- 新卒社員提案「衛星データ×マルチモーダルAIプロジェクト」が 経済産業省 公募事業者に採択 -迷ったらDoだ!社員から提案が生まれる文化を創る「これDoすか?会議」

ブレインパッドには、社員が自由にアイデアを経営陣に提案できる取り組み「これDoすか?会議」(社内通称:D会議)があります。そんなD会議で新卒入社2年目の社員から提案された「衛星データ×マルチモーダルAI」に関するプロジェクトが、経済産業省から衛星データ無料利用事業者として採択されました。
本ブログでは、D会議や本プロジェクトの裏側をお伝えし、さまざまな提案が生まれるブレインパッドの企業文化をご紹介します。

紺谷 幸弘 嶋 直紀 吉野 倫太郎 志知 晃広
2010年新卒入社
人事担当 執行役員 兼 ソリューションユニット副統括
2023年新卒入社
アナリティクスコンサルティングユニット

2023年新卒入社
アナリティクスコンサルティングユニット

2023年新卒入社
XaaSユニット


D会議発起人

D会議の立ち上げから関わり、人事担当役員として、社員の自主性を重んじる企業文化の継承と発展に注力。


衛星データプロジェクト 参画メンバー

地理情報の活用とGraphRAGの実装担当。後述する「Hack BP」の取り組みをリードし、D会議への複数の提案を後押ししてきた。

衛星データプロジェクト 参画メンバー

テキストエンベディングの実装担当。「Hack BP」では社内環境可視化プロジェクトを主導し、センサーデータ活用の実績を持つ。

衛星データプロジェクト 発案者

衛星画像処理とマルチモーダルエンベディングの実装担当。学生時代から衛星データに関心を持ち、その可能性を追求してきた。

社員からの提案を発掘する「これDoすか?会議」

──まず、「これDoすか?会議」(社内通称:D会議)の立ち上げの背景を教えてください。

紺谷
この取り組みは、2024年4月から始まりました。当社の社員が新規事業や社内改善等の新たなアイデアを経営陣に発表・提案し、その場で経営陣からの「Do!(承認)」を得ることができる取り組みです。これまでで実に20ほどの提案がなされました。

D会議発足にあたっての企画概要(2024年4月当時)
実際の「D会議」の開催風景

■これまでの提案内容(一部抜粋)
・データサイエンティストのコミュニティ運営
・ベビーシッター利用補助制度の導入
・IoTで飲み会を計測したい

当社は、もともと有志による活動が活発な社風で、社内改善を目的とする社内プロジェクトや、勉強会や読書会、イベント開催など、社員が自主的にさまざまな取り組みを行ってきました。しかし最近では会社の規模が大きくなっていく中で、「新しいことを始めたいけれど、どこに相談すればよいのかがわからない」という声が出るようになってきたんです。これまで通り、社内プロジェクトの申請プロセスは存在していましたし、提案をもってきてくれる社員も変わらずいましたが、その周知が十分でなかったり、提案するハードルが高いと感じる人も出てくるという課題が生じ始めていました。その結果として、新しい取り組みを提案できる土壌があることに気づいている人と、気づいていない人が出てきてしまい、健全ではない状態にあると感じていました。
そこで、従来の良い社風はそのままに、「新しい取り組みを持っていく場所に困ったら、まずはここに」という気軽な提案の場としてD会議を設けました。また、ビジネスチャンスの種は、決まった人の考えだけでは限界があります。広く提案を受ける場があることは、今後の会社の成長にとってもメリットになると考えました。

── D会議が開始する前に、すでに皆さんは別の活動をされていたそうですね?


はい。ブレインパッドをハック(改善)する「Hack BP」という活動を独自で行っていました。
これは、会社や世の中をより善くするためのアイデアを持ち寄る場です。きっかけは、新卒研修時代に志知さんと同じグループになり、プライベートでも会社の課題について話すようになったことでした。そんな話をしている中で、優秀な人材やアイデアがまだまだ社内に眠っているんじゃないか?と考えるようになり、「もっとほかの人ともアイデアを出し合える場があったらいいよね」という話になったんです。そこで、仲間を集めて、2023年10月に「Hack BP」を始めました。D会議ができる前から、すでにイベント的に6回ほど実施していたんです。ちなみにこの「Hack BP」のこともD会議で提案し、Do(承認)第一号案件となりました。

吉野
私自身も「Hack BP」でさまざまな取り組みを提案しました。最初に提案したのは社内環境可視化プロジェクトです。社内のさまざまな場所に自作のセンサーを設置して、空調の状態や騒音レベルを可視化するといったものでした。このプロジェクトは、会社にも提案し、総務部から予算をいただいて、実際にセンサーを設置することができました。
また「Hack BP」では、エンジニアやデータサイエンティストだけでなく、営業職の同期からも「お客様への提案時に、過去の事例をパッと検索できるシステムがほしい」といったアイデアも出てくるようになりました。社内の蔵書管理システムの開発や、営業支援ツールの改善提案など、部門を超えたアイディアが集まる話し合いの場としても使われるようになってきた「Hack BP」の活動をしているうちに「D会議」ができたので、よりスムーズに提案しやすくなったと思います。


衛星データで切り開く新たな領域

──そのような土壌があった中で、今回の経済産業省に採択された衛星データ活用プロジェクトが生まれたんですね。このプロジェクトについて詳しく教えてください。

志知
このプロジェクトも、私が「Hack BP」で提案した衛星データ活用アイデアソンが始まりでした。今、宇宙産業は大きな転換期を迎えていて、ロケットの打ち上げコストが下がり、より多くの人工衛星が打ち上げられるようになってきました。そうすると、今までよりも、安く大量に高頻度で、地球を撮影するデータ、つまり衛星データが取得できるようになっていきます。社内でさまざまなデータ活用の取り組みを見る中で、「宇宙から取れるデータ」という新たな領域にも取り組みたいと考えました。そこで、衛星データの活用について同僚と議論を深めるために「Hack BP」でアイデアソンを企画することにしたんです。
データ活用のプロフェッショナルである当社としても、この分野での技術キャッチアップは不可欠だと考えました。生成AIのような新しい技術が出てきた時のように、他社に先駆けて取り組みたいといった戦略的な思いもありました。

「Hack BP」でチームメンバーと議論を重ねる中で、アイデアが具体的になってきました。そして、経済産業省が衛星データを無料で利用して実証実験を行う事業者を公募していることを知り、これはチャンスだと思い、D会議への提案を決意しました。D会議で承認を得た後、チームで応募し、採択されるに至りました。

■令和6年度 経済産業省「衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業」における衛星データ無料利用事業者の公募
https://sdu.go.jp/

──具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?

吉野
現在取り組んでいるのは、不動産分野での活用です。例えば、家を探すときに「渋谷っぽい雰囲気の街に住みたい」といった要望がありますよね。でも、そういった「街の雰囲気」を定量的に探すのは難しい。そこで、「マルチモーダルAI」を活用して、衛星画像から街の特徴を分析し、似た雰囲気を持つエリアを提案するシステムを開発しています。

(注1)「マルチモーダルAI」とは、異なる種類の情報をまとめて扱うAIのこと。画像・音・テキストなど単一種類の情報から学習するのではなく、複数の種類の情報を一緒に学習して、より高度な情報処理を行う。

具体的には、衛星が撮影した画像から、マルチモーダルエンベディング技術を使って意味解釈をベクトル化します。そうすることで、「にぎやかな」「静かな」といった人間の言語表現と、衛星画像から得られる特徴を同じ空間で比較できるようになり、検索を可能にできるのではと考えています。


衛星データの活用可能性については、特に「衛星コンステレーション」の技術が鍵を握ると考えています。複数の小型衛星をネットワーク化することで、高頻度かつ高解像度のデータを取得できるようになります。大量の衛星データとマルチモーダルエンべディング技術を組み合わせると、熊の出没が観測された地域を特定するといったことも可能になるかもしれません。これまでは調査や制作が困難だった地理情報を次々と生み出せるようになると考えています。

──衛星データを活用するプロジェクトに取り組んだ経緯を教えてもらえますか?

志知
もともと、学生時代から衛星データに興味がありました。人工衛星が地球を周回しながら撮影する仕組みそのものに魅力を感じ、特に地球全体を低コストで観測できるという技術の可能性に強く惹かれました。また、SpaceXのような民間企業の台頭により、宇宙産業が身近になってきていることにも期待を抱いていました。そういった興味を持つ中で、ブレインパッドでさまざまなデータに触れている中で、これらに衛星データを組み合わせることは、既存にはない新しい価値を生み出せるのではないかと考えるようになりました。例えば、小売業界であれば店舗周辺の建物の変化や土地利用の変遷を衛星データから把握し、POSデータと組み合わせることで、より精緻な商圏分析や出店戦略の立案ができるかもしれません。

吉野
私は、当社のデータ分析の幅を広げたいという思いがありました。当社がメインで扱っているのは、クライアントのビジネスプロセスの中で生まれる顧客データやテーブルデータがほとんどです。しかし、温度や車の走行データ、スマートウォッチから取得できる生体データのようなセンサーデータにも積極的に取り組んでいく必要があるのではないかと感じていました。また、実は、別の研究で衛星データを使った植生のモニタリングに関わっていて、可能性を肌で感じていたこともあります。
当社があまり使ったことのないデータで何か新しいことができないか。このまま何もしなければおそらく外資系企業などが実現してしまうだろうとも感じていたんです。


私も志知さんと同じく学生時代から衛星データの活用に関心があり、研究室の仲間と公募に挑戦しましたが、当時は力が及びませんでした。今は、生成AIという強力な技術が身近にあり、それを活用できる環境にいます。この技術を使えば、衛星データの膨大な情報を直感的かつ迅速に解析し、新しい価値を生み出せると確信しています。ブレインパッドの挑戦を後押しする企業文化は、学生時代のアイデアを現実にできる絶好の機会だと感じています。

まずはやってみる。チャレンジを育てる組織文化

──会社として、このような提案をどう受け止めましたか?

紺谷
本当に嬉しいことだと経営陣で話しています。そう感じた理由の一つに、彼らがブレインパッドのビジネスの可能性まで考えてくれていた点が挙げられます。D会議で提案する前に、彼らの上司にあたる役員に、今回の衛星データのビジネス活用について事前相談までしたと聞きました。そのような事前相談を通じてビジネスとしての展開可能性まで考えていたことも素晴らしいですし、さらにそれだけではなく、すでに実行できる部分を形にしていたんです。新卒2年目でここまでできるのかと驚きましたし、何より嬉しかったです。
今回のように、彼ら自身がやりたいことだけでなく、会社として取り組む意味合いも考えてくれたことで、会社としても実現に向けた支援をスムーズに行うことができます。それは、今回のような新しいプロジェクトの成功確率を高められることにもつながると思います。実際、このような新しいプロジェクトが成功するか失敗するかは、時の運による部分が大きいです。しかし、今回のように会社と社員が双方歩み寄ることで、お互いをうまく活用しあえることができれば、少しでも成功につながるのではないかと思います。

──D会議やこのプロジェクトを通じて、会社の文化をどのように感じていますか?

吉野
D会議に提案するとき、「ビジネスにどうつなげるんだ」という厳しい反応があるのではないか?と予想していました。経営陣が参加している場で、上場企業でもありますから、固いイメージを持っていました。しかし、D会議の場では鋭い質問もありましたが「どうやって顧客に価値を届けるか・喜んでもらえるか」という建設的な議論になったんです。またD会議の場で「Do!(実行)」が出てプロジェクトが始まってから、ある営業の方から「この内容が提案できそうな顧客がいる」と実際にお客さまに提案までしてくれて。思っていた以上に会社全体からの追い風を感じました。

志知
実際にD会議でDoが出てから、プロジェクトに予算もつけていただきました。うまくいかなさそうだからやめておくのではなく、まずはやってみようというスタンスがありがたかったです。前向きにチャレンジしやすい環境だと感じています。また、D会議には、「提案した人がそのプロジェクトをリードする」というルールがあります。D会議を通ったことで、さらに社内で自由に動きやすくなりました。


今回のプロジェクトに参加して感じたのは、仲間とアイデアを共有し合うことで、想像以上のスピードで物事が形になっていくということです。D会議を通じて、提案が会社全体に受け入れられるプロセスを間近で体験できたことは、私自身にとって非常に貴重な経験でした。

──今後の展望を教えてください。

志知
11月末に経済産業省の実証事業を成功させた後は、今回検証した技術を実際のビジネスで使えるソリューションに育て、社会実装するところまでできればと思っています。衛星データの新しい活用方法を、世の中に示していきたいです。

吉野
このプロジェクトで得られた技術は、他分野でも活用できると考えています。例えば店舗の出店支援です。衛星から取れるデータだけで、そのエリアがどういう価値を持っているのか、どういう特性があるのかが、統計データも含めて全て同じマルチモーダルな空間で扱える。そういった可能性を追求していきたいです。私が関わっている他のプロジェクトでも応用できればとも考えています。


D会議を通した今回の提案プロジェクトで成果を出し、提案しやすい文化や、挑戦を後押しする仕組みを進化させることにも取り組みたいです。チームとしての成果や自分自身の成長と同時に、会社全体がより柔軟に、新しい挑戦を受け入れられる組織文化をつくる一助になれればと考えています。

紺谷
D会議も、次のステージを見据えています。今回の事例のように、熱量と技術とアイデア、この三つが重なったときに大きな価値が生まれます。ただ、これはけっこうハードルが高いはずなんです。そこで重要なのが「仲間集め」です。アイデアを交換し合ったり、「これならできるんじゃないか」というのを話し合う中で、一人の熱量が他の人に伝播していく。そういう場をどう設計していくかが、これからの課題です。
今回のプロジェクトは「Hack BP」という若手の自主的な活動から始まり、D会議を経て、経済産業省の実証事業にまで発展しました。この成功は、単なる偶然ではありません。新卒2年目社員とは思えない戦略的な視点、それを育む企業文化、そして社員の可能性を信じて支援する組織の在り方。これらが重なって初めて実現できたのだと考えています。アイデアはどんどん実践していいし、そのサポート体制もある。今後も、ブレインパッド全体で、このような取り組みを生み出していきたいと思います!

──ありがとうございました。

ブレインパッドでは新卒採用・中途採用共にまだまだ仲間を募集しています。ご興味のある方は、是非採用サイトをご覧ください!
www.brainpad.co.jp
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