総務部社員の提案で実現した環境配慮のカップリユース。ブレインパッドが考えるこれからのサステナブルなオフィスとは

オフィスで毎日大量に消費されて捨てられる紙コップ。その光景に疑問を持った総務部の内藤さんは、社内提案制度「これDoすか?会議(D会議)」でカップリユースサービスの導入を提案しました。コスト増をともなう提案に経営陣はどのような判断を下したのでしょうか? 社員自ら会社を変えるブレインパッドのカルチャーと、循環型社会におけるこれからのオフィスのあり方について、プロジェクトをリードした内藤さんと、伴走した総務部メンバーに聞きました。


壽乃田 千著 内藤 有紀子 新木 菜月
コーポレートユニット
総務部 総務G
コーポレートユニット
総務部 総務G
上席執行役員
CFO ESG担当
コーポレートユニット統括ディレクター

紙コップの大量消費への違和感から生まれた環境配慮の取り組み

──まずは、自己紹介とそれぞれの仕事内容について教えてください。

内藤
総務部で運営しているファシリティサポートデスクの担当として、来客対応や社員の皆さんからの各種お問合せへの対応、オフィスの設備管理を中心に担当しています。ブレインパッドに入社して4年目になります。

壽乃田
総務部で内藤さんと一緒にファシリティ管理を担当しながら、契約書の電子化や、防災・セキュリティ関連、保険・福利厚生の業務なども手がけています。社歴は約13年になります。

新木
コーポレートユニット(人事部門を除く管理部門)の統括をしています。今回のカップリユースサービス導入プロジェクトは、私が部長を兼務する総務部の取り組みとして進めてきました。

──取り組みをはじめる前のオフィスには、どのような課題を感じていましたか。

内藤
毎日たくさんの紙コップがゴミ箱に捨てられているのを目にしていました。かさばってゴミ箱から溢れることもしばしばで、オフィスの景観を損ねていたのです。紙コップの消費が増えるほど、在庫を保管するスペースも増大していく状況でした。

新木
私が特に気になっていたのは紙コップの使い方です。水を半分ぐらい入れて飲んで、1回の利用で捨ててしまい、そしてまた新しいコップを使う。そのような光景を何度も目にしました。総務部にて「1人1日1カップまでに」と呼びかける掲示をしていたのですが、なかなか浸透しませんでした。

壽乃田
総務部の立場としては、紙コップ自体の値段が上がっていたことも大きな課題でした。このまま高い値段を払い続けて紙コップを買い続けるのか、何か別の方法はないのか。コスト面からも対応策を考える必要に迫られていました。

──そのような背景のなかで今回のカップリユースの取り組みが始まったきっかけを教えてください。

内藤
2024年末のことです。ブレインパッドの本社オフィスの設計を担当したパートナー会社からメールマガジンが届きました。その中で、ファシリティの最新トレンドとして紙コップのリユース・リサイクルサービスを紹介する記事を目にして、総務部内で共有したところ好意的な反応がありました。

壽乃田
内藤さんの共有を受けて、私からも本社が入居するビルの管理会社経由で知った別のサービスを紹介しました。それが今回導入することになった、カップリユースサービスでした。

新木
私のもとには、社内から同じような声が届いていました。ブレインパッドには「ニューカマーチャレンジ」という、中途入社して数か月経った社員が、まだ新鮮な外部の視点を持っているうちに当社に対して改善提案をする取り組みです。その中で「紙コップの大量消費は今の時代に合っていない」という指摘があったのです。総務部内の課題意識と社員の方からの投げかけが重なったこともあり、これは全社を巻き込んでボトムアップ型で進めるのがいいだろうと考え、総務部メンバーに対して「会社に提案してはどうか?」と呼びかけました。

──提案までの準備はどのように進めましたか。

内藤
私たちがカップリユースサービスを提案した「これDoすか?会議(D会議)」はブレインパッドの社員が社内提案できる取り組みです。社員が自由に新しいアイデアや改善案を経営陣に直接プレゼンテーションできる場で、承認されれば予算がつき実行に移せる仕組みになっています。準備の流れとしては、採用するサービスの検討に数か月間をかけた後、D会議用の提案資料を1〜2週間で作成しました。資料は、総務部のメンバー全員と意見交換をしながら完成させました。

新木
総勢7名のチーム戦でしたね。発案者の内藤さんのアイデアをもとに、最終的には総務部全員の思いが詰まった提案になりました。


コスト増でも「本質的な価値」が評価され満場一致で承認

── D会議の本番当日はどのような雰囲気でしたか。

内藤
審査員は取締役会長の高橋さんを含むブレインパッドの経営陣4名でした。緊張しながらプレゼンテーションに臨みましたが、会議の雰囲気はとても温かかったです。オフィスにまつわる提案ということもあり、皆さんが頷きながら親近感をもって聞いてくださっているのを感じました。

壽乃田
私は伴走者として、もし困っていたらヘルプを出そうと思っていましたが、結果的にその必要は全くありませんでした。

── 提案を終えて、審査員からの反応はいかがでしたか。

内藤
高橋さんからは「この提案であれば積極的に進めてよい」とコメントをいただきました。別の経営陣からは「環境をキーポイントにするのであれば、リユースカップの輸送費や洗浄に要する水光熱費等の観点も考慮が必要である一方で、このサービスを使っていくこと自体に大きな意義がある」という後押しがあり、結果的に満場一致で承認をいただきました。あまりに嬉しくて、会議後はそのまま総務部みんなで祝杯をあげたくらいです。日頃は目立つことの少ない総務部の存在感を示すことができたことを誇らしく感じました。

壽乃田
紙コップと比較すると、年間20〜30万円程度のコストアップとなる提案だったため、承認してもらえるか心配でしたが、ウェルカムな雰囲気で認めていただき嬉しかったです。

── コストがかかる提案だったにもかかわらず、高い評価を得られたことをどのように捉えていますか。

新木
これからの持続可能な社会づくりを考えるうえで、「なんでも安いほうがいい」という価値観は適切ではなくなってきています。短期的なコストメリットとは異なる価値を選択することの重要性が高まっているとも言えます。今回の提案が満場一致で承認された背景には、ブレインパッドのValuesのひとつである「本質に向き合う」があったのではないかと思います。
コストは上がるけれども、リユースという選択が本質的に正しく、環境にフレンドリーである。堂々とそう言えたことは当社としても大きな一歩であり、重要なメッセージングとして捉えています。年間20〜30万円のコストアップは、もしかしたら会社全体で見れば大きな変化とは言えませんが、それを「微々たるもの」ではなく「大事なこと」として扱え、総務部メンバーが心の底から「この取り組みをやりたい」と提案し、会社が受け入れてくれた意義はとても大きかったと思います。

── D会議での承認後はどのように実行に移されましたか。

内藤
D会議の資料で示したスケジュール通りに進めることができました。今年の4月から2か月間のトライアルを実施し、6月に本導入を開始しました。導入にあたっては、環境負荷軽減の取り組みとして補助対象となるため、東京都が実施する環境関連の補助金制度を活用しています。補助金申請は初めての経験で苦労する点が多く、本導入に間に合うか心配でしたが、期限内になんとか完了することができました。

── カップのデザインはどのように決めたのでしょうか。

内藤
社内のデザインチームに依頼をしました。デザインには生成AIで作られたキャラクター「ぱっどさん」を採用しました。このキャラクターも社内で行われた「マスコットキャラクター生成 社内コンペ」から生まれたもので、ブレインパッドの社員にとっては親しみのあるものですので、「これしかない」というデザインに決まったと感じています。

壽乃田
今回導入したカップリユースサービスの一つとして、CO2削減量を可視化することができるんです。実際、CO2排出削減量については毎月レジ袋3,000枚の使用をやめたのと同等の効果が出ており、廃棄物削減量については、毎月45Lごみ袋15袋分の使い捨て紙コップを削減している計算です。この取り組みを通じてどれくらい環境に貢献しているかがわかるため、会社内のエコ意識を高めることにも役立つと期待しています。ブレインパッドだからこそ、データを使って何ができるか、模索していきたいです。

①廃棄物削減量:紙コップ1個あたりの重さを5gとし、実際に使用したリユーザブルカップと同数の紙コップが削減されたと仮定した際の削減量です。リユーザブルカップ利用前は実際のところ、これより多くの紙コップが消費されていました。

②CO2排出削減量:リユーザブルカップ1個利用につき、CO2排出量の削減効果は33gとしたときの試算です(レジ袋1枚分、環境省調べ)。 なお、リユーザブルカップ原料の製造時や輸送時、洗浄時に発生するCO2は差し引いています。

自分たちで会社を変えていけるカルチャー

── 今回の提案が採用された背景には、社員が自ら会社を変えていけるブレインパッドのカルチャーが支えとなっているように感じました。

新木
ブレインパッドでは、社員からのボトムアップで会社のあり方を変えていけます。ただしこれは、提案するメンバーと聞く耳を持つ経営陣の双方がいなければ成立しません。双方向の活動があってこそ、D会議のような自主提案の文化が成り立ちます。会社側は耳を傾け、話を聞く傾聴の姿勢を失ってはいけないし、社員の皆さんからも諦めずに発信し続けることが大事です。この両方の矢印がうまく向き合っている状態を続けることが、会社を健全に、風通しよく保つ秘訣だと思っています。

── 次に取り組みたいことはありますか。

壽乃田
たくさんあります。循環型社会の実現に向けて、例えばトイレのペーパータオルもなくしたいという話が出ています。他にも無駄にしている資源を減らしたり、ゴミの捨て方のマナーを向上させたり。社内の環境意識を高めるために何ができるか、総務部全員で考えています。今回のカップリユースも導入がゴールではありません。2年ぐらいでカップが経年劣化して入れ替えが必要となるため、次回は社内でデザインを公募して、ブレインパッドらしいメッセージを入れたものにしたいと思っていますし、来社されるお客様にも使っていただいて話題になるようなものに改善したいです。

内藤
総務部が何に取り組んでいるかを、社内の皆さんにもっと知ってもらいたいです。今回の提案を通じて「総務部ってこういうことも考えているんだ」と知ってもらう契機になったと思いますので、さらに身近に感じてもらえるような仕掛けを作っていきたいです。総務部が単に「裏方」でサポートすることにとどまらず、会社の文化や働き方をつくる大事な存在になっていきたいです。そうした姿を少しずつ伝えながら、社員の皆さんから「一緒に会社を良くしていく仲間」だと感じてもらえるようにしていきたいです。


リモートワーク時代に「あえて来たくなるオフィス」を目指して

── カップリユースの導入を契機に社員の環境への意識やオフィスに対する捉え方も変わってきたと思います。皆さんが考えるこれからのオフィスのあり方について聞かせてください。

壽乃田
今は出社の有無を個人の裁量や働き方により選択できる時代です。その状況でも、ブレインパッドのオフィスを“あえて来たくなる”空間にしたいと考えています。新しい発見があったり、コミュニケーションが生まれたり、「来てよかった」と思えるオフィス。そして「うちのオフィスはこんなにいいよ」と人に自慢したくなるような場所にしたいです。

内藤
同感です。私自身はコロナ禍の時期にブレインパッドに転職してきました。はじめは出社して社員がわざわざ集まることの意味を深く考えていませんでしたが、現在はメンバーが集まった方が距離が近くなり、新しいアイデアや取り組みが生まれるきっかけになると思っています。普段オフィスのメンテナンス業務を行うかたわらで社員同士の会話を聞きながら、そのような雰囲気の良さを感じています。もちろん、社員にもいろいろな人がいて、オフィスの使い方もそれぞれですが、各自が満足できるように配慮を積み重ねれば、もっと良い場所になると思います。

新木
現在のブレインパッドのオフィスを作った2021年~2022年当時、私はプロジェクトリーダーを担当していました。その際のメインテーマは「コロナ禍を経て、どうやってオフィスに戻ってきてもらうか」でした。「オフィスって何のための場所?」という問いに、通り一辺倒で答えるのは、いまや難しい時代です。さまざまなワークスタイルの人たちがいる中で、自分自身にとってのオフィスの意味を見つけてもらう。居心地の良い場所と考える人もいれば、集中できる場所と感じる人、仲間と出会える場所として捉える人もいる。そのような状況を踏まえて、いろいろな仕掛けを施しました。
これからも、一人ひとりが自分にとっての目的を達成できる場所であり続けるために、皆さんの声に耳を傾け、オフィスの使い方を観察し進化させ続けたいと思います。「うちのオフィスっていいよね」という気持ちが、ブレインパッドの求心力の一つになれれば最高です!

── 本日はありがとうございました。

www.brainpad.co.jp
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