このたび、この人事戦略を率いる人事部門のリーダーが、CHRO西田より、新卒出身データサイエンティストである紺谷と人事領域のプロフェッショナルである鈴木にバトンタッチされました。本ブログでは、このバトンタッチの背景から、新たな体制で目指す未来をご紹介します。
西田政之 前 常務執行役員 CHRO(Chief Human Resource Officer) |
鈴木由美子 人事ユニット 人事部長 |
紺谷 幸弘 執行役員 人事担当 兼 ソリューションユニット副統括 |
関口朋宏 代表取締役社長 CEO |
「理系思考を持つ経営人材」のファーストペンギンに
─今回の人事部門の体制変更の背景を教えてください。
関口
私は、日本に理系思考を持った経営人材が少ないということを、以前から課題に感じていました。当社の中期経営計画でも掲げたように、日本の国際競争力の低下の要因の一つは、IT活用が進んでいないことやデータを活用しきれていないことにあり、そのボトルネックは、理系思考を持つ経営者の少なさだと考えています。そこに向き合っていく上で、当社の経営においても、特に経営の根幹であり経営そのものである「人」を司る人事部門に「理系思考を持った経営人材」を据えることは、トップに就任したら絶対にやってみたいたいチャレンジのひとつでした。
※【CEO X CHROクロストーク】ブレインパッドのこれからの組織と人材 ~「強くて善い会社」、「日本一の人材輩出企業」を目指す~https://blog.brainpad.co.jp/entry/2023/12/07/150105
─当初から考えていたことだったんですね。
関口
はい。2023年11月からスタートした人事戦略ストーリーにより、短い期間ながら確かな変化を感じてきた中で、西田さんが退任を決意されたことを契機にこのチャレンジを実行することにしました。予定より少しばかり早いと感じつつも、理系思考の経営人材のファーストペンギンとして、当社に新卒入社し、データ活用の経験が豊富かつデータサイエンス組織を率いてきた紺谷さんと、CHRO西田さんの元で人事戦略ストーリーを力強く推進してきた人事領域のプロフェッショナルである鈴木さん、このお二人に人事部門を任せるに至りました。
西田
関口さんがおっしゃる通り、私自身も欧米に比べてDX等が大きく劣後している原因の一つに、理系思考の経営人材が少なく、難しい経営判断ができないことにあると分析しています。それをどうにかしなくてはならないという課題感は、退任が決まった今も変わりません。また、CHROを務めたこの1年間で、200名超のデータサイエンティストを中心とした理系思考を持つ人材の宝庫である当社で、これらの人材を経営人材として開発し世の中に輩出することは、日本のDX促進の一助になると確信するに至りました。そういった中で、常に候補として名前があがっていたデータサイエンティスト出身で理系思考を持ち、日本最大級のデータサイエンティスト組織を束ねてきた稀有な人材である紺谷さんに、思い切ってお任せしたいと思い、自身は去ることを決意しました。
─西田さんの後を託すというのは大きな決断ですね。
関口
西田さんの存在は、当社にとって本当に大きいです。西田さんの存在なくして、この1年間の大きな変化はなかったでしょう。ですが、それ以上に、理系思考を持つ経営人材である紺谷さんと鈴木さんの二人三脚ならば、これからの日本社会を変えるほどのインパクトを出せる可能性を感じたんです。とはいえ、西田さんが去ることは、やはり想定していた以上に早いですし、本当に寂しいですが・・・。
西田
ブレインパッドのこの1年間の成長スピードは目を見張るものがありました。それを見ていて、これ以上老兵がのさばってはいけないと感じたんですよね。また、就任する紺谷さんは、アカデミアで学んだ理論に加え、データサイエンティストの組織を泥くさくまとめ上げた実績と経験に裏打ちされた信念や哲学を持っています。そして、それを強力に支える右腕・左腕として人事領域のプロフェッショナルである鈴木さんがいる。この最高なコンビネーションを見つけた以上、ここが最適な引き際だと思いきって2人に後を託すことにしました。
効率的ではなく合理的。「経営に」そして「社会に」資する人事へ
─そんな期待を背負っての指名ということでしたが、ご本人としてはいかがですか?
紺谷
身が引き締まる思いです。元々、心理学を学んでいたり、「学習する組織」※を愛読していたりと、組織やその中で活躍する人材に対する興味が強かったので、オファーをいただいた時は自分がやりたいことだと感じました。しかし、関口さんや西田さんと会話を重ねていく内に、CHROや人事管掌役員の責任の重さや範囲、職を全うするために求められる視座の高さのレベルが想像以上であることを痛感するようになりました。最初に打診をいただいた時から数えると、数回は自身が果たすべきミッションを考え直していますし、まだまとめきれていないのが率直なところです。
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─鈴木さんはいかがでしたか?
鈴木
西田さんが1年で退任されると聞いた時、西田さんらしい決断だなと思ったのが第一印象でした。もちろん早いなとも思いました。ですが、西田さんが退任されても、私がブレインパッドでやりたかったことは全く終わっていないので、変わらず頑張りたいとすんなりと受け入れました。
─そうだったんですね。紺谷さんがトップになったことに関しては、いかがでしたか?
鈴木
強力な味方ができた感覚です。当社に限らず人事領域には、HRテックが注目されていることにも象徴されるように、科学的・客観的なロジックをもとに経営に資する進化を求められ続けてきました。しかし、実態としてはデータを取得するだけで終わってしまっていたりと進んでいないのが現状です。これを、データ活用の推進を担う当社が率先して変えていきたいと考えています。テクノロジーやデータを人事業務のさまざまな領域に活用していき、全く新しい進化した人事部門を作りたい。紺谷さんとならそれを実現できると感じています。
─なるほど。紺谷さんは、どのようなことにチャレンジしていきたいですか?
紺谷
西田さんには、シナプスという大きな道を作っていただきました。その流れを引き継いでいければと思っています。その上で、鈴木さんもおっしゃるように、HRテック、具体的には人事業務の効率化や価値向上につながるようなデータ活用をどんどん進めていきたいです。卑近な例になりますが、具体的にイメージしているものの一つは、人事業務に対する合理的な経営判断プロセスの構築です。人事をはじめとするバックオフィスに対する投資について考えると、具体的なコストに関するデータがなければ、バックオフィスへのコストは最小限に抑えようというのが、合理的な経営判断になりますよね。さらに、その投資されたコストに対してどういった価値が生まれているかは、定性的・感覚的でしかわからない。それをデータ化、可視化することによってきちんと効率という観点で評価できるようになれば、バックオフィスが忙しいから人を追加してくださいという単純な話ではなく、経営的な観点でより合理的な意思決定ができるのではないかと考えています。
関口
紺谷さんは、よく合理的という表現をしますよね。これはとても紺谷さんらしいし、理系思考の経営者らしいなと感じています。そして、どの企業でも人事の仕事は合理的じゃないんですよね。そういった意味では、合理性をマネージすることは、日本の人事領域の進化にとっても大きな意味があると思います。
─紺谷さんの考える合理性についてもう少し教えてもらえますか?
紺谷
合理性は、制約と目的に対する、ある種バランスという言葉で表現できるのではないかと思っています。一口に制約といってもいろいろな見方で見ることができますし、何を制約にするかによって同じ目的であっても結論は変わってきますよね。たとえば自分の部署にとって一番利益を出す場合と、会社にとって利益を出す場合、さらに日本、地球、宇宙といった単位で利益を出そうとした場合で考えられる選択肢や評価基準は変わってきます。このように見方や立場、視座や視点の違いに応じて判断軸を適切に変化させて選択することが、合理的に選択する、ということだと思っています。一方で、「効率」は制約や目的の組み合わせの一つかなと思います。実行上の制約を考慮しきれていないというか、本当にそれで長期的な観点で良い結果が期待できるのかというと、それが考慮されていない際に使われる単語という印象があります。
西田
物事は二律背反であるということと重なりますね。両極のどちらかに振るということが必ずしも正解ではないなかで、中庸のポジションをいかに取るかということが戦略そのものです。それは簡単に見いだせる話ではなくて、もがいて見つけ出す、モヤモヤしながら見つけ出すものだと思うんですよね。その手段として、紺谷さんと鈴木さんがいうようなHRテックやデータを活用していくことで、合理的に中庸のポジショニングが見つかる可能性があると思います。
鈴木
以前、私が戦略コンサルティングファームに所属していたときに聞いた言葉を思い出しました。それは「人事はフィクション。だからこそ合理的にやらなくてはならない」という言葉です。人事は、本来等級に分けなくていいはずの人たちを会社がマネジメントするためにわざわざ分けるなんてことをしています。そういった一見、非合理な状態に対しても、正当な説明がなければならない。100%の納得は難しいと思いますが、それでも可能な限り100%の納得感にできるような説明をしなくてはいけない。そこには、エモーショナルにやれば済むものではなく、ちゃんとしたロジックが必要です。だからこそ、合理性にこだわろうと言われたなと、思い出しました。この合理性は、社員がこの会社にいて良かったと思ってもらえるような仕組みや文化をつくる上で、とても重要だと思います。
紺谷
鈴木さんがおっしゃる通り、人事は、一筋縄ではいかないですよね。まだ着任してすぐではありますが、人事の仕事には、構造上どうやっても厳しいということが、たくさんある。結果、合理的な判断の結果として現状に落ち着いていることが多いんだと思います。一方で、どこの会社でもこういった難しさを抱えているのだろうと思うので、当社だけではなく、他社の人事部門にも還元していけるようなソリューションを作っていきたいと考えています。HRがHRのミッションを果たすと同時に、バックオフィスでありながら、社会に対しても価値提供できる仕組みがつくれたらいいなと思っています。
西田
稼ぐ人事ですね!私も本当にやりたかったけど、夢半ばでした。
関口
期待しています!(笑)
紺谷さんがいうように、ブレインパッドでやったことが、世の中で魅力的な、新しい事例として取り上げられるようにしていきたいと思っています。ブレインパッドが、ベストプラクティクスというよりも、好事例や面白い事例として取り上げられてほしい。別に目立つことが大事ということではなく、他の人がやらないような事象に対して、本質的にこれが正しいのではないか?と突き進んで欲しいということです。紺谷さんは、そういったことを考える力が強いと思いますので、社会にも資するような人事部門を目指していって欲しいです。
西田
ブレインパッドは世の中に貢献することを本気で考えていますからね。バックオフィスも同じですね。
関口
私は、バカみたいに善いことをやりたいんですよね。正しく意味のあることをやり続けたい。そういった意味では、紺谷さんはまさに最適な人だなと僕は思っています。
最後に
─改めて、これから人事を率いていく2人にメッセージをお願いします。
西田
僕はもう単純で、2人のコンビネーションで、新たな人事をクリエーションしてほしいなと思いますね。それだけです。2人のコンビネーションだったら、僕がやりたかった稼ぐ人事もできるんじゃないかと思います。
関口
西田さん、ずっとおっしゃってましたもんね。
西田
はい。今日こうやって、紺谷さんがその可能性を話してくれたのはすごいうれしいです。とても楽しみです。
─関口さんからもメッセージをお願いします。
関口
昨年の7月に新体制へシフトするにあたり、日本一の人材輩出企業にするという言葉を西田さんと大真面目に考え、突き進んできました。これは、誰がなんと言おうと変えたくないことなんです。人が集まり会社として成り立つということは、それぞれがそれぞれに思いや理由を持っていて、いろいろなきっかけで、ブレインパッドに集まったということだと思っています。そして、(有名企業の会社名で)⚪︎⚪︎マフィアのように、ブレインパッドを卒業した人達が、世の中に羽ばたいていくことがすごく大事だと思います。そこさえ一緒に実現してもらえれば、あとはお2人がこれが最高だと思うことを目指してもらいたいなと思います。一緒に頑張りましょう!
─では、託されたお2人からも意気込みをお願いします。
鈴木
私は「日本一の人材輩出企業」をただのスローガンではなくて、「確かにそうだ」と社内外に実感されるところまで持っていきたいです。ですので、輩出された社員にとっても、「自分はそういう会社で働いていたんだ」と誇りを持てたり、「大変だったけどとても面白い仕事ができる会社だった」と思ってもらえるような環境をつくっていきたいと思っています。このゴールに向けて、人事面からどうやって実現するかについては、今までもこれからも考え続けています。本気でそういう会社にしていきたいと思います。
紺谷
まずは、ブレインパッドのHRユニットを日本一データ活用が進んだ人事にしたいです。でも、それは手段でしかないと思っています。関口さんと話していて思うことは、人材を通して提供できる価値は本当に大きいということ。今までの私は、お客さまに対する提供価値を高めて、ビジネスをドライブすることで日本経済を活性化させるというアプローチしか見えていませんでした。今では、人が持つ可能性の話を考えると、それ以上の価値貢献ができると感じています。ブレインパッドで育った人材が、世の中に出ていって、そこかしこで、社会やビジネスに価値を提供する、ドライブする中核の人物を世の中に送り出し続けていくことが、人材輩出企業の意味するところなのかなと思っていますし、こういった本質的な貢献に自分の人生を使える場にいるということが幸せなことだと本当に思います。この貴重な機会に応えられるよう邁進したいと思います!
─皆さん、ありがとうございました!