社会科学で培った分析スキルで挑む「文系データサイエンティスト」の挑戦

「データサイエンティスト」と聞くと、理系の学問を専攻していた人をイメージする方が多いのではないでしょうか。その多くが理系出身なのは事実です。
一方で、多様なバックグラウンドを持つデータサイエンティストが数多く在籍するブレインパッドでは、社会科学系出身の社員も活躍しています。複雑な社会現象や人々の行動を対象にする社会科学は、実はビジネスにおけるデータ分析とも親和性が高いのです。
今回は、社会科学系出身の若手データサイエンティストがなぜこのキャリアを選んだのか、そして大学時代の学びがビジネスにどう活きているのかを、文系ならではの視点で語ります。


文系学問からデータサイエンティストの道を選んだ理由

――まず、大学時代の専攻分野と選考理由を教えてください。

福田
大学では計量政治学を専攻しており、主に投票行動論の研究に励んでいました。 きっかけは高校の「政治経済」の授業でした。政治そのものというより、「なぜ人はそう動くのか?」を客観的に解き明かす視点にすごく惹かれたんです。「データを使って人々の行動を明らかにしたい」という好奇心が決め手となり、大学ではデータを専門に扱うゼミを選びました。世論調査や選挙データを分析しながら、見えにくい人の心理や行動の裏側を紐解いていくプロセスが、とにかく面白かったです。


私は大学時代、購買行動分析(マーケティング・データサイエンス)を専攻していました。 きっかけは、「自分の金銭感覚を深掘りしてみたい!」と思ったことです。私の趣味は音楽活動で、普段からよく楽器を購入していました。当時コロナの影響で外出を自粛しており、1年間ネットで楽器を買い続けるような生活を送っていました。その時期に「スマホ画面で決済する5万円」と「現実の財布から出す5万円」では金銭感覚がまったく違うことにふと疑問を抱き、自分の中で衝撃が走りました(笑)。 そこで、「人間の抱く不可解な消費者心理をデータで解き明かしてみたい!」という好奇心が湧き、購買行動分析の道へ進むことを決めました。

――仕事としてデータサイエンティストを選んだ理由は何でしょうか?

福田
私の根底には、ずっと「データを使って人の行動を分析したい」という興味がありました。この気持ちは私の趣味のミステリー小説から来たもので、探偵の謎解きがデータ分析を通じて人の行動の裏にある背景を紐解いていく感覚と似ていて面白いなと感じています。 大学時代に政治経済のデータ分析をしていたのもこの興味があったからこそでした。そして、就職活動の時期に自分がやりたいことを改めて見つめ直し、挑戦したいデータ分析は政治の世界だけはないなと感じてデータサイエンティストというキャリアを選びました。


私は大学時代に因果推論の手法を学ぶ中で、ブレインパッドの技術ブログで「Staggered DiD」(※1)が紹介されているのを見つけたことがきっかけです。記事を読んで「高度な分析に取り組める環境はアカデミアに限定されるものではなく、ビジネスの現場でも挑戦可能なんだ」と考えるようになりました。そこから、データサイエンティストとして企業で働く道へ一気に惹かれていきました。

※1. 介入タイミングが複数あるときの差分の差分法:Staggered DiDの紹介

――ブレインパッドへの入社を決めた理由は何でしょうか?また、実際に入社してみてどうでしたか?

福田
一番の理由は、受託分析だからこそ特定の領域に絞られずさまざまな業界のデータ分析に携われる点に魅力を感じたからです。実際、入社して2年で、小売業界でのマーケティングやエネルギー業界での時系列予測など、幅広い業界・テーマで経験を積むことができました。 元々は「人々の行動を分析したい」という興味が強かったのですが、インフラ系企業のご支援を担当したことで、「人の行動」にとどまらないデータ分析の面白さに気づくことができました。そのプロジェクトはデータ分析として奥深いうえに社会的意義も非常に高く、大きなやりがいを感じながら取り組むことができました。こういった経験を通じて自分自身の興味の幅がさらに広がっていくことを実感でき、 入社してよかったと感じています。


私がブレインパッドに入社した決め手の一つは、研修制度が非常に充実していたことです。入社直後の3ヶ月間で行われる新卒研修のカリキュラムを見て、「未経験の領域があっても、入社後にしっかり学んで成長できる」と確信が持てました。 実際、4月のビジネス研修ではロジカルシンキングや資料作成などを学び、ビジネスパーソンとしての基礎を固めることができました。続く5月の技術研修では、データサイエンスやエンジニアリングの基礎へとステップアップ。大学時代には触れてこなかった多くの技術を学ぶことができました。そして6月には、ブレインパッド名物の「ミニプロ」があり、実際の案件さながらの緊張感の中で実践的なスキルを磨くことができました(※2)。

※2. 新卒研修から配属までのリアルレポート(2023年4月新卒入社編)

社会科学の学びの実務での活かし方

――社会科学分野の学びが実務に活きたと感じる場面はありましたか?

福田
大学時代に学んだ分析手法やプログラミングスキルといった知識は、実務でも活きる場面が多いなと感じています。一つ例を挙げると、小売業界のご支援で「ABテストが実施できていない」という状況の中、施策の効果測定を担当したことがありました。このテーマは、単純にデータを足し引きするだけの基礎集計では、「本当に施策のおかげで売上が上がったのか、それとも別の要因なのか」という検証が非常に難しいんです。その時に助けになったのが、大学時代に社会科学を通して学んだ「効果をどうやって正しく推定するか」という知識でした。 学んできた知識を実際の課題に当てはめることで、ただデータを並べるだけでなく、大学時代に学んだ「DID(差分の差分法)」というアプローチを応用した分析設計を自分で描き、クライアントへの提案・報告まで行うことができました。手法やツールを使いこなすことも大切ですが、社会科学で基礎として学んだ「因果関係をロジカルに解き明かすアプローチ」という考え方そのものが、実務における強みになると実感した瞬間でした。


私も大学で学んだ分析手法が業務に活きる場面は多いですが、少し違った視点でいうと「自ら必要なデータを集めに行く姿勢」が今も大きく活きています。 大学時代、研究で利用していたPOSデータにて、消費者に開示されていれば行動変化を促す重要な情報だが、実際に開示されているか不明な情報を取り扱う場面がありました。そこで、分析で利用するために実際に店舗まで足を運んで商品を確認してデータが意味する内容を突き止めました。この時にデータ構造を見るだけでなく「必要なら自ら現場で確認する」という重要性を学びました。 当時の経験は実務にも活きていて、業務でも必要に応じてN1分析®(※3)やインタビューを行い、自ら泥臭く一次情報を集めるようにしています。ビッグデータを扱う技術も当然大切ですが、自分の目や耳で一次情報に触れることの重要さに気づけているのは、まさに社会科学を研究していたからこそだと感じています。

※3. マーケティングやサービス開発などの領域において、「特定の1人(N=1)の顧客(あるいはユーザー)の動向を徹底的に深掘りし、その行動や心理から本質的なニーズを抽出する」手法のこと。


理系中心の環境で挑む、文系ならではの価値と伸び代

――周囲に理系出身者が多い環境へ飛び込むにあたって、入社前や入社直後に不安はありましたか?

福田
正直ありました。入社前は「データサイエンティスト=理系」というイメージを強く持っていましたし、実際に技術的なスキルの高さや分析手法の引き出しの多さはやはり理系出身者の大きな武器だなと今でも感じることがあります。 その一方で、社会科学の知見は、ビジネスにおけるデータ分析と非常に相性が良いという実感もあります。複雑な現象に対して「良い仮説を立て、それを検証していくプロセス」は、社会科学もビジネスも全く同じだからです。扱う領域(ドメイン)にもよりますが、むしろ社会科学のアプローチの方がビジネスの現場に適していると感じることも多いです。特に人の行動を分析するマーケティングのテーマは社会科学で扱うテーマとの親和性が高く、分析手法含めて応用が効きやすいと思います。


入社してから学部の文系出身者が社内に少ないと知ったときは少し不安を覚えました(※4)。でもそれ以上に、自分が大学で研究してきたことは絶対に実際の業務に活かせるはずだという確信とワクワク感の方が強かったです。理系出身者とはまた違う、自分ならではの強みを発揮して活躍したい!という意気込みがありました。 このように前向きに考えていた理由は、自分の学生時代の経験が周りと違うということは周囲から学べることがそれだけ多いと思っているからです。実際、入社後は大学時代に全く触れてこなかったエンジニアリングの領域において、大きな成長を実感しています。今では、文系出身者こそ入社後に得られる伸び代や成長が最も大きいのではないかと思っています!

※4. 24年卒のデータサイエンティスト職では学部卒率は12%

――実際にビジネスの現場に出てみて、学生時代の学びだけではカバーしきれなかった領域はありましたか?

福田
もちろんありました。大学時代に触れていた分析手法だけでは足りない場面もあり、むしろ入社後に学んだ手法の方が多いです。例えば、予測精度の向上を目的とした機械学習やフィルタリング技術、画像処理などは入社してから経験しました。 先ほど関さんも言っていた通り、ブレインパッドには多様な学生時代の経験を持ったメンバーが集まっており、お互いに成長を刺激し合える環境なので、日々新しい知識をキャッチアップしやすいです。例えば、年間300回以上開催されている社内勉強会には私も積極的に参加していまして、自発的に知識を吸収して学びを深めることができています。


先ほどお話ししたエンジニアリングスキルにも通じるのですが、チームで動くための「品質管理」や「コードの非属人化」のスキルは、入社後に必要性を感じて積極的に学びました。学生時代の研究は自分1人で進められましたが、ビジネスでは必ずチームでプロジェクトを動かします。そのためには、分析手法の知識だけでなく、チーム全員が円滑に開発を進めるためのエンジニアリングスキルが不可欠だと気づきました。もちろん、実践を通して身につける部分も大きかったですし、会社の先輩方が執筆された『先輩データサイエンティストからの指南書』(※5)という書籍も、とても参考になりました。 また、クライアントのビジネス背景を捉えるスキルも大学時代には得られなかったもので、今まさに重要性を感じています。学生時代の研究では企業との接点が少なく、ビジネスの前提条件を推測して補わざるを得ない面がありました。しかし今は、公開資料を読み解くのはもちろん、直接ヒアリングを重ねることで、クライアントのビジネス背景を正しく理解し、分析に反映させるよう徹底しています。

※5. 紹介記事:【書籍出版記念】データサイエンティストの「こういうことを教えて欲しかった」を1冊に!実践知を体系化した指南書の裏側を執筆陣が語る


社会科学を学ぶ学生へ

――最後に社会科学を学ぶ学生へメッセージをお願いします。

福田
文系から理系中心の環境へ飛び込むことには不安もありましたが、入社後に文系であることを意識する場面は全くありませんでした。データサイエンティストを目指す上で、文系・理系という枠にとらわれる必要はありません。大切なのは、「自分ならではの強み」をどう活かすかです。ぜひ貴重な学生時代のうちに、ご自身の強みや興味がある分野をトコトン伸ばしてほしいなと思います。 また、ブレインパッドでは「白金鉱業Meetup」(※6)という社外向けの勉強会を定期開催しています(私も運営に参加しています!)。こちらは、社内外の方と交流してビジネス現場でのデータ分析の今を感じられるイベントです。学生のみなさんのご参加も大歓迎ですので、ぜひお気軽に遊びに来てください。お待ちしています!

※6. https://brainpad-meetup.connpass.com/


私は、データサイエンティストにとって重要な資質のひとつは「未知の領域を前にしたときの探究心や好奇心」だと思っています。技術のトレンドやビジネスの課題は日々変化していきます。だからこそ、「面白そう!」「もっと知りたい!」という気持ちがこの仕事をするうえで何よりの原動力になります。 ブレインパッドのように周囲に理系出身者が多い環境であっても、それは見方を変えれば、自分が専門的に学んでいなかった領域を吸収できる絶好の機会でもあります。自ら一歩を踏み出し、周囲の優秀な仲間から貪欲に知見を吸収していけば、着実にプロフェッショナルとしての力を身につけていけます。未知の世界に飛び込むことを恐れず、ご自身の「ワクワクする好奇心」を道標にして、これからの研究や就職活動に挑んで欲しいです!


ブレインパッドでは新卒採用・中途採用共にまだまだ仲間を募集しています。
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www.brainpad.co.jp
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