創発教室 楽屋裏話 講義アフタートーク リーダーシップ進化論 講師:酒井 穣氏

ブレインパッドは、2023年11月1日に、新人事戦略ストーリー「BrainPad HR Synapse Initiative」を発表しました。本記事では、この戦略の特長の一つである独自の研修体系の中から、研修の目玉の一つである「創発教室」の講師陣と、当社CHRO西田とのアフタートークをお届けしてまいります。今回の講師は、株式会社チェンジウェーブグループ 取締役(旧リクシス 創業者・取締役)酒井穣さんです。

ブレインパッドは、当社グループの中期経営計画を人的資本の側面から強力に推進する新人事戦略ストーリー「BrainPad HR Synapse Initiative」を発表しました。
多くの施策の中で目玉の一つとなるのが、この「BrainPad Liberal Arts Core(LAC) 創発教室」です。
創発教室は、「本業を極めたければ異分野を学べ!」をコンセプトに、リベラルアーツを楽しみながら学び、「データ分析力に、哲学的思考力と、ビジネスでの実践力が掛け合わさった最強人材」の開発を目的として構成された全9回の育成プログラムです。
本記事は、そんな創発教室の講師陣にお話をお伺いするクロストークをお届けします。今回の講師は、株式会社チェンジウェーブグループ 取締役(旧リクシス 創業者・取締役) 酒井穣さんです。


ー講師プロフィール
株式会社チェンジウェーブグループ 取締役(旧リクシス 創業者・取締役)
特定非営利活動法人NPOカタリバ 理事
プロ野球選手会 / 顧問
過去に、事業構想大学院大学・特任教授や、新潟薬科大学・客員教授などを歴任している。

1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg 大学 TIAS School for Business and Society 経営学修士号(MBA)首席(The Best Student Award)取得。同 TIAS School for Business and Society の25周年記念においては、スクールの発展に寄与した25人の VIP の中の1人に選出されている。 商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事。後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、2000年にオランダに移住する。特許訴訟を機に知的財産権部に異動し、米国、日本、韓国における複数拠点同時の訴訟対応をはじめ、技術マーケティングや特許ポートフォリオの管理を担当する。オランダの柔軟な労働環境を活用して、知的財産権部での仕事に取り組みつつも、2006年末に各種ウェブ・アプリケーションを開発するベンチャー企業を創業し、最高財務責任者(CFO)としての活動を開始。南米スリナム共和国におけるアウトバウンド・コールセンターのアウトソース、開発リソースの中国とルーマニアからの調達や、オランダ、ドイツ、スイスにてマーケティング戦略を構築。さらに人事制度の構築、採用、人材育成などを担当。2008年には、母校 TIAS School for Business and Society のMBAプログラムにて臨時講義を受け持つ。2009年4月、8年8ヶ月間暮らしたオランダを離れ帰国。フリービット株式会社(東証一部)の取締役を経て、2016年9月に株式会社リクシスを創業し、取締役副社長 CSO に就任。2024年経営統合により、株式会社チェンジウェーブグループ取締役。

講義テーマ
リーダーシップ進化論

脱中心化は、専門性につながる

西田
改めて、講義いただき、ありがとうございました。
酒井さんのご著書である「リーダーシップ進化論」に感銘を受け、お話をお伺いしてから、いろいろなシーンで講師を依頼しています。まさに知の巨匠だと感じています。

酒井さん
ありがとうございます。知の巨匠とは、ハードルが高いですね(笑)

西田
酒井さんは、広範囲の領域の知識を、複合的かつ体系的に、捉えていて、本当にすごいなと感じています。
今日も、リーダーシップというテーマで、さまざまな視点からお話いただきました。特に脱中心化のお話は、いつお聞きしても、なるほどと感じます。一方で、人事の世界では、個を重んじる時代の流れもあって、社員に対して自己理解や自己探索を深めることを促進しているところがありますね。ある意味、これは脱中心化とは逆行するようにも感じます。


酒井さん
そうですよね。特に新卒採用の就職活動においては、自己分析をして自分の強みを見つけなさいと言われます。ですが、誠実な人ほど、自分が強みと言える程のものなんて分からない・・・と悩んでいるのをよく見かけます。しかも、採用する側としても、むしろ自分の強みやできることを自信満々に語るような人だと、本当に大丈夫か?と心配になります。

西田
自分を何者かのように飾り立てる人は、どこか信頼感に欠けますよね。

酒井さん
はい。自己分析した結果、自信を持ってこれができるとは言えないけれど、プログラミングは大好きですとか、アンモナイトが大好きなんですと、客観的に自分の興味を答えてくれるような人の方が信頼できますし、誠実だなと感じます。また、営業などの職種であれば、俺が一番になってやる!と、ガツガツとした生物っぽい人は、自分に正直でいいよねと思います。

西田
ある程度、自己中心でいる期間も大切ですよね。その期間は、自分自身のケイパビリティを成長させる期間だと思います。
一方で、そういった期間を経験せずに、頭でっかちに脱中心化を求めていく若手も増えているように感じます。そのような人は、人のために役に立ちたいとNPOなどに入社しますが、実行するためのケイパビリティが足りなくて苦しむということも、よくあります。

酒井さん
志は重要ですが、実行するケイパビリティがないと、何も変わりませんからね。かつて、ドラッカーは、山を動かすならば、ブルドーザーを持ってこいといったそうですよ。志がないブルドーザーのほうが、志のあるネズミよりも、有用だということですね。志がいらないという話ではありませんが、ブルドーザー性、つまり、専門性を鍛えていくことが重要だと思っています。

西田
専門性は、どうやって鍛えていくのがよいと思いますか?

酒井さん
専門性は、自分の好きなことでしか鍛えられないと思います。

西田
好きなことを突き詰めていく方が、面白いし、続けられるので、専門性を鍛えることに繋がるということですね。

酒井さん
はい。ですが、大人になると、好きじゃないこともやらなくてはならないことが多くありますよね。人によりますが、例えば、雑務とか。でも、好きなことをやるには、こういったやりたくないことも、やらなくてはならない。

西田
好きなことに集中するためには、どうしてもやりたいくないことにも立ち向かう必要がある。

酒井さん
であれば、やりたくないことも、好きになる必要が出てきます。そんな時に、私は、その仕事や作業を好きな人が、どこに面白さや素晴らしさを感じているのかに注目してみることをオススメしています。そうすることで、やらなければならないことさえも好きなことになっていきますし、元々、好きなことに没頭する時間を増やすことができます。それによって、専門性をさらに鍛えることができます。

西田
自分以外にも意識が広がっていき、自然と脱中心化されていくように感じます。

酒井さん
単純に自分が面白くないと感じているだけであることに気づくと思います。もっと、世界には面白い物があると。そういった観点からも、脱中心化が進んでいる方がいいですよね。

リーダーは環境から生まれる。

西田
講義の中で、群れを外れるのがリーダーシップだというお話がありました。リーダーの向き不向きは見極められるんでしょうか?

酒井さん
僕は、リーダーは、あくまでも役割で、誰でもなれると思っています。ある実験で、いわゆる人事的に見てリーダーシップが皆無と言われる人を集めて、何かをやらせたところ、リーダーシップを取る人が生まれたそうです。また、リーダーシップは、遺伝によらないという研究結果もあります。つまり、ある程度、環境の中で誰でもリーダーになれるし、リーダーシップが取れるようになるということです。

西田
なるほど。一方で、部長やクラス委員をよく経験してきた人もいますが、こういった人は、向いているとは言えないでしょうか?

酒井さん
狭義の意味でのリーダーであれば、向いているのかもしれませんね。ですが、部長やクラス委員は、あくまでもリーダーシップのタイプの1つ、先導型のリーダーシップです。私の著書でも、6つのタイプを紹介していますし、私の著書に限らず、世界的にも、リーダーシップは先導型だけではなく、いろいろなタイプがあると言われています。なので、誰がリーダーに向いているかを見極めるよりも、組織に必要なリーダーシップを見極めることが重要だと思います。

西田
組織において、どのようなタイプのリーダーを育てたいのか?によって、会社や人事が、それに合わせた環境を整えていくべきですね。当社であれば「理系思考を持ったリーダー・経営人材」を内外に増やしたいと考えていますので、そういった環境自体を整備したいですね。

酒井さん
自社で必要なリーダーシップのタイプを選択し、それぞれの発露に必要な環境に放り込んでいくのが、一番いいと思います。例えば、アントレプレナーシップを持つリーダーであれば、起業家が集まるグループに入れるとかですね。


「直感に反する意思決定」ができる理系思考を持ったリーダーシップ

西田
どのような環境を選ぶのか?これも重要になりますね。

酒井さん
そうですね。その時に、ぜひ意識してほしいのが、あえて、直感で選ばないということです。人間は、多くの生物の中で、唯一、直感に反する意思決定ができる能力を持っています。だからこそ、ここまでの繁栄を享受してきたとも言えます。ですが、なかなかそのような意思決定をすることは難しい。例えば、転職先を選ぶ時、直感だけで選んで、結果的に失敗したなんてことはないですか?
この直観と異なる意思決定をするには、知識をたくわえ、直感とは異なる事実を客観的に、批判的に捉えることが必要です。これはまさに、ブレインパッドで育てようとされている「理系思考のリーダーシップ」、「サイエンティフィックリーダーシップ」だと思います。

西田
そうですね。ウィリアム・ダガンの「戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則 」の中で提唱している「戦略的直観」に近いと感じます。戦略的直観は、脳の引き出しにたくさんの知識を蓄積し続け、思考を続けることで、領域が異なる知識や思考が、シナプスのように勝手に繋がることで生まれる新たな発想のことです。こういった革新的な発想が起きる環境を会社が、あるいは、自らが整え「勘と経験に頼りきった意思決定するリーダー」ではなく、「常識に捉われず、多面的思考と視野で、意思決定ができるリーダー」を輩出していきたいと考えています。

酒井さん
世の中、疑問がないことの方が少ないですし、疑問を持ったとしても回答がないことの方が多いですよね。ただ、それを自分なりに考え、歩んでいくしかないっていうところが、難しくもあり、面白さでもあると思います。こういったものに対しても、ブレインパッドに集まる理系思考を持った人材だからこそ、直感に捉われない意思決定に興味をもって「理系思考のリーダーシップ」を育てていって欲しいですね。

西田
良質な問いを立てて、自分の頭で考え続けていこうということですね。メンバーにしっかりと伝えたいと思います。それでは、今回も、素晴らしい講義をありがとうございました。

酒井さん
こちらこそ、ありがとうございました!

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いかがでしたでしょうか。リーダーシップについて改めて考えるキッカケになれば、幸いです。

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