CCC、ゲオ、すかいらーく、ディノス・セシール、MonotaROに学ぶ、分析基盤を活用するポイントとは?

こんにちは、広報の辻田です。

IoT(*1)、Industry4.0(*2)、マーケティング・オートメーション(*3)といった言葉が世の中で話題になるにつれ、ビッグデータを活用したいというニーズは、さらに高まりつつあります。自社内にある大量データを活用するとなると、分析基盤の導入の検討が必要となりますが、導入経験のない企業にとってはハードルが高く、「導入から活用まで、どのように行えばよいか分からない」という声もよく聞かれます。

そこで、今回は、当社の取り扱いソリューションの一つであり、すでに多くの企業に導入されてきた、SAP Predictive Analytics(開発元:SAPジャパン株式会社)について、当社のお客様がどのように自社の業務改善プロジェクトに導入し、ビッグデータ分析による業務改善を進めているのかについて事例とともにご紹介いたします。

当社は、SAP Predictive Analyticsの前身である、世界で初めてデータマイニングの分析プロセスの自動化を可能にした「KXEN Analytic Framework(旧製品名)」の販売がスタートしてから約10年間にわたり、このソリューションに取り組み、販売実績および導入企業数は国内一であり、豊富な導入・支援実績を有しています。

*ご紹介する事例の一部に、「SAP InfiniteInsight(旧商品名)」の記載がございますが、現在の製品名は、SAP Predictive Analyticsとなります。

■ケース① カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)
 「Tポイント」のデータを基にした精緻なマーケティング活動を実践してきた、カルチュア・コンビニエンスクラブ株式会社での活用例
 「Tポイントの巨大な顧客基盤から“予測する”ビジネスチャンス、カルチュア・コンビニエンス・クラブが語るビッグデータ活用
 ※日経ビジネスオンラインのウェブサイトにリンクします。

■ケース② ゲオホールディングス
 ビッグデータ分析による業務改善を急ピッチで進める株式会社ゲオホールディングスでの活用例
 「ゲオホールディングスの取り組みから見える、現場の経験を加味したビッグデータ活用の秘訣とは
 ※SAPジャパンブログのウェブサイトにリンクします。

■ケース③ すかいらーく、ディノス・セシール、MonotaRO
 先進的なデータドリブンマーケティング手法で成功をおさめている企業での活用例

昨年開催された、SAPジャパン株式会社主催のエグゼクティブ向け招待イベント「SAP Select」にて講演された内容です。当社代表取締役会長の草野がモデレーターとなり、SAP Predictive Analyticsを使ったマーケティング事例を各社にお話しいただいたもので、多くの方からご好評をいただきましたので、少し前のイベントとなりますが、講演レポートをご紹介させていただきます。

※以下は、2015年10月8日にSAPジャパンブログに掲載されたレポート記事を、一部編集のうえ転載しております。

「すかいらーく、ディノス・セシール、MonotaROのノウハウに学ぶ予測分析を活用したデータドリブンマーケティング」

モバイルデバイスやSNSの台頭で、今後ますます注目が高まるデータドリブンマーケティングの世界。ビッグデータ時代のマーケティング担当者には、ITを駆使した予測分析が求められています。その中で、SAPが提供するGUIタイプのビッグデータ分析ツールSAP Predictive Analyticsを導入して、成果を残している企業が現れています。そこで今回は、株式会社ブレインパッド 代表取締役会長の草野隆史氏をモデレーターにお招きし、先進的なデータドリブンマーケティング手法で成功をおさめている企業から、株式会社ディノス・セシール ディノス事業ディビジョン 営業推進本部 マーケティング部 販売推進ユニット チーフの小山斉氏、株式会社MonotaRO 代表執行役社長の鈴木雅哉氏、神谷勇樹氏※のお3方にお集まりいただき、成功のポイントをうかがいました。※神谷氏は、2015年6月まで株式会社すかいらーく マーケティング本部 インサイト戦略グループのディレクターを務められておりました。


依然としてハードルが高い予測分析マーケティング

草野氏が代表取締役会長を務める株式会社ブレインパッドは、主にマーケティング領域におけるデータ活用支援の事業を手がけ、2006年に次世代データ分析エンジン「KXEN Analytic Framework(現 SAP Predictive Analytics)」の取り扱いを開始。さらに、ブレインパッドが取り扱っていたデータベースソフトウェア「Sybase IQ(現:SAP Sybase IQ)」の開発元であるSybaseをSAPが買収したことを機に2010年にSAPジャパンの販売パートナーとなりました。SAPがKXENを買収した後はデータ分析の分野におけるパートナーシップを強化。多くの企業におけるSAP Predictive Analyticsの導入プロジェクトを支援しています。

今回の対談では、まず草野氏が企業におけるデータ分析の現状や課題、またSAP Predictive Analyticsの特長などについて説明しました。その中で草野氏は「企業においては現状、データを活用した価値創造/競争優位を構想し、成果にコミットできる人材が圧倒的に不足している」「予測分析を活用したマーケティングは大きな変革をもたらす潜在力があるが、まだまだチャレンジするにはハードルが高い部分もある」と言及したうえで、実際にSAP Predictive Analyticsを導入した神谷氏、ディノス・セシールの小山氏、MonotaROの鈴木氏のお3方に質問を投げかける形で進められました。

クリック操作だけで高精度な予測モデルの作成が可能なSAP Predictive Analyticsを採用

草野氏 SAP Predictive Analyticsは、統計学の専門知識がなくても高精度な分析ができる新しいタイプのツールで、データの構造と意味を理解していれば、クリック操作だけで予測モデルの作成が可能です。機械学習によってあらゆる処理を自動化し、ビジネス担当者自身で予測分析が実行できます。さらに、スクリプトを組むことで、何十種類ものモデルの作成を自動化できるシステムの構築も可能です。ただし、予測分析を活用したマーケティングは大きな変革をもたらす潜在力がある一方で、まだまだチャレンジへのハードルが高い部分もあると思われます。そこで今回は、SAP Predictive Analyticsを用いた予測分析によって大きな変革を実現した3社の方に、それぞれのプロジェクトをご紹介いただければと思います。

神谷氏 私が、本年6月まで所属していたすかいらーくでは、代表的なブランド「ガスト」のアプリの分析にSAP Predictive Analyticsを利用していました。具体的には、アプリのアクセスログ、利用履歴などのデータを用いて1人ひとりのお客様の好みを分析し、最適なタイミングでクーポンを送っています。その結果、アプリのダウンロード数は、2014年10月のローンチから7カ月で300万を突破し、売上高の昨対比も導入以前の8カ月と導入以後の8カ月で100.7%から104.9%へと大幅に伸びました。

小山氏 ファッション、インテリアなどの通販事業を手がけるディノス・セシールは、カタログの発行部数を決める際にSAP Predictive Analyticsを利用しています。以前はRFMや会員カードの有無など条件別でカタログを送付する顧客の抽出を行っていたため、最終的な部数決定までが大変でした。そこで、SAP Predictive Analyticsを使用し、前年同時期に発行したカタログの実績をベースに予測モデルを作成し、カタログ発行部数を決めています。

その結果、カタログ別の部数決定が簡単にできるようになりました。また、過去数年間の履歴データから数千の項目を活用して予測モデルを作ることが可能となったために、より正確で多くの情報を盛り込んだ意思決定が実現しています。

鈴木氏 MonotaROは、工場・工事用間接資材、自動車アフターマーケット商品の通信販売事業を行っています。扱う商品点数は900万、全国の中小企業155万のお客様に登録していただいています。媒体はカタログ、メール、Webサイト、ちらし、DM、FAXと使い分けていますが、当社の場合はお客様の業態が多岐にわたるため、個別マーケティングが必須です。例えば、食品業界のお客様に自動車工具のDMを送るといったように、無意味なDMを送るとどんなメールも即座にゴミ箱行きということにもなりかねませんので、細心の注意が必要です。

そのため、これまでも予測分析によってターゲットリストを作成していましたが、従来は1回のモデル作成に1.5カ月もかかり、年2回の分析が精一杯でした。そこで、SAP Predictive Analyticsを導入し、予測分析をより簡単にかつ短期間に実行することにしました。現在はWebログや購買履歴などの変数を利用してターゲットリストを作成しています。そしてメールの送付ターゲットを明確化したところ、販促効果が2倍以上改善されました。

データマイニングをいちはやく経験し、失敗を重ねながらノウハウを蓄積していくことが重要

草野氏 SAP Predictive Analyticsの導入プロジェクトは、どのように立ち上がったのですか。発案者、プロジェクトの牽引役を教えてください。その際、ゴールのイメージは明確でしたか?

神谷氏 すかいらーくの場合は私が発案し、マネージャーが牽引しました。目指したゴールは「One to Oneマーケティング」の実現です。私は以前、ゲームアプリ会社にいましたので、この目標に対して機械学習は有効であると確信していました。

小山氏 ディノス・セシールの場合、発案は当時のマーケティング部長で、ツールを紹介してもらったのがきっかけです。牽引役は私の前任者で、当時のカタログ送付リストの作成担当者でした。ゴールは当初からカタログのセグメントに絞っていました。

草野氏 導入にあたって社内からの反対といったハードルはありませんでしたか。

小山氏 社内に分析系の人材が少なく、限られた人しかデータが作れない状況でしたので、反対意見はありませんでした。実際の導入では従来の作業方法と予測確率を使った方法でテストし、予測精度を検証しながら現状のやり方にシフトしています。カタログ発行の責任者からもわかりやすいという意見が寄せられていて、現在はほとんどのカタログの部数をSAP Predictive Analyticsで決めています。会社としても結果が出ているので満足度は高いようです。

草野氏 通販カタログの発行部数のコントロールでお使いとのことですが、もう少し詳しく教えてください。

小山氏 RFM予測では、1つのカタログ発行で黒字化するものが難しいものもあります。そこで、あるブランドのカタログ発行責任者から最新号の部数決定にツールを使いたいというリクエストがあり、実際に前年比55%の部数でカタログを発行したところ、初動1カ月の段階では予測どおり前年と同じ売上げをキープしており、SAP Predictive Analyticsの精度が証明されました。その結果として、カタログの印刷・配送にかるコストが削減でき、収益改善につながっています。

草野氏 MonotaRO様はいかがですか。

鈴木氏 MonotaROでは、発案が当時の社長で、マーケティングマインドの高い方でしたので、即断で導入が決まりました。ゴールも明確で、当時から増えていく商品点数に対して、適切な情報を提供することを目指していました。

草野氏 SAP Predictive Analyticsの評価をお聞かせください。また、選ばれた理由、もしこれがなかったらどうされていたのか教えてください。

鈴木氏 今では、なくてはならない存在です。もしなかったら、未来予測など考えることなく、従来どおりRFMを使って分析をしたり、直前に購入された商品をベースに販促活動を行っていたりしたでしょう。

小山氏 カタログ発行時の期待収益の計算できるので、高く評価しています。導入検討時は、SAP Predictive Analyticsは誰も知らない存在で、ブレインパッドからサンプルデータを使った分析を見せていただいたところ、高い精度で当たるので、これなら大丈夫だろうと導入しました。今ではSAP Predictive Analyticsを使わない世界は想像もできませんが、なければ従来どおりRFMでセグメント分析していたでしょう。ただし、現在のような会社の業績改善はなかったと思います。

神谷氏 とっつきにくいところがあるのも確かで、運用が軌道に乗るまでは大変でした。SAP Predictive Analyticsの存在はブレインパッドのセミナーで知りました。実際、テストデータでモデルを作成して結果を見てみると精度が高く、データ量が増えればさらに精度が高まるだろうという期待を込めて採用しました。

草野氏 運用が軌道に乗るまでのご苦労はありましたか。これからチャレンジされる方へのアドバイスをお願いします。

神谷氏 苦労はありません。わずか2カ月で導入から活用までスムーズに進みました。あえてアドバイスをするとすれば、今後10年を考えるとマイニングツールはどの企業でも必須のツールであるということです。ビジネスの差別化の源泉でないところは標準化し、本来の業務の部分で競争していくべきです。そのためにはビッグデータによるデータマイニングをいちはやく経験し、失敗を重ねながらノウハウを蓄積していくことが重要ではないでしょうか。

小山氏 注意すべき点は、セットする項目を間違えないことです。当社は1つのモデルを10時間から20時間かけて作り、それが15個にも及びます。もし、パラメータの1つを間違えて処理すると、間違った情報からカタログが発行されてしまいます。ツールであるがゆえに気を付けるべき点です。アドバイスは、企業である以上は利益を最大化するべきですが、当初はモデルの作り方に苦心していた時代がありました。その時に気を付けたのは、ツールが悪いというのではなく、失敗と改善を繰り返してノウハウを蓄積していったことです。

鈴木氏 皆さんと同様、問題はやるかやらないかの世界です。コスト削減のような、改善マインドでビッグデータに取り組んでもうまくいきません。神谷さんがおっしゃっているように、自分たちの差別化ポイントに時間を割くためには、機械学習は非常に有効だと思います。

草野氏 お3方のお話を聞き、分析がビジネスに貢献しているのは素晴らしいと思います。そして、ツールの強みを理解し活用している3社の実行能力が、さまざまな成果を生み出していることが確認できました。本日はありがとうございました。



いかがでしたでしょうか?当社では、今回ご紹介した、SAP Predictive Analyticsのハンズオンセミナーを開催しております。ぜひ、一度、本ソリューションを体験していただければと思います。

■ビッグデータの価値とマーケティングの効率を最大化する!
「SAP Predictive Analytics」ハンズオンセミナー(株式会社ブレインパッド)

 http://www.brainpad.co.jp/seminar/2016/04/18/1859

■SAP Predictive Analytics 製品紹介ページ(株式会社ブレインパッド)
 http://www.brainpad.co.jp/products/SAPPredictiveAnalytics.html

■関連プレスリリース
 ・「セガのビッグデータ分析基盤として『SAP® Predictive Analytics』を導入
   〜事業ドメインを越えて集約した大量データの分析・活用を強力に支援~」
   http://www.brainpad.co.jp/news/2014/06/11/1020
 ・「すかいらーくのビッグデータ分析基盤として『SAP® Predictive Analytics』を導入
   100億レコードを超える顧客データの解析と各種キャンペーンの精度の向上・効率化を支援」
   http://www.brainpad.co.jp/news/2015/02/18/1004
 ・「ゲオにビッグデータ分析基盤として『SAP® Predictive Analytics』を導入
   分析コンサルティングを含め最適な分析・ソリューション環境を総合提案」
   http://www.brainpad.co.jp/news/2015/07/22/1017

■製品・サービス等にご興味のある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
 株式会社ブレインパッド ソリューション本部 営業部 
 TEL:03-6721-7002
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(*1)「Internet of Things(モノのインターネット)」の略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するさまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。
(*2)IoTを活用し、ネットワークを前提として双方向コミュニケーションをすることで、ビジネスそのものを自動化する動きのこと。ヨーロッパ、特にSAP本社があるドイツの政府や企業において、積極的に取り組まれている。「第四次産業革命」とも言われる。
(*3)マーケティング活動のプロセスの自動化を支援するシステムの総称。データベースに蓄積された各種データを基に顧客や見込み客とのコミュニケーションや、セグメンテーションや効果測定などを行う。