「解く」から「教える」へ。 データサイエンティストが人材育成に携わる魅力とは。

ブレインパッドが提供する「データ活用人材育成サービス」では、データサイエンティストとして第一線で活躍してきたメンバーが講師として登壇しています。データ分析の最前線から、人を育てるプロフェッショナルへとキャリアを広げた彼らに、その魅力と目指す未来について語っていただきました。


石﨑 健太朗 摂待 太崇 井上 裕太
トランスフォーメーションユニット
データ活用人材育成サービス


トランスフォーメーションユニット
データ活用人材育成サービス
副リード
トランスフォーメーションユニット
データ活用人材育成サービス


信託銀行でアクチュアリー(保険や年金などのフィールドにおける数理業務の専門職)を経験後、行内のデジタル企画部でデータ分析に携わる。2020年にブレインパッドに入社し、約3年の受託分析経験を経て現職。 総合調査会社、シンクタンクを経て2012年にブレインパッドに入社後、データサイエンティストとして活躍。2017年より現部署で人材育成に携わる。 警備会社の研究開発職、地理空間情報会社を経て2017年にブレインパッドに入社。受託分析業務に従事後、2023年7月より現職。第三子の育休を経て、「他者の成長に関わりたい」という思いから異動を決意。

データサイエンティストから教育分野へのキャリアの広がり

──まず、みなさんの自己紹介をお願いします。

摂待
これまで、総合調査会社やシンクタンクで勤務していました。2012年にブレインパッドに入社し、データサイエンティストとしてさまざまなプロジェクトに携わりました。2017年に、データ活用人材育成サービスを提供する部門に移り、それ以来、社会人向けの研修やEラーニングコンテンツの企画・開発に関わる仕事に取り組んできました。現在は副責任者として、研修講師の役割だけでなく研修デリバリーにおける担当講師陣のアサインメントをはじめ、チーム全体を管理する業務も担当しています。

石﨑
2020年に入社し、5年目になります。前職は信託銀行でアクチュアリー(保険や年金などのフィールドにおける数理業務の専門職)として勤務していたのですが、社内公募でデジタル企画部に異動し、データ分析プロジェクトに関わりました。そこでデータ分析やDXの魅力を知った結果、ブレインパッドへ転職しました。入社後は約3年間、アナリティクスコンサルティングユニットでデータサイエンティストとして受託分析を担当し、2023年に現在の部署に異動しました。実は母方の家系が学習塾を経営していたこともあり、もともと人材育成には興味があり、ブレインパッドに入社したときから人材育成サービスに関心を持っていました。

井上
私は、2017年に入社し、直近までクライアント企業の分析業務を担当していました。2023年の7月から11月まで第三子の育休を取得し、12月に復帰。その際に部署を異動し、人材育成サービスに携わっています。異動のきっかけは、社内リクルートのために摂待さんが行った説明会でした。求められる人材像として示された要件のうち、特に「他者の成長に興味がある」という点が自分に当てはまると感じ、異動を決めました。

── ありがとうございます。皆さんが携わっている「データ活用人材育成サービス」について教えていただけますか?

摂待
データ活用に関する講座を、社会人向けに提供しています。当社は2004年に設立し創業20年を迎えますが、約12年前に「データ活用人材育成サービス」が立ち上がりました。きっかけは「データサイエンティストではないが、日常業務においてデータを適切に分析・活用して、自分たちでデータから新しい価値を生み出したい」というお客様からの声です。ちょうど「データの民主化」や「データ分析の民主化」というキーワードが脚光を浴び始める時期でしたので、「データ活用人材育成サービス」というサービス名になりました。
データサイエンティストになる方は、統計や数学の勉強を苦もなくできる人が多いです。しかし、本当に支援が必要なのは、普段から数学に多く触れる訳ではないけれど、仕事でデータを使わなければいけない人たちも含めた全てのビジネスパーソンだと考えています。そういった方々により広くサービスを届けたいと考えました。

──具体的にはどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

摂待
我々が提供しているサービスは大きく2つ、企業研修と公開講座の提供形態に分かれます。

まず企業研修では、特定の企業様向けにさまざまな人材育成ニーズに応じた研修を提供しています。その企業特有の課題や文化に合わせたカスタマイズ研修を提供しています。
マネジメント、エントリーアナリスト、ビジネスアナリスト・データストラテジスト、データアナリスト・データサイエンティストまで、この10年ほどで多くのプログラムを開発し、提供してきました。

もうひとつの公開講座では、さまざまな業界・業種の受講者が集まって、基礎的なデータ分析スキルから統計解析、機械学習といった応用的な知識・プログラミングなどを学んでいただきます。さまざまな背景で受講する対象者にあわせてプログラムの内容も異なりますし、我々の研修プログラムでは必ず「演習」と呼ばれる実践の場を提供して、現場力を身に付けていただけるのが大きな特徴です。例えば、マネジメント向けの研修では、データ活用の戦略的な意義や組織づくりの観点から講義をした上で、それらを踏まえて現場で起こりうるテーマをもとに討議や企画作りに取り組んでいただいたり、実務者向けの研修では、具体的な分析手法、プログラミングの知識だけではなく、実際の分析プロジェクトを想定した総合演習に取り組んでいただくことで、現場での実践力を身に付けていただきます。このように多様なニーズに対応できることも、私たちの強みだと思います。また、講師業に加え、ティーチングアシスタントとして関わることで、研修プログラムや講師の立ち振る舞いを客観的に学ぶ機会もあり、さまざまな形で我々自身が成長できる機会もあります。


「教える」ことから見えてくる、新しいデータ分析の面白さ

── データサイエンティストから、受講者を教える立場になって、どのような気づきがありましたか?

摂待
多くの受講者を前に研修を行う中で、データ分析について最も理解が深まり新しい発見をしているのは、実は講師である自分自身かもしれません。人に何かを伝えようと思うと、その内容のコアな部分を理解していないと伝わらないんです。数式を使って説明する際に「あ、こういうことだったんだ」と、その場で新しい気づきを得ることもあります。ひょっとしたら、私が研修を一番楽しんでいるかもしれないと感じるくらい、面白いですね。

井上
私の場合、データサイエンティストだった頃は「自らが課題を解くために学べればよい」というモチベーションでした。ですが、誰かに伝えるために学ぶ方が、より深く理解できている実感があります。例えば、A/Bテストや統計的仮説検定について、自分自身が使うにはある程度読んで使えば分かりますが、受講者の皆さんに教科書的な説明をしてもなかなか伝わりません。理解してもらえるように伝わりやすい表現を考える過程で、自分自身の理解もより深まっていきますよね。

石﨑
私も同感です。前職では研修を受ける側でしたが、その際は専門用語やさまざまな業界のケーススタディを大量に詰め込むだけで、理解したつもりになっていました。その後、データサイエンティストとして実務経験を積み、いざ教える側に回ってみると、単に教えるだけでは以前と同じような詰め込み型の研修になりがちであることに気付きました。

初学者やこれからデータ分析の実務に携わろうとしている方々には、知識だけでなく、データ分析のプロセスやその意義を深く理解していただきたいと考えています。こうしたメインメッセージをしっかりと伝えるために、研修ではさまざまな工夫を凝らしています。その工夫が上手く機能したときには、本当に充実感があります。

──この仕事ならではの役割や専門性について教えてください。キャリアの観点でどのような魅力がありますか?

摂待
私たちの役割は単なる知識の伝達ではありません。データ活用を通じてビジネス現場の改善や効率化を進めるためには、一人ひとりのデータに対する意識変革も必要です。実は、データサイエンティストとして働いていた頃、優れた分析結果を出しても現場で活用されないケースをよく目にしました。

具体例をお伝えすると、ある企業での需要予測プロジェクトで、私たちが提供した予測結果の数値を採用してくださらない商品発注担当者がいまして「日常業務で、数千種類ある商品の発注量をどうやって決めているんですか?」と聞いたら「過去1週間の売れ行きを見て、あとは勘で発注量を決めています」という答えが返ってきたんです。そこで「ご自身の業務を他のスタッフに引き継ぐときはどうするのですか?」と訊いたところ「自分と同じように業務を進めてもらう。人間の勘の方が頼りになるから」という回答が加わりました。
目の前にデータがあっても、それが見過ごされたり有効に活用されない現実を見るにつけ、データ活用の土台となる「人材育成」の重要性を痛感しました。

石﨑
私も前職で似たような経験をしました。前職のデジタル企画部門にいたとき「人が育たないと何も進まない」ということを強く実感したんです。自分一人が頑張っても、自分のチームは元より、利用する経営者や業務担当者等、周りの理解や協力がなければ、組織としての変革は難しい。だからこそ、人に働きかける仕事に魅力を感じました。

また、データサイエンティストとしての経験があることで、経験を交えながら説得力のある説明ができます。さらに、人に教えることを通じて身につく能力は、マネジメントなど他の領域でも活かせると感じています。相手の立場に立って物事を考え、適切な形で伝えていく力。これは将来、事業部門のマネージャーとして活躍する際にも重要なスキルになるのではないかと思います。

井上
データサイエンティストの3つのスキル領域(データサイエンス・ビジネス・データエンジニアリング)に「エデュケーション」という新たな専門性を加えられるのではないかと思うくらい重要性を感じています。データサイエンティストの多くは「自分で解きたい」というモチベーションが強いと思います。私もその気持ちは分かりますが、他の人ができるようになるのを支援することも同じくらい面白く、重要な仕事であると感じています。

──この仕事に向いている人はどのような方だと思いますか?

石﨑
「おせっかい」な性格の人が向いていると思います。研修中は刻々と状況が変化するため、講師だけでは対応しきれないことも多々あります。周りのフォローが必要な場面を自然と察知して、サポートできる人が活躍できます。また、お客様とのギャップを楽しめる人も向いています。受講者の方々はさまざまなバックグラウンドを持っていて、理解度も異なります。その差を埋めていく過程を楽しめる人、寄り添える人、つまり、少しおせっかいなくらいな人であることが大切だと感じます。

井上
私は「オープン」な人だと思います。人と関わることにポジティブで、自分の知識や経験を惜しみなく共有できる人。また「魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えた方がいい」という考えに共感できる人が向いています。自分が解くことよりも、誰かができるようになることに喜びを感じられる方が活躍できると思います。

摂待
縁の下の力持ちのような人ですよね。だからこそ、本質に向き合える人、未来志向で考えられる人が大切だと思います。私たちは、一般的な学校教育のように「教育指導要領」に従って教えればよい仕事ではありません。現代の刻々と変化するビジネス環境にあって、データを活用して事業変革や業務効率化を推進したいというお客様のリアルな課題と向き合い、ともに解決策を見出していきたいという気持ちが求められます。そのためには、単に知識を伝えるだけでなく、お客様と一緒に成長していける人、またその成長をお客様と一緒に味わっていける方を求めています。加えて、お客様組織や分析プロジェクト、または個々人の現在地から、あるべき姿や方向性を見据えながら社会に対して物事を改善していく姿勢も重要だと考えています。

──チームの雰囲気や、働く環境について教えてください。

摂待
年齢層は20代から50代後半まで幅広く、多様性の高い組織です。お子さんがいる方への配慮など、ワークライフバランスも大切にしています。データ分析の能力を活かしながら、人に教えることに情熱を持って取り組める環境だと思います。

石﨑
チームの特徴がよく表れているのが、研修中のSlackでのコミュニケーションです。講師陣の間で活発な意見交換が行われ、サービスをより良くしていこうという意識が自然と共有されています。人と人との繋がりを大切にする文化があります。


お客様の本当の成果につながるデータ活用支援をしたい

──これからどのような挑戦をしていきたいですか?

井上
私は、受講者の方々が研修で得たスキルを実業務で運用できるようにサポートしていきたいですね。現状の講座では実践的な演習も取り入れていますが、まだ足りないと感じています。また、研修の前段階として、組織全体のデータ活用戦略の相談に乗るようなコンサルテーションにも挑戦していきたいですね。

石﨑
研修はどうしても「イベント」的な性格が強くなりがちですが、それだけでは充分ではありません。お客様個人や企業の成長過程に長期的に寄り添い、組織全体のデータ活用力向上を実感できるような関係性を築いていきたいと考えています。

摂待
いま私たちが相対しているお客様のニーズは、統計学をはじめとしてデータアナリティスクスの知識・スキルを「習って覚えて使う」というところから、ビジネスの現場で「実際の成果を出す」というところまで変化してきています。また本当の”DX”を実現するためには、知識やスキルを得るだけでなく、経験を通じた集合知を高めていく努力も必要になります。

我々データ活用人材育成サービスは、ブレインパッドの一員として、単にデータ分析のスキルを教えるだけでなく、組織全体のデータ活用力を高め、実際の成果創出までサポートする。そんな「データ活用のプロフェッショナル」として、より多くの企業の変革を支援していきたいと考えています。それぞれが持つデータサイエンスの専門性を活かしながら、より多くの人々がデータを活用できる社会の実現を目指して、これからも挑戦を続けていきます。

──ありがとうございました。


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