後編は、「このAI時代に、データサイエンティストやエンジニアに求められるマインドセットやスキルは何なのか?」というテーマで、引き続きブレインパッドのデータサイエンティストとして活躍する本山さんと、ブレインパッドでAIを事業にどう活かすかを最前線で模索する浦田さんの2人に話を伺います。
※前編はこちらを参照ください。

| 本山 遼(もとやま りょう) | 浦田 勇樹(うらた ゆうき) |
| 株式会社ブレインパッド リードデータサイエンティスト ブレインパッドには2022年2月に入社。 |
株式会社ブレインパッド ’’ Business AI Strategy Manager’’ ブレインパッドには2025年9月に入社。 |
- Chapter 3. AI時代に必要となる3つのマインドセット
- Chapter 4. AI時代に必須とされる4つのスキル
- Chapter 5. 「ブレインパッドは飛び級で学べる場所」——データ・AI職を目指す学生へ
Chapter 3. AI時代に必要となる3つのマインドセット
司会
本山さんからAI時代に必要なものとして「マインドセット」と「スキル」のお話が出ました。まずは土台となるマインドセットについて教えてください。具体的にどのようなものが必要だと考えていますか?
本山
AI時代を考えるうえでの前提は、「AIは間違えることがある一方で、その結果に責任を持つことはできない」ということです。私たちがその前提にどう向き合うかを「セルフアップデート」「イシューデザイン」「オーナーシップ」の3つに整理しています。
司会
まず1つ目の「セルフアップデート」について教えてください。
本山
「セルフアップデート」は、好奇心を持ち、うまくいかなくても試行錯誤を続けながら、自分を変えていくことです。
AIは、一度使い方を覚えれば終わりではありません。期待した答えが返ってこないときに、なぜ違ったのかを考え、問い方や渡す情報、自分の進め方を調整する必要があります。
これは、クライアントと向き合う姿勢と大きくは変わりません。相手を理解し、意図が伝わるまで調整する。AIという新しい相手とのずれも学習の材料として受け止め、自分を更新し続けることが大切だと思います。
司会
2つ目の「イシューデザイン」はいかがですか。
本山
「何を解くのか」を決める力です。AIは与えられた問いには強い一方で、そもそも何を問うべきかまで自動的に決めてくれるわけではありません。
だからこそ、私が特に意識しているのは、「自分の考えを先に持つ」ことです。自分のスタンスや仮説がないままAIに問いを渡すと、本来は自分で考えるべき部分まで、もっともらしい回答で埋められてしまいます。
まず自分ならどう考えるかを明確にし、そのうえでAIの回答を、自分の仮説を広げたり検証したりする材料として使う。新人の頃に「上司に相談する前に、自分の仮説を持ってきて」と言われたことに近いですね。
一方で、定型的な作業まで深く考える必要はありません。大切なのは、何を自分で考えるべき問いとして残し、何をAIに委ねるかを見極めることです。
自分が本当に向き合うべき問いに思考と熱量を集中させる。そのために、問いそのものだけでなく自分とAIの役割分担まで設計する。それが私の考える「イシューデザイン」です。
浦田
今の「自分の考えを先に持つ」という話は、とても重要だと思います。AIを使いこなすうえでの出発点は、AIに何かを考えてもらうことではなく、自分が何を実現したいのか、何を大切にしたいのかを明確にすることです。
世の中には、「やったほうがいいこと」や一般的なノウハウがあふれています。そうした抽象度の高い情報だけをもとにAIへ問いかけても、返ってくるのは、誰にでも当てはまる似たような答えになりがちです。そこに自分の目的や仮説、重視する価値、置かれている状況や制約を加えることで、初めてその人ならではのアウトプットに近づいていきます。
例えばWebサイトを作る場合も、AIに「いい感じに作って」と頼むだけでは、整ってはいるものの、どこかで見たようなデザインになりやすい。そうではなく、まず自分でコンセプトや核となるビジュアルを定める。誰に何を伝えたいのか、どのような印象を与えたいのか、何を変えてはいけないのかを具体的に伝えたうえで、各ページやパーツの展開をAIに任せるんです。
自分のWill(意思)を起点にしてAIを使うことで、アウトプット全体に一貫した軸が通ります。AIにすべてを委ねるのではなく、自分が方向を決め、AIに展開してもらう。この関係をつくることが大切だと思います。
司会
3つ目の「オーナーシップ」について、教えてください。
本山
オーナーシップは、「自らスタンスを取り、行動し、その結果を引き受けること」です。AIが提案やアウトプットをつくれるようになっても、最終的に何を選びどう行動するかを決めるのは人間です。出てきたものをAIのせいにするのではなく、自分の判断として引き受ける姿勢が必要になります。
ここでいう「責任」は、失敗したときに責められるという意味ではありません。自分が何を考え、なぜその判断をし、どのような結果を目指したのかを、自分の言葉で説明できること。そして「これは自分がやった仕事だ」と胸を張って言えることです。
私の中では、それは「矜持」という言葉に集約されます。AIの出力をそのまま受け流すのではなく、データサイエンティストとしての専門性と判断を加え、自分の仕事として世に出す。オーナーシップとはデータサイエンティストとしての矜持を持つことだと思います。
ただし、その姿勢を持続させるためには力の配分も大切です。オーナーシップを阻むものとして私自身が気をつけているのが「完璧主義」と「並列化のしすぎ」です。
すべてを100%まで仕上げようとすると、本当に重要なことへ力を注げなくなります。また、同時に多くのことを抱えすぎると一つひとつを深く考える密度も下がってしまう。何を徹底し何を適切な水準で手放すのかを判断しながら、自分が責任を持てる範囲に集中することもオーナーシップの一部だと考えています。

Chapter 4. AI時代に必須とされる4つのスキル
司会
続いてスキル面について、浦田さんが考える「これから必要とされる4つのスキル」を、改めて教えてください。
浦田
「問いを定義する力」「判断を構造化する力」「出力を検証し、説明責任を果たせる状態にする力」「現場に実装し、成果につなげる力」の4つです。「問いを定義する力」は前編でお話しした通りなので、2つ目から補足しますね。
「判断を構造化する力」とは、言葉になりきっていない現場の判断基準や、ベテランの経験・記憶、部署ごとに定義が異なるデータ、担当者によって揺れる回答といった、取りこぼされやすいけれど重要な業務の文脈を扱う力です。それらを観察し、分解し、言語化したうえで、データ・ルール・ナレッジ・ワークフローとして、AIが参照し、業務で再利用できる形に変えていく。暗黙知だけでなく、分散した情報や業務手順をAIが扱える形に構造化する力、と言えます。
司会
3つ目の「出力を検証し、説明責任を果たせる状態にする力」はどうでしょう?
浦田
AIはアウトプットを作れますが、その内容に責任を負うことはできません。自分たちの成果物として提出するのであれば、まず、出力の良し悪しを判断する評価基準を定める必要があります。さらに、重要な業務で使う場合は、入力や参照情報、出力、レビュー・承認の履歴を残し、誰が何を根拠に判断したのかを後から追跡できる状態にすることが大切です。
最終的に必要なのは、「なぜこの出力を採用したのか」を人が説明し、その判断に責任を持つことです。評価軸を個人の感覚だけに置かず、案件や組織で共有する。そこまで整って初めて、AIを責任ある形で業務に使えるのだと思います。
本山
加えて、責任を持ってAIを使うには「再現性」も重要です。たまたま一度だけ良いものができたのか、次も同じ水準の結果を出せるのかでは、大きな違いがあります。
そのためには、AIの出力だけでなく、渡したデータや指示、手順、実行環境まで管理する必要があります。AI自体を完全にコントロールできなくても、周囲の条件を整え、結果を検証できる状態にして初めて、継続的に業務で使えるのだと思います。
司会
最後の「現場に実装し、成果につなげる力」は、ブレインパッドらしいスキルですね。
浦田
これは本当に大事です。AIを導入した、使ってもらった、というだけでは十分ではありません。導入や利用はあくまで途中の段階で、ゴールは、業務や事業の成果につなげることです。
そのためには、既存の業務フローや関係者の役割を見直し、複数のステークホルダーと調整する必要があります。導入・運用にかかるコストと得られるリターンを見極め、成果を継続的に測りながら、現場に定着させる。そこまでつなげる力だと思います。
本山
付け加えるなら、「現場に実装する」だけでなく、その結果として「人の行動や業務の進め方が変わる」ところまで見ることが重要です。
AIが表面的に使われている状態をつくること自体は、そこまで難しくないでしょう。しかし本当に問うべきなのは、AIによって意思決定の仕方や役割分担、業務プロセスが実際に変わったかどうかです。導入したという事実ではなく、現場にどのような変化が起きたのかで成果を捉える必要があります。
AIは情報を提示するだけでなく、提案や判断支援、場合によっては業務の実行まで担える存在たりえます。だからこそ、AIをどこに入れるかだけでなく、誰の行動をどう変え、業務全体をどのような状態にしたいのかまで、テーマを設計する段階から考える必要があります。

Chapter 5. 「ブレインパッドは飛び級で学べる場所」——データ・AI職を目指す学生へ
司会
内製化が進んで事業会社側でもAIが使えるようになっていく中で、あえて今ブレインパッドを選ぶ価値はどこにあると思いますか。
本山
さまざまな企業の「人や組織が変わるところ」まで関われることです。AIを導入するだけでは企業は変わりません。クライアントの組織に入り込み、業務の進め方や意思決定、人の役割が変わるところまで伴走できることが、この仕事の大きな面白さだと思います。
ブレインパッドは、技術を提供して終わるのでも、個別の作業を代行して終わるのでもありません。クライアントと一緒に何を変えるべきかを考え、実際に使われる状態までつくっていきます。
最終的にクライアント自身が成長し、私たちの支援が不要になったとしても、その企業にデータサイエンスやAI活用が根づけば価値は残ります。そうした相手の変化に向き合いたい人が集まっていることが、ブレインパッドの良さだと思います。
司会
エンジニアを目指す学生にとってはどうでしょうか?
本山
エンジニアの視点では、「AIと現実がせめぎ合う場所」に立てることが価値だと思います。
実際の企業では、データが十分に整備されていなかったり、業務のルールが言語化されていなかったり、理想どおりにシステムをつくれなかったりします。AIの性能だけを追えばよいのではなく、そうした現実の制約と向き合いながら、どうすれば安全かつ継続的に使える仕組みにできるかを考えなければなりません。
きれいに整った環境で技術を試すだけでは得られない、設計、データ、業務、運用の難しさを、若いうちから一体として経験できる。技術を現実の価値につなげる力を身につけるうえで学びの密度が高い環境だと思います。
浦田
まさにそう思います。AIを企業固有の業務や経営判断の支援に使う場合は、目的に合ったデータや業務知識などの文脈を渡す必要があります。そのためには、データの定義や品質を整え、必要な情報をAIが参照できる状態にしておかなければなりません。AI導入の現場で難所になりやすいのが、この文脈とデータをどこまで整えられるかだと思います。
特に、売上や利益などの経営指標に影響する意思決定をAIで支援するのであれば、信頼できるデータを継続的に参照できる状態が重要です。意思決定の影響範囲が大きいほど、うまく活用できたときの成果も大きくなり得ます。その一方で、データの品質や判断の根拠を説明する責任も大きくなります。
経営課題の解決にAIを活用するには、AIだけでなく、その土台となるデータや業務プロセスまで考えなければなりません。ブレインパッドで、経営課題とデータ基盤の両方に向き合い、実際の現場で試行錯誤できることは、大きな学びです。大変さはありますが、それだけ密度の高い経験が得られる。そういう意味で、「飛び級で学習できる」ような環境だと思います。
司会
今日のお話は、テクノロジーの話というより「人間についての話」でした。最後には、1人1人の意思や行動、主体性が残っていくという。
本山
実際そうだと思います。AIによって知識を得たり一定水準のアウトプットをつくったりする力は多くの人に広く提供されるようになります。ただ、同じAIを使っても、何を問うのか、出てきたものをどう判断するのか、どこまで行動に移すのかは、人によって異なります。
AIが能力の差をすべてなくすというより、AIは基礎的な能力を底上げしたうえで、その人の問題意識や専門性、判断力、主体性を増幅するものだと捉えています。だからこそ、AIの性能だけに頼るのではなく、その力を生かせる自分自身を磨き続けることが、これまで以上に重要になると考えています。
浦田
Howはみんなに同じものがばらまかれている中で、どれだけレバレッジをかけられる自分を磨けるか、というところに帰結するんですよね。それを磨くなら、ブレインパッドは一番いいんじゃないかと。
司会
最後に、学生の皆さんに、いま頑張ってみてほしいことをお願いします。
本山
一つ目は、まず行動してみることです。AIによって、学ぶ、つくる、試すといった行動のハードルは大きく下がっています。準備が整うのを待つのではなく、興味を持ったことから手を動かしてみてほしいと思います。
もう一つは、「人と組織を変える」という視点を持つことです。データサイエンティストの仕事は、分析を正しく行うだけではありません。分析によって誰かの考えや行動が変わり、その先の業務や組織、商品やサービスまで変わっていく仕事です。
分析した結果が誰に渡り、どのような行動を生み、その先に何を変えるのかまで考える。常にその視点を持つよう意識すると、この仕事の面白さがより見えてくると思います。
浦田
事業では、AIを導入すること自体をゴールにしてはいけません。一方、学生の皆さんにとって最初の一歩は、まず実際にAIに触れ、自分の目と手で確かめることだと思います。小さな課題でも、自分なりの仮説を持って使い、出力を検証してみてください。
AIが出した答えをそのまま受け取るのではなく、なぜうまくいったのか、なぜうまくいかなかったのかを考え、次の使い方を改善する。その試行錯誤の積み重ねによって、AIの得意・不得意が実感としてわかり、自分なりの使い方が身についていきます。ブレインパッドには、それを実践できる環境があると思っています。

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