論じたセッションです。マクロ経済学者の視点から、かなり大胆に社会の変容を予測しています。実際にこの通りになるかどうかはわかりませんが、未来シナリオのひとつとして参考になりました。

1.人工知能は人間の雇用を奪う?

最近こんなタイトルのニュース記事をよく見かけます。

「人工知能の普及によって人間の雇用が奪われる!?」

このタイトルを見て「やばい!」と思う人もいれば、「そんなことはありえない」と静観する人、「働かなくていいや、ラッキー」と思う人、それぞれいると思います。 井上先生は「人工知能が人間の雇用を奪う」ことは、高い可能性で実現するとはっきり断定されていました。ただし、社会全体として雇用が減り始めるのは、2030年ごろに実現されると言われている「汎用人工知能」が誕生した後の話。そして、それはなんら特別なことではなく、馬車を走らせるのを生業としていた人が、蒸気機関の発明によって雇用を奪われた「技術的失業」と何ら変わりはないとのことでした。

加えて「人工知能は人の雇用を奪う」という主張と、「人工知能によって特定の職業が無くなる」という主張は全く異なるという点を強調して話されていました。それは、職業そのものが世の中から無くなるためには、その職業を雇っているすべての会社が人工知能を導入する必要があり、非常に時間がかかるためです。したがって、ある職業の雇用の一部を人工知能に奪われたとしても、社会全体からその職がすぐ無くなるという心配は無用とのことでした。

2.社会の格差は大きくなる?

それでは、雇用を奪われにくい職業、奪われやすい職業とはどのようなものなのでしょうか。井上先生は、「肉体労働」「事務労働」「頭脳労働」の3つに分けて説明されていました。

最も奪われにくいと考えているのは「頭脳労働」。例えば、人工知能・ロボットの設計者、経営者、商品企画者などが当てはまります。次に奪われにくいものは介護、建築などの「肉体労働」。ロボットの開発は進んでいますが、現実世界の複雑な作業に対応したロボットが普及するにはかなりの時間がかかります。そして、最も奪われやすい職業は「事務労働」。書類作成、事務手続きなど、定型的かつパソコン上で行われる仕事は機械で代替されやすいそうです。

こうして、雇用を奪われた事務労働者は、より低賃金の「肉体労働」や、より高賃金の「頭脳労働」に移動するし、社会の格差は大きくなることが予想がされているとのことです。

gazou 画像引用元:井上 智洋 (2016). 人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 文藝春秋

3.汎用人工知能+ベーシックインカムで働かなくてもよい社会が来る?

さらに時代は進み、汎用人工知能やロボット社会に普及している社会を想定します(井上先生は2045年ごろを想定)。汎用人工知能・ロボットによって、事務労働はもちろん、一部の頭脳労働、一部の肉体労働を残して多くの職が代替可能になるとのこと。そして、その雇用を奪われた人を救済する方法としてベーシックインカムが非常に有効だと井上先生は主張されていました。ベーシックインカムとは、全国民に対して月々一定金額のお金を支給する社会制度のことを指し、すでにインドでは2020年をめどに導入することが検討されています。

ベーシックインカムによって国民全員が一定の収入を得ることができるので、人間は働かなくても生活できてしまいます。人間の代わりに人工知能をはじめとする機械が労働を行い、社会、経済を動かしていく未来が来るかもしれません。

4.感想

個人的にはかなり衝撃的な内容で、「これからどうなるんだろう。。」とちょっと不安になったと同時に、大きく社会が変容する時代を生きていくのが楽しみになりました。

ちなみに、井上先生は「働きたくない人が働かなくてもよいならば、それはそれでよい」という考え方のそうですが、甘利先生は「人工知能が働いて人間が働かなくなったら、それは人間が家畜になり下がったということだ」とおっしゃっていました。個人的には、今の「働く」という概念は大きく変わるどころか、もしかしたら「働く」という概念自体がなくなる社会が来るような気がしました。

実際の未来がどうなるにせよ、人工知能分野の発展によって今後の社会がどう変わるか、またどう変わるべきかの議論は、人工知能という垣根を超え、社会全体で活発に議論されていくことでしょう。

■まとめ

ここまで、長文を読んでいただいた方、ありがとうございました。 今回は『これからの人工知能。これからの人工知能社会』というテーマで書きましたが、この他にも

  • 人工知能と倫理
  • 人工知能と安全保障

といったセッションもかなりの人が集まっていました。人工知能が普及した後の社会がどうなるのか、注目度の高さを感じました。

全4回にわたって人工知能学会全国大会のレポートをしてきましたが、いかがだったでしょうか。もし「まだ過去のレポートを見ていない!」という方はぜひそちらも見ていただけると嬉しいです。

投稿順 テーマ
第1回 さまざまな業界で応用されているAI
第2回 工業における機械学習の最近
第3回 技術的観点による論文ピックアップ
第4回 (本記事) これからの人工知能。これからの人工知能社会 。

次回の人工知能学会2019は、日本随一の米どころ、新潟で開催予定です。 ぜひ次回もレポートしたいと考えていますので、かなり先にはなりますが1年後を楽しみにしていてください! f:id:brainpad-inc:20180621164757j:plain:w525



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