デスクやオフィスの本棚には、技術書からビジネス書に至るまで膨大な数の書籍が並んでいます。しかし、社員数の増加や組織の拡大に伴い、「誰がどんな本を読んでいるのか」「どこにどんな本が眠っているのか」が見えにくいという課題がありました。
この課題に対して現場の有志メンバーが立ち上げたプロジェクトが、「XAID(エックスエイド)」プロジェクトです。
これは、人事制度である「BOOK-AID(ブックエイド)」と「SKILL UP-AID(スキルアップエイド)」をシステム面から統合・アップデートし、社内の知の循環を加速させるための本取り組みであり、エンジニアが自らアイデアを出しながら、技術力を遺憾なく発揮して開発が進められて行きました。なぜ彼らは、多忙な業務の合間を縫ってまで開発に没頭したのか?その原動力と、開発を通じて見えてきた「ブレインパッドらしさ」について、プロジェクトの中核メンバー6人に語ってもらいました。

| 軍司 | 角田 | 栄喜 | 竹村 | 竹下 | 斉藤 |
| 2023年新卒入社 アナリティクスコンサルティングユニット(以下:ACユニット)・データサイエンティスト。 人事側との要件すり合わせ、アウトプットイメージの調整を担当。 |
2023年新卒入社 プロダクトユニット(以下:PDユニット)・エンジニア。 UI/UXデザイン、ロゴ制作を担当。 |
2023年新卒入社 データエンジニアリング(DE)ユニット・エンジニア。 「XAID」開発リーダー。入社1年目から[「BOOK-AID」のシステム化を構想していた発起人。 |
2023年新卒入社 ACユニット・データサイエンティスト。 プロジェクトの立ち上げ、社内調整、申請周りを担当。 |
2023年新卒入社 DEユニット・エンジニア。 開発担当。本棚機能の実装などを主導。 |
2024年新卒入社 DEユニット・エンジニア。 インフラ・フロントエンドの開発を担当。 |
(ファシリテーター:木原)
- Chapter 1. 「XAID」プロジェクトが生まれたきっかけとは?
- Chapter 2. 「ベストエフォート方式」だからこそ、自律的に進んだプロジェクト
- Chapter 3. 「XAID」プロジェクトから見えてきた「ブレインパッドらしさ」とは
- Chapter 4. 「XAID」プロジェクトが目指す世界観とは?
Chapter 1. 「XAID」プロジェクトが生まれたきっかけとは?
木原
まずは、このプロジェクトが立ち上がった経緯から教えてください。「XAID」という名前がつく前は、それぞれのメンバーごとに課題意識を持たれていたそうですね。
栄喜
全ての始まりは、私が新卒1年目の冬、約2年前に遡ります。当時、社内の有志が集まり、社内の課題を解決を目指す「Hack BP(ハック ビーピー)」という取り組みに参加していた際、人事の方から「『BOOK-AID』で管理されている本をもっと使いやすく管理したい」という相談を受けたのがきっかけでした。
「BOOK-AID」を通じて購入された本は、全社員の共有資産として会社に保管されています。
それなのに、自分の読みたい本が会社のどこにあるのか、そもそも会社にあるのかどうかも分からない。この状態では制度として不健全なので、「管理されている本の『見える化』をしてみたら良いのでは?」と思い立ちました。
そこで、同僚の斉藤くん、竹下くんと3人で初期プロダクトの開発を始めたんです。完成まではこぎつけたのですが、通常業務の忙しさもあり、リリースに向けた最後の仕上げや社内展開に向けた調整になかなか手が回らずペンディング状態になっていました。
竹村
一方で、僕たちACユニット2人の間では、「『SKILL UP-AID』をどう有効活用するか」という課題感を持っていました。当時社内コンペでいくつかのアイデアは出ていたものの、それを実装して全社に広めるにはエンジニアリングの力が足りていない状況でした。
そこで、「BOOK-AID」のプロダクトが既に形になっていることを知って、「だったら一緒にやりませんか?」と声をかけたんです。開発はDEユニットの皆さんに、裏側の社内調整やロジ周りは僕たちACユニットが巻き取る。そうやって二つのプロジェクトが交差したことで、「XAID」プロジェクトとして再始動しました。
木原
まさに「開発力」と「推進力」がマッチしたわけですね。斉藤さんと竹下さんは、栄喜さんから誘われた時どう思ったんですか?
斉藤
僕自身、1年目の研修期間中に「『BOOK-AID』って誰がどう使ってるんだろう?」「この本棚、もっと活用できないのかな」という課題感を同期と話していたんです。そうしたら「栄喜さんが似たようなことやってるらしいよ」と聞いて。課題意識が合致していたので、自然と合流できましたね。
竹下
僕も実は「BOOK-AID」を使ったことがなかったんです。「あるのに活用できていない」こと自体がもったいないなと。ちょうど同期とアプリ開発の勉強をしていた時期でもあったので、「せっかくなら会社に還元できるものを作りたい」と思って参画しました。
木原
そこにデザイナーの角田さんや、企画側の軍司さんも加わっていったと。
軍司
社内コンペで社員のみんながすごいクオリティのアイデアを出してくれているのに、それを実装できないのはもったいじゃないですか。「手伝えるなら何でもやりたい」という思いで参加しました。
角田
私も声をかけてもらって、自分にできるデザインの領域で貢献できればというシンプルな動機でしたね。「有志だから割に合わない」なんて思うこともなく、純粋に面白そうだなと。

Chapter 2. 「ベストエフォート方式」だからこそ、自律的に進んだプロジェクト
木原
通常の業務もある中で、これだけの規模の開発を進めるのは大変だったと思います。どのようにプロジェクトを進めていったのですか?
栄喜
きっちりとした定例会議を設けてタスク管理をする、というやり方はしませんでした。「できる人が、できる場面で、できるコミットをする」という、いわば「ベストエフォート方式」です。
これが逆に良かったのかもしれません。誰かに言われたからやるのではなく、みんなが自律的に動いてくれていました。気づいたら斉藤くんが新しい機能を作ってプルリクエスト*を出してくれていたり。
※Gitベースの開発(GitHubなど)で、自身の変更したコードをメインプロジェクトに反映させるよう、他の開発者にレビューやマージを依頼する機能
木原
誰からも強制されていないのに、なぜそこまで熱量高く続けられたのでしょうか?
栄喜
最終的には「ラストマンシップ(最終責任者としての気概)」みたいなものがあったと思います。誰かが責任を持って進めないと終わらない。僕が開発全体を引っ張る一方で、竹村くんが各所との調整を完璧にお膳立てしてくれた。「ここまでお膳立てされているんだから、完成させないわけにはいかないだろう」という思いで、前向きに進められました。
竹村
開発がどんどん進むので、僕の方も「早く社内申請を通さなきゃ!」と背中を押されました。
当初は「社内購入申請ができればOK」というミニマムな要件だったんですが、チームが自由な雰囲気だったからこそ、「本棚機能」や「社内SNS機能」といったプラスアルファの機能アイディアが開発メンバーから出てきて、実装までできたのだと思います。
木原
「本棚機能」とはどのような機能ですか?
竹下
単に本の検索ができるだけでなく、「誰がどの本を読んだか」が可視化される機能です。マネジメント層の方がどんな本を読んでいるのか、技術力の高いあの先輩はどんなインプットをしているのか。その人の「本棚」を見ることで、その人の興味関心やスキルセットの解像度が上がるんです。
栄喜
これ、面白いんですよ。例えば役員やマネジメント層の本棚を見ると、「組織論についてはこういう書籍で学ぶんだな」とか、「こういう書籍から仕事の心構えを学ぶんだな」ということを知ることができてしまうんです。
また、社内SNS機能は、「コミュニケーションプラットフォームとして機能させた方が、暗黙知や形式知が醸成されやすいんじゃないか」という同期メンバーのアイデアから生まれました。「XAID」メンバー以外からのアイデアも柔軟に取り入れながら、アメーバのように機能が進化していきました。

Chapter 3. 「XAID」プロジェクトから見えてきた「ブレインパッドらしさ」とは
木原
開発において特に苦労した点はどこでしたか?
栄喜
やはり「データ周り」と「個人情報」ですね。
社内のどのデータを触っていいのか、どこまで公開していいのか。特にブレインパッドはPMS(個人情報保護マネジメントシステム)の基準が厳格なので、そこをクリアするのは本当に大変でした。
例えば、経費精算システムのAPIと連携して経費申請作業を自動化したいという理想はあったのですが、社内システムの都合上、断念せざるを得なかったり。
栄喜
書籍情報の取得についても、国立国会図書館に問い合わせてAPIの利用規約や著作権の確認を行ったりと、泥臭い調整の連続でした。ただシステムを作るだけでなく、ガバナンスや権利関係も含めて「企業として正しい形」で実装することにこだわりました。
木原
そうした困難を乗り越えてでも、皆さんがこの「本」や「知の共有」にこだわった理由はどこにあるのでしょうか? ここに「ブレインパッドらしさ」があるような気がします。
栄喜
ブレインパッドでは、プロジェクトごとに異なるメンバーとチームを組み、終わればまた解散して別のプロジェクトへ向かいます。業界も技術スタック*も多種多様です。
そんな流動的な環境の中で、「あの人はどういう経歴を歩んできたのか」「なぜあの技術に詳しいのか」を知る手がかりとして、「本」という情報は非常に雄弁なんです。
※技術スタックとは、アプリケーションやサービス開発に使用するプログラミング言語、フレームワーク、データベース、サーバー、ツールなどの技術要素の組み合わせのこと。
斉藤
みんな知識量がすごいですし、常に勉強している。だからこそ、「この人は何を経てその知識を獲得したのか」というプロセスが本棚に見えると、自分が勉強する時の道しるべにもなります。Googleで「おすすめ本」を検索するより、社内の尊敬するエンジニアの本棚を見た方が、よほど効率的に質の高い情報に辿り着けますから。
木原
確かに、ブレインパッドの社員は本当によく本を読みますよね。ブレインパッド創業者の高橋さんも、「業界も課題も違うクライアントに向き合うには、本を読んでその業界の常識を一気にインプットするのが一番早い」と語っていましたが、それが文化として根付いているのを感じます。
軍司
「本を読むこと」が、もはや企業の文化であり、資産になっている。だからこそ、そのデータを可視化し、循環させることに全員が価値を感じていた。
「誰がどんな本を読んでいるかというデータに価値がある」と、メンバー全員が疑いなく信じていたからこそ、ここまで走れたのだと思います。

Chapter 4. 「XAID」プロジェクトが目指す世界観とは?
木原
最後に、今後「XAID」をどうしていきたいか、展望を聞かせてください。
栄喜
開発者としての願いは、「手離れさせたい」ですね。
僕たちがずっと管理し続けるのではなく、社内のエンジニアや有志たちが「もっとこうしたい」と思って勝手に機能を拡張していく。気づいたら僕らの手を離れて、勝手にパワーアップしている。そんな「社内OSS(オープンソースソフトウェア)*」のようなエコシステムになってくれたら最高です。
※オープンソースソフトウェア(OSS)とは、プログラムの設計図である「ソースコード」が一般に無料公開され、誰でも自由に利用、改変、再配布できるソフトウェアのこと
竹下
毎年ブレインパッドには多くの新卒や中途社員が入社してきます。彼らがまず「XAID」に登録して、「あ、この先輩はこんな本読んでるんだ」と知ることで、コミュニケーションのきっかけが生まれたり、共通言語ができたりすると嬉しいです。
角田
ゆくゆくは、社内のナレッジ共有だけでなく、外販できるレベルまで育てたいという野望もあります。データサイエンスやエンジニアリングを志す人が、とりあえずこのプラットフォームに来れば、ブレインパッドの知見に触れられて、そこから学びが始まるような世界観ができれば面白いなと。
竹村
ACユニットとしては、このツールを通じて勉強会が自然発生したり、そこから新しいプロダクトの種が生まれたりするような「知の化学反応」が起きる土壌にしていきたいです。DEユニットのエンジニアを中心に、「有志が機能を追加できるOSS」として開発スキル発揮の場に活用してもらうことも目指しています。
今回はDE(開発)とAC(推進)が良いバランスで補完し合えましたが、これからも部署の垣根を超えて、「面白そうだからやる」というプロジェクトがどんどん生まれてくる会社でありたいです。
木原
「本」を起点に、人と人がつながり、新しい知が生まれる。まさにブレインパッドが目指す「共生」や「人材輩出」の形が、このプロジェクトには詰まっていると感じました。
本日はありがとうございました!

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