創発教室 楽屋裏話 建設的な対話に向けての怒りと無意識の思い込みへの対処 講師:戸田 久実氏

ブレインパッドは、2023年11月1日に、新人事戦略ストーリー「BrainPad HR Synapse Initiative」を発表しました。本記事では、この戦略の特長の一つである独自の研修体系の中から、研修の目玉の一つである「創発教室」の講師陣とのアフタートークをお届けしてまいります。今回の講師は、アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 理事 戸田 久実さんです。※本インタビューは、2024年6月に取材を行っており、所属・肩書き等は取材当時のものとなります。

戸田 久実
アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事

立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現セイコーグループ株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。研修講師、コンサルタントとして民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任し、登壇数は4,500 回を超え、指導人数は22 万人に及ぶ。著書は、『アクティブ・リスニング』『アンガーマネジメント』『アサーティブ・コミュニケーション』(日経文庫)『イラスト&図解 コミュニケーション大百科』『アンガーマネジメント怒らない伝え方』『アドラー流たった1分で伝わる言い方』(かんき出版)など17冊。中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され、累計25万部を超える。


上から下にぶつけられる怒りの性質

西田
本日は、いつもながら素晴らしい講義をありがとうございました!自分も日頃無意識にやってしまっていることなど、改めて気をつけたいと思うことが多くありました。受講した社員にとっても、負の感情が先だって盲目的に怒ってしまうことに対する本質的な理解やその対処法など、日常的に活用できる気づきがたくさんあったと思います。

戸田さん
そう言っていただけて嬉しいです。私自身もそうですが、日々、言い聞かせながら過ごしています。

西田
戸田さんでも、そうなのですね。戸田さんは、2024年4月に一般社団法人日本アンガーマネジメント協会(以後、協会)の代表理事に就任※されました。今後、より多くのビジネスパーソンにアンガーマネジメントを普及させていくという重責を担われますね。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事交代と役員人事に関するお知らせ

戸田さん
そうですね。協会のファウンダーであり、前代表の安藤は、アンガーマネジメントを日本に持ってきた第一人者です。そこから受け継いだ代表という立場として、ビジネスパーソンはもちろんですが、より日常や家庭、教育にも広げていきたいと考えています。

西田
安藤さんが日本にアンガーマネジメントを持ち込んでから、ある程度普及してきたと感じるものの、確かにふとした日常に怒りの渦はありますよね。たとえば、満員電車での社内トラブルやあおり運転、カスタマーハラスメントなどなど。そういった怒りの場面って本当になくならないな、よく見るなというふうに思います。戸田さんは、こういった現象をどうみていますか?

戸田さん
怒りというのは、身近な対象にほど、強くなることを講義でお伝えしました。また、矛先を変えて、ぶつけやすいところにぶつけることもあります。例えば、自分の職場の上司に怒りを持っていても、怒りをそのまま表現できない。その抱えた怒りを絶対に反撃してこないであろう、自分が優位に立てるお客さまの立場でぶつけるという形です。これは、SNSでの炎上でも同様ですし、あおり運転をした人の中で、大きな車に乗っている人の率が高いといったことにも言えるでしょう。つまり、自分が優位を保てる状況において、怒りをぶつけているんですね。

西田
怒りの性質が、こういった現象を引き起こしているんですね。

戸田さん
そう思います。立場が上、キャリアが上、自分のほうがポジションパワーがある、力がある人から下に流れるというのも怒りの性質なんです。
なので、私たちがやろうとしていることは、怒っている人を止めるのではなくて、アンガーマネジメントできる人を増やしていくということなんです。アンガーマネジメントが一人一人できていれば、自分の感情をマネジメントでき、まったく関係ない人にぶつけたり、自分より弱い人にぶつけることはしないでしょうし、誰かから自分に怒りをぶつけられたしても、その怒りに振り回されず対処ができます。そういった人が増えれば、人が人に当たるような怒りの連鎖を生じさせるようなことにはならないんじゃないか、ということを理念に、私たちは、アンガーマネジメントをやっていこうとしています。


怒りの伝染を止める

西田
大変やりがいある仕事であり、素晴らしい理念だと思います。普及していくという観点でいうと、どのようなことが必要だと感じていますか?

戸田さん
現在、協会の会員においては、子どもたちに伝える資格を持つ人を含めて5,500人と、まだまだ数としては少ないので、伝え手を増やしていきたいと感じています。また、厚生労働省が、パワハラ防止のためにアンガーマネジメントが有効だということを発信してくれることもあります。もっとそういう風に、ビジネスパーソンだけではなく、アンガーマネジメントは、どんな人にも必要なんだくらいの周知をしてもらえるような存在にならなきゃいけないと考えています。

西田
なるほど。今日のように企業での社員研修や、それ以前に、学校教育でも取り入れていくと、もっと広がるかもしれないですね。

戸田さん
そうですよね。ただ日本において、教育プログラムに入れることは、ものすごいハードルが高いんですよね。アメリカでは、感情理解教育の中で、アンガーマネジメントの授業が入っていて、子どもたちは、小学校のときからアンガーマネジメントしていたりします。

西田
実は、自分の言葉は自分が一番よく聞いていて、怒るということは、自分の脳を傷つけていると、脳科学的には言われていますよね。たとえば、誰かが怒っている現場に居合わせただけで、自分も嫌な気持ちになり、自らの脳も傷つけてしまうことになる。そして、それが何かしらのトラウマになったりするかもしれないという影響を考えると、国策レベルで、このアンガーマネジメントを広げる必要があるように感じますね。

戸田さん
おっしゃる通り、怒りの性質に「伝染する」ということがあります。情動伝染といって、いろいろな感情が伝染するんですね。たとえば、楽しいという表現をする人がそばにいるとその場が明るくなることもありますが、怒りは、嬉しいや楽しいより、エネルギーが強く伝染力も、強いんです。

西田
怒りは強いんですね・・・。

戸田さん
強いんです。なので、同じ職場とか同じ空間に誰かイライラしている人がいると、その周囲の方までイライラしてしまうような伝染力があるので、その場の環境に大きく影響します。

西田
なるほど。そういった意味でも、こうして繰り返し聞くことで少しずつ浸透させていくことも重要だと思うので、ハラスメント研修と一緒で、アンガーマネジメント研修も、いろいろな立場、レベルで繰り返しやっていくというのが、大切ですね。

戸田さん
繰り返し繰り返し、忘れた頃にもう1回というのが一番いいと思います。ぜひ意識し続けていただきたいです。

西田
本当にそうですね。最後に読者の方に、一言、いただけますでしょうか?

戸田さん
怒りの感情は誰にでもあるものです。でも、それをうまく扱うことができれば断然生きやすくなり、無駄な怒りに振り回されることもなくなります。今は、変化も激しく、何が正解かわからない不確実性の時代といわれていますが、こういう時代を生き抜くためにも、怒りに振り回されず、適切な判断・行動が選べる。これは、これからの時代を生き抜くためにも大事なことだと皆さんにお伝えしたいなと思います。

西田
最後きれいに締めていただきました。今日は本当にありがとうございました。

戸田さん
ありがとうございました。


===================================================================
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

戸田さんの講義内容や、ブレインパッドにご興味をお持ちいただいた方は、ぜひ以下をご覧ください。

■戸田さん関連情報
『アンガーマネジメント』(日経文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532114209

Voicy 『アンガーマネジメントで生きやすく』
https://voicy.jp/channel/4522


■ブレインパッドでは新卒採用・中途採用共にまだまだ仲間を募集しています。
ご興味のある方は、是非採用サイトをご覧ください!

www.brainpad.co.jp
www.brainpad.co.jp