先進技術が拓く新時代 ~日本を代表する研究者に学ぶ量子アニーリング~

こんにちは、広報の中林です。

ブレインパッドでは、社内外の最新の技術知見を共有し、意見交換を行うため、勉強会を定期的に開催しています。
2016年12月末に、近年量子コンピューティングの方式の一つとして注目を集めている「量子アニーリング」について、日本を代表する研究者の早稲田大学 高等研究所 助教 田中 宗氏(以下、田中先生)をお招きしました。

今回のブログでは、その「量子アニーリング勉強会」の模様をお伝えします。

講演テーマ「次世代量子情報技術 量子アニーリングが拓く新時代」

講演は、以下の3つのテーマに沿って進められました。
・量子アニーリングは、何に使えるか?
・量子アニーリングとは、何か?
・量子アニーリングの過去、現在、未来


田中 宗氏 博士(理学) 早稲田大学高等研究所 助教
東京工業大学卒業後、東京大学大学院で博士(理学)取得。その後東京大学物性研究所、近畿大学総合理工学研究科量子コンピュータ研究センター、東京大学、京都大学基礎物理学研究所を経て、現職。2016年7月より、NEDO「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」委託事業「組合せ最適化処理に向けた革新的アニーリングマシンの研究開発」に従事。また、2016年10月より、科学技術振興機構 さきがけ研究者(研究領域「量子の状態制御と機能化」)を兼任。
Shu Tanaka’s Website http://www.shutanaka.com/index.html


量子アニーリングとは、「組み合わせ最適化問題を解くことを目的として、開発された量子計算の方式」です。代表的な組み合わせ最適化問題が「巡回セールスマン問題」で、例えば複数のコンビニ店舗に商品を配送するベストなルートを割り出すといったケースが該当します。

巡回セールスマン問題


※田中先生のスライドより

通常、組み合わせ最適化問題は、問題のサイズが増えるのに従い計算量が爆発的に増えてしまいます。

これらの「組み合わせ最適化問題」を、物理現象に置き換え、物理現象に計算させることで、効率よく問題を解くために提唱された計算手法が「量子アニーリング」です。量子アニーリングは、1998年に東京工業大学の当時大学院生であった門脇正史博士と西森秀稔教授によって提案されました。
2010年には、カナダのベンチャー企業D-Wave Systems社が、「世界初の商用量子コンピュータ」と称した量子アニーリング専用機D-Wave(1台10億円相当)を開発し、GoogleやNASAが購入したことで話題になりました。


※実際に田中先生にお持ちいただいた貴重なD-Waveのチップ


勉強会には、普段から機械学習や数理最適化問題を活用するプロジェクトに従事している社員が多数参加し、機械学習への応用に関する質問や、D-Wave以外の製品開発の可能性など多くの質問が出ました。

また、勉強会の感想として、
●今後さまざまなツールが出てくれば、当社が取り組んでいる最適化の案件などにも活用できると思った。
●講演後に、D-Waveのチップを実際に見せてもらった。講演の中で話していた内容がこの小さなチップで実行されているのかと思い、改めてそのすごさを感じた。

などの声が寄せられました。

今回、勉強会を主催したA.I.開発部部長の太田も「量子アニーリングの基礎の基礎から、D-Waveへのマッピング方法など具体的なお話までしていただけて、とても勉強になった。講演後の質問も止まらず、ブレインパッド社員の関心の高い分野であること、動向を注視していくべき技術であることを改めて確信した。」と話し、社員にとって非常に学びのある時間となりました。


最後に、田中先生より「量子アニーリングが拓く未来」について、「D-Waveが出てきたことで『量子アニーリング』が注目を集めるようになりましたが、まだまだ発展できる要素は多いです。私の短期的目標は、多様な使いみちのある技術へ発展させること。将来的な目標としては、誰もが無意識に使っている技術へと発展させること。そのために、より高い性能の手法を目指し、また様々な応用事例を世に出す必要があります。量子アニーリングや周辺技術の研究を、ハード・ソフト・アプリの三方向に携わる方々と共に進めていきます」とコメントをいただき、勉強会は終了しました。

今回は勉強会の概要のみお伝えしましたが、「量子アニーリング」の技術的な内容については、改めて当社のエンジニアよりブログでご紹介する予定です。こちらもぜひお楽しみに。



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