新卒社員の職種横断チームが挑戦した衛星データ×マルチモーダルAIプロジェクトの現在地

ブレインパッドでは、データサイエンティストやエンジニア、コンサルタントなど、さまざまな職種のメンバーが協働してプロジェクトを推進しています。今回は、以前に本ブログでもご紹介した衛星データとマルチモーダルAI(複数の種類の情報を統合的に処理するAI)を活用したプロジェクトを推進するメンバーに、職種横断チームでの挑戦の現在地を語ってもらいました。

山下 斐央 嶋 直紀 志知 晃広 吉野 倫太郎 角田 侑平
プロダクトユニット サービス推進グループ
カスタマーサクセス
アナリティクスコンサルティングユニット
データサイエンティスト
プロダクトユニット フロンティア開発グループ
エンジニア

アナリティクスコンサルティングユニット
データサイエンティスト
プロダクトユニット フロンティア開発グループ
エンジニア

プロジェクトの概要

衛星データとマルチモーダルAIを活用した「Orbital Sense(オービタル・センス)」は、新卒社員の有志による発案により、社員が自由にアイデアを経営陣に提案できる取り組み「これDoすか?会議」(社内通称:D会議)から生まれた衛星データ活用ソリューションです。近年、ロケット打ち上げコストの低下により衛星データの取得がより安価かつ高頻度で可能になったことを背景に、「宇宙から得られるデータ」という新領域に着目した本プロジェクトは、経済産業省が公募した「衛星データ利用環境整備・ソリューション開発支援事業」に採択されました。
現在は、不動産分野での活用を進めており、「街の雰囲気」などの抽象的な指示からマルチモーダルAIが意図を類推して、日本全土の膨大な衛星画像の中から該当する地域を提示する仕組みを構築しています。

多様な職種のメンバーが集まったプロジェクトチーム

── 改めて、みなさんの普段の業務と本プロジェクトでの役割を教えてください。

志知
プロダクトユニットのフロンティア開発グループでエンジニアとして、新規プロダクト開発を担当しています。本プロジェクトでは企画立案者として全体をリードし、フロントエンド開発も担当しました。


データサイエンティストとして、これまで広告業界のプロジェクトを経験してきました。本プロジェクトでは、デモアプリのプレスリリースに向けて、LP(ランディングページ)の制作を担当しました。

吉野
データサイエンティストとして、主にクライアントのマーケティングのデータ分析を行っています。本プロジェクトでは、バックエンドのマルチモーダル検索機能を主に担当し、加えてエリア検索のデータ整備も行いました。

角田
エンジニアとして、プロトタイプ版のAIエージェントや弊社プロダクトのレコメンドアルゴリズムの開発を行っています。 本プロジェクトでは、インフラ周りやユーザー情報の取り扱いを担当しました。

山下
プロダクトユニットのカスタマーサクセス職として、プロダクトを利用いただいているクライアントへ運用支援を行っています。 本プロジェクトには途中から参画し、法務・労務・総務などの各部署と連携して、プレスリリースに必要な社内調整を担当しました。

── 本プロジェクトでのこの半年間のアップデートを教えてください。

志知
このたびプレスリリースを出しましたが、大きな進捗が2つあります。1つ目は、ジオテクノロジーズ株式会社という地理データをさまざまな企業に提供している外部パートナー企業との出会いがあり、同社との共同研究が発足することになりました。2つ目は、LPとWebアプリの開発です。前回は経済産業省の公募へ取り組んでいる段階でしたが、今回は実際にアプリケーション「Orbital Sense」として形になり、お使いいただける状態になりました。

プレスリリース:ブレインパッド、ジオテクノロジーズと「生成AI×地理空間データ」の共同研究を開始
www.brainpad.co.jp

外部の共同研究パートナーとの出会い

── 共同研究パートナーのジオテクノロジーズ社とはどのように出会ったのでしょうか。

志知
ブレインパッド社員からの紹介でつながりました。実際に私たちが開発しているものに興味を持っていただくために、先方の社員を対象にデモンストレーションを実施し、約80名の方々に参加いただきました。デモでの説明を経て、強い関心を寄せていただいたことから今回の共同研究に至りました。

── 共同研究に至るまでどのような気持ちでプロジェクトに臨んでいましたか。


不安よりもワクワク感の方が強かったです。衛星データとマルチモーダルAIの技術を社内で検証していた時から、地理空間データを専門的に扱う企業からは可能性を感じていただけるのではという仮説を持っていました。実際に地理空間データに精通している企業の方々から良い反応をいただき、その仮説が確信に変わっていきました。

吉野
昨年度から研究として取り組んでいましたが、衛星データとマルチモーダルAIのビジネス活用は継続的な課題でした。そのため、興味を持っていただける企業が見つかったことは嬉しく、しかもビジネスモデルとしての相性も良いと感じていました。

志知
外部パートナーが見つかってからは、技術面だけでなく、どのように協業していくかを具体的に検討する必要がありました。今まで自由に開発していたものを、先方の興味関心に応じて落とし込んでいく作業は難しかったです。

本業のかたわら自主的に開発を進める

── それぞれ所属チームでの業務がある中で、本プロジェクトのためにどのようにチームワークを築いていったのでしょうか。

志知
業務時間内では週1〜2回、30分程度のミーティングを設定し、定期的に進捗確認を行っていました。ただし各自が本業を抱える中でまとまった時間を確保することは難しく、時には土日に出社して作業を行ったり、業務後に集まれるメンバーで開発を進めたりすることもありました。

吉野
このプロジェクトの体制で特徴的だったのは、メンバーのほとんどが同期入社の新卒社員だったことです。社内プロジェクトとして発足していたため、会社として認められた一定の時間枠は存在していましたが、実際には時間が不足していたため、多くの作業を有志で行っていたのが実情です。プロジェクトの進行は社内の標準的なフローを踏まず、通常は営業担当をつけて行うアポイント取得から推進までを全て自分たちで対応しました。苦労した点もありましたが、私たちのモチベーションを原動力に主体的に進められたと思います。

── 角田さんと山下さんは後からプロジェクトに参画されたということですが、いつ頃から参加されたのでしょうか。

角田
ジオテクノロジーズ社とのデモ発表会の頃から本格的に参画しました。それまでは時々意見交換をする程度でしたが、デモの前後からコード開発に携わるようになりました。デモンストレーションが衛星データを扱うスペシャリストの方々に響いているのを目の当たりにしたことで、これをプロダクトとして世に出したいと強く感じました。エンジニアとしての視点からリリースに必要な機能追加などで貢献できると考え、さらに注力するようになりました。

山下
私が参画したタイミングはジオテクノロジーズ社との協業が決まり、プレスリリースに向けて社内でさまざまな調整が必要になった時期です。もともと私は「これDoすか?会議」(当社社員が自らのビジネスアイデアを自由に経営陣に提案できる取り組み:通称 D会議)の主催やHackBP(ブレインパッドをハック(改善)する活動)の運営メンバーを務めており、本プロジェクトの活動は以前から把握していました。そのようなバックグラウンドを理解した上で声をかけてもらったのだと思います。

吉野
私たちが開発と社内調整を並行して進める中で、会社としての落としどころを見つけることにリソースを割けなくなってきていました。そこで、社内調整が以前から得意だった山下さんに参画を依頼しました。

山下
日頃から部署を横断した交流を大切にしていたため、法務・労務・総務などの各部署との調整をスムーズに進めることができましたが、その中でもさまざまな制約が出てきました。例えば個人情報の取り扱いに関する制限です。こうした制約について技術チームと合意を形成していく際には、私自身がある程度技術的な知識を持っていることが役立ちました。制約に対する代替案を提案しながら、会社側とプロジェクト関与者のすり合わせを行うことができたと思います。


職種横断チームで生まれた相乗効果

── このプロジェクトで難しかったこととやりがいを感じたことを教えてください。

志知
良かった点は、社内の多くの職種の人を巻き込めたことです。最終的にプレスリリースを出し、開発したものを世に送り出すというゴールが明確にあったため、躊躇せずに人を巻き込み、必要であれば予算確保や関係者への相談も迅速に行いました。

難しかったのは時間の確保です。社内プロジェクトとして一定の工数は確保されていたものの、プレスリリースまでの作業量を考えると到底足りませんでした。各自のモチベーションに基づいて時間を作る必要があり、お互いにやり遂げるという意識を共有しながら推進しました。


新卒社員の有志によるボトムアップで進めてきた活動が外部に向けた成果として発信できたことに大きなやりがいを感じています。

難しかった点はプロダクトの品質管理です。自由に開発するのとは異なり、プロダクトレベルの品質を確保する必要がありました。技術面はもとより全体的な品質を高めることの難しさは、チーム全員が感じていたと思います。

山下
エンジニア以外の職種からプロジェクトに貢献できたことが良かったと感じています。大変だった点は、社内調整において明確な手順が存在しなかったことです。さまざまな確認事項が発生する中、担当部署を推測して問い合わせたものの、別の部署を案内されることもありました。また、社内調整の過程で判明した制約事項について、開発メンバーのモチベーションを維持しながら、どのように説明し、現実的な落としどころを提案していくかという点も工夫が必要でした。

吉野
衛星画像を使って日本中を空から見て解釈し、場所を探すという機能の価値をどう伝えるかという課題が常にあり、端的にはGoogleマップとの差別化をどう図るか、「誰が何のために使い、何が解決できれば価値があるのか」を考えました。また、開発過程でマルチモーダルAIという技術そのものの可能性を探ることも必要でした。これは昨年の研究プロジェクトの一環として取り組んでいたものですが、どのようなデータなら解釈可能で、どういった計算処理によって何が実現できるのかを体系的に理解することは、現在も継続的な課題となっています。

やりがいについては、プログラミング言語のTypeScriptやフロントエンド開発の新しいスキルを習得できたことです。未経験の領域に急に飛び込むことになりましたが、以前から新しいスキルを身につけたいと思っていたため、自身にとっても良い成長の機会となりました。

角田
技術的な側面に大きなやりがいを感じています。普段触れる機会の少ない衛星データや、先端技術を駆使したアプリケーション開発に携われたことが魅力的でした。他に類似事例がない中で、自分たちで考えながら活用方法を試行錯誤していくプロセスが楽しく感じています。

難しかった点は、基本的に新卒入社3年目の自分たちだけで進めていることです。通常の業務では上司にアドバイスを求めることができますが、このプロジェクトでは自分たちで判断する必要があり、未経験の領域でも自ら考えて解決策を見出す必要がありました。チーム開発の観点では、LLM(大規模言語モデル)を活用して効率を高めていましたが、生成されるコードの量も増加しました。限られた時間の中でチーム開発を進めると、全体像の把握が困難になったり、相互レビューが不十分になったりすることがありました。LLMを活用した新しい開発手法については依然として難しい側面があり、今後も継続的に取り組んでいきたい領域です。


0→1のプロジェクトを経験して得た学び

── 成長を感じたことや学びになったことを教えてください。

志知
目標を設定し、一つずつ実行していけば物事は前進するということが分かりました。このプロジェクトでの経験を通じて、同様のアプローチで他のプロジェクトも実現可能だという実感を得ることができました。


スキルの向上はあったと思いますが、それ以上に経験を得たという実感が強いです。まだ十分に言語化できていませんが、物事に対する視野や解像度は確実に向上したと感じています。今後ボトムアップで活動を進めようとする後輩たちの助けになるよう、この経験を社内に発信していくこともできると考えています。

吉野
技術的な成長が大きかったと感じています。今回開発した機能は他にあまり例がないものだったため、それを一から構築する経験を積めました。また、通常業務では触れることのない技術への理解を深めることができました。完全なプロダクトとして仕上げるのは、おそらくブレインパッドのなかでも数少ない機会だったと思います。そのような貴重な機会に立ち会えたことは、良い経験となりました。

角田
技術的な面ではさまざまなチャレンジの機会をいただき、多くを学ぶことができました。しかし、最も大きな収穫は、プロジェクトの立ち上げを間近で経験できたことです。ゼロから何かを生み出すプロセス全体を肌で感じることができ、これは貴重な経験であり、大きな成長につながったと考えています。

山下
開発以外でプロダクトをリリースするために必要なプロセスを理解できたことが大きな学びでした。具体的には、リリースまでのフローと注意すべきポイントです。例えば、個人情報の取り扱い方法や、ロゴ作成時の権利侵害の確認など、社内フロー以前に、プログラミング以外の部分で考慮すべき懸念事項や重要なポイントを学べたことは、勉強になりました。

異職種メンバーの共創活動に向ける期待

── 本プロジェクトの今後の展望を教えてください。

志知
今後もジオテクノロジーズ社との共同研究を進めていきます。その中で、今回開発したアプリケーションや検証した技術の具体的な活用方法を探っていく予定です。例えば、特定の産業における課題解決への応用や、ジオテクノロジーズ社の業務改善への活用などを検討しています。私たちが開発したものが実際に稼働し、誰かの役に立つ状態を実現することが目標です。一方で、ブレインパッドとしては、今回検証したベクトル検索技術や衛星データを活用したソリューションをより広く展開していきたいと考えています。データ活用を強みとするブレインパッドとして、宇宙・地理情報領域で新たなソリューションを確立し、社会に貢献できるプロダクトを生み出していきたいと考えています。

吉野
AIを用いた開発が今回のプロジェクトの肝でした。最新のAI技術に大きくサポートされながら開発を進めることができ、そのおかげで、短期間に少人数のメンバーでこれだけのものを作り上げることができたと振り返ります。なにより多様な職種のメンバーが協働したことで、ブレインパッドにはさまざまな専門性を持つ人材がいることの意義を改めて実感しました。今後は、コンサルタント、データサイエンティスト、エンジニア、カスタマーサクセスなど、異なる職種のメンバーが協力することで実現できる取り組みが、後輩たちの世代でも広がっていくことを期待しています。

── 本日はありがとうございました。

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