女子中高生 夏の学校 2023 アフタートーク 出会いによって中高生のキャリアの未来が拓ける3日間

ブレインパッドは、今年の8月に「女子中高生 夏の学校 〜科学・技術・人との出会い〜 2023」(以下、夏学)に参加しました。
本記事は、夏学を運営されているNPO法人から、中央大学の今井先生と、北里大学メディカルセンターの植松先生をお迎えし、今年の夏学に参加した当社の社員とともに当日の活動を振り返りながら、中高生向けのキャリア教育などをテーマに対談をさせていただきました。

経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の「理系女子学生比率」は、2021年時点でOECD加盟の38か国中最下位に沈み、さらに2015年時点から数値もほとんど改善していない(*1)
ことがわかりました。
その一方で、日本のIT技術者に占める女性比率は、異業種からの転職数の増加もあって2021年には22%に上昇し、この10年間で7ポイント高まって欧米と同水準になった(*2)という調査もあります。
 
(*1)2023/9/18 日本経済新聞「理系女性の割合、日本が最下位」より
(*2)2023/6/18 日本経済新聞「女性が変えるIT後進国」より

ブレインパッドは、中期経営計画のテーマのひとつに「次世代ビジネス人材の輩出」を掲げており、ESG活動の一環として、今年度よりNPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト(GSTEM-CPP)への賛助を開始し、今年の8月に同法人が運営する「女子中高生夏の学校」に参加しました。
この夏学は、全国の女子中高生が科学や技術に触れ、理工系進路やキャリアを考える機会として、2005年から実施されている活動です。

本ブログの執筆にあたり、GSTEM-CPPから以下のお二方をお招きし、当社メンバーとの対談を行わせていただきました。

■本記事の参加者
NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト(GSTEM-CPP)より
・副代表理事 北里大学メディカルセンター 研究部門 室長補佐 植松 崇之先生
・監事 中央大学 理工学部情報工学科 教授 今井 桂子先生

株式会社ブレインパッドより
・執行役員 IR/ESG担当 新木 菜月
・アナリティクスコンサルティングユニット リードデータサイエンティスト 馬場 はるか
・同 データサイエンティスト 澤田 春菜
・同 コンサルタント 小暮 純子

中高生のキャリアの可能性を広げる場「夏学」

新木
まず、夏学の概要や特徴をお教えいただけますでしょうか?

今井さん
「女子中高生 夏の学校」は、全国から約100名の女子中高生と、理工系の研究者や技術者、大学生・大学院生、この活動を支援する団体や企業が集い、2泊3日の宿泊型研修を行います。キャリア講演、 ポスター展示、 デモ実験、学生企画などの活動を通じて、女子中高生のキャリア開発を後押しするとともに、寝食を共にして参加者同士の交流もはかられます。この3日間の体験を通じて、女子中高生が理工系進路の魅力を知り、あるいは再確認し、理工系に進もうという意思が高まるような成果を目指しています。

夏学参加者の集合写真
ブレインパッドのポスター展示ブースに訪れてくれた参加学生の皆さんと 
ポスター展示ブースにて当社から参加したメンバー    ブレインパッドのポスター展示ブースの様子

夏学は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、国立女性教育会館(NWEC)、男女共同参画学協会連絡会などをはじめとするさまざまな団体、企業、個人のご支援をいただきながら、国内最大級の女子中高生の理工系進路選択支援事業として、2005年から続く取り組みです。

理工系進路に興味のある女子中高生は、普段は「理科、大好き!」と言いづらかったり、「理工系に進むと研究職や教職になるんだろうな」とキャリアの選択肢を無意識に狭めていたりとすることが多いようです。そんな女子中高生が夏学という場に参加することで、同じ悩みを持つ仲間と出会い、交流を深め、先輩方からのキャリア講演を聞いたり、実験などで共に手を動かす活動を通じて、改めて自分のやりたいことを見つめる機会を創る活動になっていると思います。

植松さん
夏学は、理工系を目指す学生の進路やキャリアの選択肢を広げる場だと感じています。
私が生まれた地域は、自然に囲まれた、いわゆる田舎でした。私は将来、研究者になりたいと漠然と思っていましたが、そんな地域柄もあってか、周囲には大学に進学している人はおろか大学院という言葉さえ良く知らない人が多いという状況で、自分の将来のビジョンを具体的に描くことが難しい環境でした。この実態は、現代になっても特に女子中高生にとってはまだまだ変わっていないと感じています。夏学には全国各地から参加者が集まってくるので、同じような悩みを持つ学生達に「未来への光」を感じてもらえる場所になっていると思います。


学問や学部の種類、文系/理系の区別にとらわれず、いま興味のあることを真っ直ぐに

小暮
私は、高校生の頃に実際に夏学に参加した経験があります。もともと理系に進むことを決めていた中で夏学に参加し、ロールモデルになるような素敵な先輩達や志を持った同級生に出会い、かけがえのない経験をしたことで、理系へ進みたいという思いがさらに高まりました。私も、植松先生がおっしゃる「未来への光」を感じて進路を決めた一人だと思います。この経験を、一人でも多くの中高生に体験してもらいたいという思いから、大学時代から夏学の運営にも携わるようになり、ブレインパッド社員としても活動に参加しています。

澤田
私は、中高生の皆さんに「世の中にはまだ出会えていない面白い学問がたくさんあることを知ってもらいたい」という思いがあり、この活動に参加しました。そのように考えた理由が、私自身が中高生で行った進路選択の経験です。中高一貫教育だった私は、中学3年生で進路指導が始まった際に「まず自分のなりたい仕事を決めて、逆算で文理を選択しなければならない」と思い込み進路を決めました。結局いま関わっているデータサイエンスを知ったのは大学4年の5月でした。ですが、社会人になって振り返ってみると、やりたい仕事が見つかっていないのであれば、無理に逆算せずに、いま面白いと思える道に進んでいくのも良いのではと思うようになりました。とはいえ、面白いと思えることに出会うのもなかなか大変です。そこで今回夏学を通して、データサイエンス自体の面白さはもちろん、その先にどんな仕事があるのかについて知ってもらうきっかけになれば良いなと思いながら中高生と対話しました。

馬場
さまざまな道があることを中高生のうちから知ってほしいという点に、とても共感します。
私は、中学生の頃から「天文学者になりたい」と思い、高校・大学・大学院と進学し、天文学を専攻しました。しかし、最終的に博士号を取ることはできませんでした。「天文学者になることだけを考えてきたのに、どうしよう・・・」と思いましたが、ブレインパッドでデータサイエンティストとして働くことを選択し、実際の業務には大学院時代に培った、データを扱った研究の経験が多分に活かされています。
一見繋がらないようでも、学生時代に頑張った経験を活かせる仕事は世の中にはたくさんあるんだな、と私自身の視界が拓けていった経験をもとに、中高生の皆さんには、自分の学びたいことを自由に選択してほしいという想いを伝えるようにしました。

今井さん
現代の子供たちは真面目で、先生や親御さんが言ったことをそのまま受け入れてしまう傾向があるようです。一度キャリアパスを設定してしまうと、その通りに歩まなければならないと思ってしまうんですよね。

植松さん
実際、ほとんどの参加者が、夏学に参加する前の段階で、「大学でこの学問を専攻したら、将来、こういう職業になるのだ」と固定的に考えてしまっています。

新木
それは企業にとっても同じで、私たちブレインパッドの仕事も、理系出身でないと務まらないと思われがちです。ですが実際は、文系出身者もたくさん活躍しています。
文系だから・理系だからと選択肢を狭めずに、データサイエンスの面白さや、これを生業にしている当社のような仕事を知ってほしいと思って夏学に参加させていただきましたので、両先生の課題感にはとても共感します。

小暮
私の文系出身の友人の一人は、ある財団法人が実施している理工系進路を目指す女子中高生向けの奨学金制度を知り「こういうきっかけがあれば、私も理系に進んでいたかもしれない」と話していたことがありました。まだまだ学生の皆さんの中では、文系と理系の間に無意識に壁を立てているような傾向を強く感じます。

新木
いまの学校教育において理系を選択する場合、理系を選択すると同時に専攻する学問まで決めなければならない、という先入観がありそうです。それはつまりその先の職業までなんとなく決めることになってしまって、ぐっと選択肢が狭まると同時に、なんだか決断が重くなってしまう。しかし、社会に出るときには、必ずしも学問と就職先が一本道になっているわけではないんですよね。当社の200名超のデータサイエンティストの多様なバックグラウンドが、まさにそれを示していると思います。

植松さん
今年の夏学には、ブレインパッド様をはじめとしてさまざま企業の方々に参画いただき、大変良かったと思っています。もともと夏学は、大学、公的研究機関、研究者が所属する学協会が母体となっているので、中高生に示すキャリアの選択肢もアカデミア関係に偏ってしまいがちでした。そのため、最前線で活躍しているビジネスパーソンからの経験談を伝えていただくことは、学生の視野を広げ、キャリアの選択肢を増やすために、とても有効だと思っています。

今井さん
キャリア講演の中では、子育てをしながら企業で働くことなど、人生の紆余曲折を含めて、中高生が普段は聞く機会が少ないお話をお聞かせいただいています。一つの進路を選択することで視野が狭まりがちになる中で、「みんなそれぞれの人生があって、どんな人生を歩んでもいいんだよ」ということを伝えられる場になっているのではないかなと思います。


正解がない面白さを知り、自由な未来を描いてほしい

澤田
夏学当日、私たちは「データサイエンス は未来を切り拓く力!」と称して、私たちの仕事を紹介するポスター展示を行ったのですが、驚いたのは、意外に「データサイエンス」という言葉を知っている中高生が多かったことです。

小暮
でも、その一方で、データサイエンスという言葉は知っているけれど、それがどんな分野に活かされているのか、どのように社会に貢献しているのか、という実態については、あまりわからない/想像がつかない、という意見も多かったです。

馬場
過去に、当社内の有志の活動として、SNSで集めた質問をブレインパッドのデータサイエンティストにぶつけて、リアルな声を集めよう!という活動をしたことがあるのですが、想像以上の数の質問が集まり、まだまだ私たちの職業には知られていないことがたくさんあるんだなと感じました。
note.com

学生のうちは、どうしても選択する学問の世界が中心になってしまい、それ以外について知ることや、考える機会すらなくなってしまっているのかもしれません。

澤田
そうですよね。大学進学時に学部を選択することは、将来の方向性が絞りやすくなるというメリットはあるものの、それによって他の選択肢に関する情報がシャットダウンされてしまう可能性もあると感じます。

最近は授業でプログラミングを学ぶことも増えてきたようですがが、その過程でせっかくデータサイエンスに触れるチャンスがあっても、仮にプログラミング自体が嫌い・苦手となると、データサイエンスの魅力に辿り着かずに終わってしまうような勿体ないことも起きているのでないかと思います。

小暮
データサイエンスの面白さは当然ながらプログラミングだけではないですもんね。プログラミングはデータ活用の手段のひとつであって、ビジネス課題を特定し、どのように課題を解いていくか?どうやって結果を社会に活かしていくのか?という部分も、やりがいがあって面白いんだよ、ということをもっと広めていきたいですよね。

今井さん
学校の授業では、ついつい正解か不正解かをハッキリさせることにフォーカスしてしまうのかもしれませんね。私も自身の研究でデータサイエンスを扱いますが、計算結果にどのような意味づけをしていくか、という部分こそ面白いと思っています。しかし、試験問題になると、答えが合っているかどうかを重要視してしまいがちです。でも本当は、各人がどんな考えに基づき、どんな解き方をしているのか?のほうが大切ですよね。

小暮
データサイエンスをビジネスに活用する過程には、答えがないビジネスの世界であるからこそ、問いを立てて、確からしいことをデータで示しながら検証していく面白さがあります。
答えがないことを前提に、確かめながら進んでいけばよい、というのは、キャリアを考えるうえでも同じことが言えるのではないかと思います。

今井さん
実際、先生や保護者の皆さんは、自分の歩んできた道をベースに進路をアドバイスするしかないので、普段の環境だけでは未来の選択肢が広がりづらいのは致し方のないことです。なので、夏学へ参加してたくさんの人々と出会って可能性を発掘し、もっと自由に考えていいんだと感じてほしいです。

植松さん
そうですね。夏学には毎年100名前後の学生が参加し、高校を卒業した後には運営側として夏学を盛り上げていくという、まさに小暮さんのような好循環が生まれています。多彩なキャリアを歩む夏学の卒業生たちや、さまざまな企業の方々と触れ合う中で、中高生の未来がますます拓ける場にしていきたいと思います。

新木
来年の夏学では、今日の対談で何度も出てきた「正解はない、自由に考えてみよう」ということを体験してもらえるようなデータ活用にまつわる実験企画を作って、中高生に提供してみたいです。
今後もブレインパッドとして夏学に携わりながら、中高生の進路やキャリアの可能性を広げる活動に取り組んでいきたいと思います。
今日はありがとうございました。

一同
ありがとうございました!


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www.brainpad.co.jp
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