若手データサイエンティストが伝えたい「課題特定から取り組むデータ分析プロジェクトってどんな仕事?」

本記事は、当社がクライアント企業から受託し、データサイエンティストが関わるプロジェクトの一例を就活生の皆さんに具体的に理解してもらうことを目的として、ブレインパッドに新卒入社した若手データサイエンティストがインタビューを企画し、記事執筆したものです。
今回は新卒入社4年目で、現在はプロジェクトマネジャーとして活躍する天利さんに、データサイエンティストとしての業務内容をお話しいただきました。データサイエンティストの業務では「分析」が注目されがちですが、今回は特に、課題特定の段階で何を考え、どのようにプロジェクトを進めていったのかについて詳細に解説します。

データサイエンティストの業務の全体像は別の記事で紹介していますので、本記事と合わせてご一読ください。
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取材対象者

1. プロジェクト紹介:仮説立案と分析による検証の行き来で効果の高いビジネスアクションを導く

──早速ですが、今回お話しいただくプロジェクトの概要を教えてください。

今回は、とあるメーカーのデジタルマーケティング部門に対して、自社製品の売上最大化につながる示唆出しを行ったプロジェクトについてお話しします。このプロジェクトでは、クライアントの部門内にて売上向上を分解した複数のKPIが設定されており、そのKPIを向上させるために製品購入を検討するお客さまにどんな行動を促すべきか、その行動を取りやすいお客さまはどんな人なのかといった示唆を出すための分析を行ったプロジェクトでした。
分析アプローチとしては、セグメントを切り分けた基礎集計や決定木を用いた可視化を多く行いました。その可視化された結果を解釈した上で、クライアントとの議論を通してビジネスアクションを合意していくという流れでプロジェクトを進めていました。

──天利さんはどのような役割を担っていましたか?

私はこのプロジェクトに2年半近く携わっているのですが、アサイン当初はEDA(探索的データ分析)やモデリングなど、いわゆる”分析”と呼ばれる作業がメインでした。プロジェクト歴が長くなるにつれて、クライアントへの課題感のヒアリングや分析設計の検討、チームメンバーのタスクマネジメントなどさまざまな役割を任せてもらえるようになりました。

──データサイエンティストの職務領域は課題特定・分析・施策実証と多岐にわたると思いますが、本プロジェクトではどの領域に力を割いていますか?

課題特定と分析の領域(下図参照)に注力をしており、2つの領域を行き来するようなイメージです。流れとしては、クライアントへのヒアリングをもとに、KPI達成に至るまでの課題は何かの仮説を立てて、その仮説が正しいかを検証するための分析を実施します。分析から得られた示唆をクライアントにぶつけ、その議論内容をもとにまた新しい仮説を立てるという動きを、ビジネスアクションが意思決定できるまで続けるスタイルです。特に大切になるのが課題特定です。それは、立てる仮説や課題が不明瞭だったり、クライアントが真に知りたい内容からずれていたりすると、その後の分析フェーズで得られた示唆が施策や新しい仮説立てに活かせなくなってしまうからです。

──課題特定を目的としたクライアントへのヒアリングの際には、どんなことを意識していますか?

例えば、‍‍‍クライアントから「こういう方向性の施策展開をすると良さそうだと思うんですよね~」という風に、アクションのイメージだけが示されて分析を依頼されることがありました。その際には、施策を具体化するためにどんな示唆が得られると嬉しいかを私から仮説として提示し、クライアントの意見を聞くように意識していました。クライアントと意見を交換できるステップまで来ると、分析観点が明らかになっているということなので、実際の分析を始めることができます。‍‍‍

──なるほど。課題特定と分析の領域を行き来すると述べられていましたが、分析結果を報告して終わりではないのですか?

最初のヒアリングで得られる分析観点はどうしても表面的なものになりがちで、分析結果を解釈することでより詳細で確度の高い仮説を立てられることが多いです。そのため、分析後のクライアントとの打ち合わせでは分析結果を見せるだけに留まらず、新しい仮説も示して議論を行いました。このように、データを見ながら仮説の解像度を上げ、それを更に検証するという段階を繰り返すことで、ターゲットや促すべき行動が磨かれた効果の高い施策を生み出すことができました。


2.身につくスキルとやりがい:仮説思考や分析を通じて、「そうそう、そういうこと!」と肯定的に反応いただけると嬉しい

──このプロジェクトでどのようなスキルが身についたと実感していますか?

一番は初期仮説を立てる力が身につきました。加えて、分析結果を解釈した上で新たな仮説を立てて、分析の深掘りの方向性を筋よく示せるようになったとも感じます。

──仮説を立てるという経験は学生時代には積みにくいですよね。

たしかにそうですが、私の場合はスキルのベースは学生時代の研究で得た、仮説を立ててそれを検証するサイクルを回した経験にあると考えています。研究には、まず背景・目的があり、新規性を調査して、実験方法を具体化し、結果が出て、それを改善していくという流れがあります。この流れの中では仮説を立てているはずですし、現在の分析プロジェクトの進め方と共通項が多いと考えています。また、研究でなくとも、考える作業全般で仮説を立てる力を身につけていくことも可能です。例えば、学校のレポートを杓子定規にこなすだけではなくて、別の視点から考えてみたり、グループワークで積極的に発言したり、ものごとを考え抜くという訓練をすることでセンスが磨かれるのではないでしょうか。

──ありがとうございます、ビジネスの場以外でも取り組めることは多そうですね。他に成長を感じる部分はありますか?

他に挙げるとすれば、仮説を検証するために分析タスクに落とし込む力がついたことです。学生時代も分析自体は行っていましたが、今思うと分析目的を明確に言語化できていない状態で作業してしまうこともありました。ブレインパッドに入社してからは、分析作業を始める前にどんな結果が得られれば仮説を立証できたことになるのかを言語化するなど、手戻りが起きないようにするための方法論が確立されました。

──上記のようなスキルを伸ばす上でのコツはありますか?

ありきたりですが、会議の中で積極的に発言することですね。自身のタスクとして割り当てられていなくとも、仮説や分析設計を考えた上で発言し、プロジェクトの上司から意見をフィードバックしてもらうことで、自分に足りなかった観点を少しずつ補っていきました。
自分一人で検討を進めている際にも、自分以外の人にフィードバックしてもらったポイントを思い出して内容を疑うようにしています。とはいえ、疑ってばかりでは思考が広がりません。疑った後は改めて自由に改善案を出していき、アイデアが尽きて整理が済んだらまた疑います。こんな風に人格を切り替えるような意識で考えを深めることで、検討内容がブラッシュアップされていきます。

──非常に参考になる考え方ですね。話は変わりますが、プロジェクトの中でどんなときにやりがいを感じますか?

クライアントの中でも言語化しきれていない課題を、ヒアリングやその後の分析を通じて具体化できたときです。クライアントとの会議で「そうそう、そういうことが言いたかったんだよ!」と肯定的な反応をいただけたときは非常に嬉しいです。そのようなやり取りを積み重ねていくと、他にもこんなテーマについてもお願いできないか?とクライアントから頼られることが増えていくので、そういった場面でも価値提供できていると実感できます。


3.今後のキャリアと就活生へのメッセージ:日々学びながら、得意領域を見つけていきたい

──今後どのようなデータサイエンティストになっていきたいとイメージされていますか?

特定の業界に強みを持つデータサイエンティストになりたいです。現在は、今回話したプロジェクト以外にもさまざまな業界のプロジェクトにチャレンジさせてもらっているため、その中で自分の強みとなる業界を見つけたいと考えています。

──さまざまなクライアントに関わることができるのもブレインパッドでの働き方の特徴ですよね。これまで合計でいくつのクライアントを支援してきたんですか?

これまで3社のクライアントへの支援経験があります。さまざまな業界特有の考え方に触れられ、分析できるデータの種類も多種多様なので楽しいです。一方で、クライアント以上の業務知識を得ることは難しい場合もありますが、外の視点からクライアントの課題解決を提言することで価値発揮できていると考えています。
いくつかの業界に携わる中で、興味のある領域は絞り込めてきました。ただ、まだ自分の強みを活かせる領域なのかは確信を持てていないので、引き続き働きながら模索していくつもりです。

──最後に、就活生のみなさんへメッセージをお願いします!

ブレインパッドのデータサイエンティストは、戦略立案からアクションの自動化までデータ活用領域の全体を見渡す必要があります。そのため、求められる能力も幅広いですが、その分仕事で学べる範囲も多いです。ブレインパッドは社内で知見共有や勉強会の機会も多く、学ぶことが好きな人にはうってつけの環境だと思います。日々の学びを意欲的に楽しみながら、ぜひ一緒にデータ活用を推進していきましょう!


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