博士課程からビジネスの世界へ。「本質を追求する力」を企業で活かす

博士課程出身者のキャリアと聞くと、どのようなイメージを抱くでしょうか? 大学に残って研究者となることだけが進路ではなく、研究活動を通じて得られたスキルや思考力はビジネスの世界でも役に立ちます。データ活用を通じて企業の課題解決や自社プロダクトの開発を手がけるブレインパッドには、アカデミアの経験を存分に活かせるフィールドが広がっています。今回はさまざまなポジションで活躍する博士課程出身者4名に集まってもらい、ビジネスへの転身を決断してブレインパッドを選んだ理由や、研究で培った力がどのように仕事に役立っているのかを語ってもらいました。


金 俊亨
馬場 はるか
森 遥
佐藤 洋行
株式会社BrainPad AAA    


アナリティクスコンサルティングユニット

アナリティクスコンサルティングユニット

執行役員
トランスフォーメーションユニット ユニット統括ディレクター

多様な研究分野からブレインパッドへ集う

── まずは、自己紹介と博士課程で取り組んでいた研究内容を教えてください。

佐藤
執行役員として、トランスフォーメーションユニットの統括を担当しています。出身は九州大学で、農学の博士号を取得しました。研究内容は九州の阿蘇・九重という地域にある牛の餌になる草を育てている草原を、リモートセンシングを使用して分析していました。

馬場
アナリティクスコンサルティングユニットで、データサイエンティストとして働きながら、管理職としてマネジメント業務も担当しています。出身は総合研究大学院大学の天文科学専攻で、太陽系外惑星という天体の研究をしていました。地球は太陽の周りを回っているわけですが、夜空の星、つまり恒星の周りにも実は惑星があるということがここ三十年ほどでわかってきました。私はそのような惑星を観測的に見つけることを目的とした研究に取り組んでいました。博士課程の単位取得満期退学の後にブレインパッドへ新卒で入社しました。


ブレインパッドでデータサイエンティストとして5年間働いた後、現在は今年3月に設立した子会社である株式会社BrainPad AAA(ブレインパッド エーキューブ)で、生成AIを使ったプロダクトの開発に携わっています。九州大学の数学専攻で、代数学と幾何学の類似性、つまり異なるように見える分野の間に、実際は何かの架け橋が存在することに関心があり研究に取り組んでいました。ブレインパッドには新卒で入社しました。


アナリティクスコンサルティングユニットで、データサイエンティストとして働いています。クライアントの社内プロダクト分析用ソフトウェアの開発や保守を担当しています。北里大学の理学研究科で理論物理を専攻し、素粒子理論や数理物理に取り組んでいました。初期の宇宙がどのような様子だったかを、幾何学という数学の方法を使って調べていました。「世の中の成り立ちが知りたかった」というのが私のモチベーションで、そもそも世の中がどうできているのか、その仕組みが知りたいという切り口で研究に取り組んでいました。ブレインパッドには昨年新卒で入社しました。

アカデミアの世界からビジネスへ

── 熱意をもって研究に取り組まれていたなかで、企業への就職を考えるようになったきっかけを教えてください。

佐藤
研究を通じて、農家さんとお付き合いをさせていただくなかで思ったことがあります。農家は1軒1軒がビジネス主体で事業主になっているわけで、農業はビジネスだということを強く感じました。振り返って、自分の研究や農学全体を考えた時に、ビジネスとかけ離れてしまっているという思いがありました。そのまま研究の道に進むことに疑問を持ち、ビジネスについてもっと知りたいと思ったことが企業への就職を考えたきっかけです。


企業への就職を考え始めたのは修士の頃です。純粋数学の研究は、基本的に一人で黙々と取り組む、いわば修行のような世界でした。そんな中、学外活動を通じて研究室の外の人々と働く機会を得たことが転機となりました。チームで何かを成し遂げる楽しさを知り、「もっと人と協働したい」「実社会に直接貢献できる仕事がしたい」という思いが次第に強くなっていきました。数学のバックグラウンドを活かしながら社会に貢献できる道を模索した結果、データを通じた価値創造という方向にたどり着きました。


元々アカデミアの世界で働いていこうとはあまり考えていませんでした。「好きを仕事にしよう」という考え方がありますが、私の場合はそれができない性格で、プレッシャーがかかったり生活に影響があると、楽しくなくなってしまいます。学生までは研究に打ち込み、社会人になれば企業で働こうと考えていました。

馬場
実は修士課程2年の頃から自身が研究に向いていないと感じるようになり、企業で働こうと思いました。ビジネス分野の中でもデータ分析やデータサイエンスに興味を持った理由は、自分が取り組んでいた天文学の研究もデータ分析でしたので、関連性があったことが一つです。加えて、「物事の後ろにある構造」に関心がありました。天文学研究では観測データから宇宙現象の背後にあるメカニズムを探りますが、ビジネスの世界でも同様に、表面的なデータの裏側には何らかの構造があるはずです。データの背後にはどのような人の流れがあり、どんな意思決定や行動があってその数値になっているのかといったことを考えるのが楽しかったのです。その切り口から調べていくと、データサイエンスという仕事があるとわかり、企業を探し始めました。


ブレインパッドに流れる研究室の空気感

── 企業の中でもさまざまな選択肢があると思います。そうした中で、最終的にブレインパッドを選んだ理由を教えてもらえますか?

佐藤
データ分析という技術を活かせて、かつビジネスを理解するために、なるべく小さい会社がいいと思っていました。リクルーターにデータマイニングやデータ分析といったところで企業を紹介してほしいと伝えて、ブレインパッドを含め2社を紹介されました。そこでブレインパッドの創業者である2人が面接をしてくれて、率直に夢がある2人だなと思いました。ブレインパッドは現在、社員数500名を超えていますが、私が参画した2008年当時は従業員が30人でした。


修士と博士を経験する間に、データサイエンティストになりたいという大まかな目標があり、友人からの勧めがきっかけで応募しました。面接でお会いした方々は、専攻分野は自分と異なっていたものの、キャラクターが似ている人が多いと感じました。研究室やアカデミックなバックグラウンドを持ちながら、社会により直接的な影響を与える働き方をしている。そういった社会貢献の姿勢が、面接での会話を通じて伝わってきました。質問の内容も印象的でした。単純に技術面だけを聞くのではなく、その技術をどうビジネスに活かすか、究極的なゴールとして何を目指しているかという本質的な部分を問われました。それが良い刺激となり、ブレインパッドに入社を決めました。


ブレインパッドを知ったのは、日本物理学会での企業出展ブースに足を運んだことがきっかけです。私が初めて話したブレインパッドの社員は実は馬場さんでした。企業協賛セミナーで佐藤さんの講演も聞き、皆さん本当に楽しく仕事をしているのだろうなというのが伝わってきました。

馬場
私が新卒入社1年目の頃ですね。

佐藤
物理学会での出展は私が企画したものでした。ブレインパッドには物理学出身者が多いため、日本物理学会に出展してみたらいい人材と出会えるのではないかと思いましたが、狙いが的中してよかったです。

馬場
私はリクルーターの企業説明会に参加したところ、データ分析やIT系の企業が何社か登壇していて、みんなキラキラしていました。しかし、ブレインパッドは地に足がついている感じで「ああ、落ち着くな」と思いました。人の雰囲気が研究室に似ていて、安心できるという直感でした。実はその時登壇されていたのが、佐藤さんです。

佐藤
研究室のような雰囲気があるよね。


とても共感します。ブレインパッドならではの空気感がありますよね。

── 研究室のような、とはどのような雰囲気なのでしょうか。

佐藤
一言で表すと、本質を見極めたいという思いがメンバーに共通していることでしょうか。「これがなぜこうなっているのか」ということを追求することが好きな人が多いというのが、研究室っぽいと言われる雰囲気を作り出しているのかなと思います。また、ブレインパッドは非常に誠実で勤勉なメンバーが集まっている会社で、その雰囲気が研究室に近くなっているのではないでしょうか。


本質を追求する力が仕事に生きる

── 博士課程で学んだ知識や考え方、スタンスが今の仕事にどう生きているか教えてください。

佐藤
一つのことを突き詰めてその本質を考えていくという過程は、博士課程まで進んだ方がより深く経験することだと思います。

現在、博士課程まで行く人はとても少ないので、自分が研究に取り組む意義なども必ず考えるでしょう。何かの本質や自分自身について深く掘り下げる経験は、ビジネスの世界でも非常に役に立ちます。特に我々のようなデータを活用する企業では、データという抽象的なものを具体の世界でどうやったら活用できるのかを考え抜く際には、研究で培った力が役に立っています。


根本のところで言うと、「わからない状態に慣れている」「どういう種類で、どれくらいわからないのかという、わからなさに対しての解像度が高い」というのが、一つ差がつくところと感じています。何でもかんでもすぐ解決するはずがなく、今の段階ではここまではわかるから、あとは付箋をつけて置いておいて、ゆっくり考えようという、長く考える動きが取れる人が多いです。自分も努めてそうするようにしています。その辺りは、博士課程を経験した人ならではの強みの一つではないかと感じています。

佐藤
ところで、皆さんは博士課程時代に学会発表はよくされていましたか?学会発表では、短い時間で複雑な世界を論理的に組み立てて、人に伝えなければいけない。私は年に2回ほど発表していて、指導教官や先輩からのレビューが本当に厳しく苦労しましたが、それが今非常に役に立っています。

馬場
わかります。私も学部時代から、発表や文章に対してしっかりフィードバックをくれる先生に恵まれていました。当時は意外と凹むこともなく粛々と修正していましたが、社会に出てから急に同じような状況に直面していたら、もっと大変だったと思います。学生という、ある意味指導されて当然の身分のうちに厳しく見てもらえた分、耐性が身につきましたし、自身の納得がいくまで試行錯誤を重ねられたことは良かったです。仕事でのプレゼンも、お客様との会話も論理的に物事を組み立てることが求められます。その点で、博士課程までを通じて積み重ねてきた経験は今に活きていると感じます。


研究発表は自身のアピールになったり、場合によってはそれが研究費の獲得のように経済面につながるケースもあります。ビジネスの側面から自分のアピールポイントをきちんと訴求しないといけない経験ができました。加えて発表単体で終わるのではなく、学会の後の懇親会や、その分野の方との交流会もうまく活用しなければ、結局得られるものが限られてしまいます。つまりそのような一連の取り組みが擬似的な社会経験にもなると思います。発表内容の内部的なレビューもそうですし、学会での質疑応答もそうです。ブレインパッドでクライアントワークを始めたころ、クライアント側の質問を受けた時に、「これは学会で発表した時の質疑応答に似ている」と捉えて、それで乗り越えたり、緊張を和らげた経験があります。


それぞれのポジションでブレインパッドの成長に貢献したい

── これからチャレンジしたいことを教えてください。

佐藤
私が統括しているトランスフォーメーションユニットは、おそらくブレインパッドで一番「何をやるの?」という点が曖昧なユニットだと思っています。アイデンティティをきちんと作って、ビジネスを大きくしていきたいです。

馬場
私にとってはブレインパッドは自分を採用してくれて、能力を発揮する場をくれた会社で、ずっと続いてほしい大切な場所です。新卒入社から数年が経ち、ようやく恩返しできる立場になってきました。会社が成長するために、また、とくに若手のみなさんが楽しく挑戦できるように、貢献したいと思っています。新卒で入って年数を経てきた自分だからこそできる何かを探し、チャレンジしていきたいです。


データサイエンティストとしての数年間の経験を経て、今年の3月から子会社に出向することになり仕事の内容が変わりました。ブレインパッドのアイデンティティは、知見を共有し合うようなアカデミックな雰囲気と、根本的な部分では技術力にあります。そのようなアイデンティティをもっと保ち続けるようなプレゼンスの向上や発信を頑張りたいと思っています。現在、プロダクト開発もしているので、「ブレインパッドはこういう力も持っていますよ」という対外的なアピールを続けていきたいです。


私の場合は入社が昨年でしたが、1年経ってようやくできることが増えてきた感覚があります。今後は、社内外を問わず「この分野と言えば森」のような自分の得意分野や色をもつことが目標です。

博士課程の経験を自分のキャリアの原動力に

── 博士課程出身者や現在在籍している方へのメッセージをお願いします。

佐藤
博士課程で培った能力はどんなジャンルでも活かせると思っていますので、自信を持って、アカデミアの道だけではなくて、一般の企業まで興味を広げて、自分のキャリアというものを考えてもらえるといいのではないでしょうか。

馬場
私は研究の道で挫折を味わって企業への就職を選んだ立場です。そのうえで同じような境遇にある方に向けて伝えたいことは、研究が合わないなと思っても、その経験が社会に出ると役立つことがあるという点です。いろいろな方向に目を向けていただくといいと思います。研究自体が成功しなかったからダメというわけではなく、研究で培った能力に支えられて私は今働けているのだろうなと感じています。


ブレインパッドの周りの博士課程の人たちは、良い意味で個性的な人が多いです。むしろそのような個性をなくさずにキャラクターを維持してほしいと思います。会社にとっても個性が成長の原動力になっている部分は大いにあります。


アカデミアに行きたいにしても、それ以外に行きたいにしても、自分が納得できる選択かどうか、じっくり考えることが大切です。周りがそうしているからといって、それが正解になるわけではありません。自分に合っていて良い選択肢はこれだときちんと思えるものを見つけられるとよいのではないかと思います。私の場合はそれが就職でしたが、これが全員に対する絶対的な正解だとは思っていません。どういうルートに行くにしろ、自分が納得できるかをよく考えて決めてもらえるとよいでしょう。

── 本日はありがとうございました。

ブレインパッドでは新卒採用・中途採用共にまだまだ仲間を募集しています。
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www.brainpad.co.jp
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