DXの今とこれから ~『DOORS』が残した“DX成功のための10のTips”~【後編】

ブレインパッドは2020年2月19日(水)に、創業来初の大型カンファレンスとなる「DOORS-BrainPad DX Conference-」を開催しました。
このカンファレンスは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にどう取り組んでいけば良いのか悩みを持つ企業の皆さまに向けて、各業界の最新の取り組みや成功事例に触れていただく「扉」となることを願い開催しました。
本ブログは、当日の講演より「DX成功のための10のTips」後編をお届けします。


こんにちは。ブレインパッド広報です。
本ブログでは、2020年2月19日(水)に開催した、「DOORS-BrainPad DX Conference-」の事後レポートとして、後編のTips5~Tips10をご紹介します。


<目次>

― 前 編 ― ― 後 編 ―


【Tips5】専門家でなくともAI・機械学習が使える時代へ


Session:Google・Microsoft・Amazonが描く、これからのPaaS。「世界を牽引するテクノロジー」を用いたデータ活用に迫る
グーグル合同会社 Google Cloud デベロッパー アドボケイト 佐藤 一憲氏
日本マイクロソフト株式会社 シニアクラウド ソリューションアーキテクト 畠山 大有氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 機械学習ソリューションアーキテクト 鮫島 正樹氏
株式会社ブレインパッド CDTO 太田 満久


「AIの民主化=誰もがAIを使える世界」をテーマに、業界の最先端を行く3大クラウドベンダーと、当社CDTO(チーフ・データ・テクノロジー・オフィサー)の太田が登壇。(このような豪華セッションが実現できるのもブレインパッドならではです!)
このセッションでは、DXを取り巻く課題と、DX活用に欠かせない最新のクラウドサービスを解説しました。

「AIの民主化」とは、AIが専門家だけでなく、一般の誰もが使えるようになることを示します。
太田は、「データ分析はあくまで手段であり、そこから課題を見出し、企業へ価値ある形にして還元していくことが最も重要」だと述べたうえで、多くの企業が陥りやすい課題として、データの価値を生み出すために必要な「計算資源」「アルゴリズム」「データの置き場所」が複数のクラウドに散らばっている“マルチクラウド状態”を指摘。「データをどう集約して、どう使うかを考える必要がある」と提示しました。

グーグル合同会社・佐藤氏は、機械学習のハードルを下げる“AutoML”技術について解説し、その活用例を示しながら、専門家でなくともAIを実際に動かし、活用することができるようになると述べました。

次に、日本マイクロソフト株式会社・畠山氏は、太田が指摘したマルチクラウド状態を解消するツールとして「Azure Synapse Analytics」の特徴を解説。
「Azure Synapse Analytics」は、バラバラだったツールをブラウザベースで一元化することを可能にしたものであり、視覚的に操作しやすいUIで、予備知識がなくとも操作することができると説明しました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の鮫島氏は、「当社のミッションは“全ての開発者の手に機械学習を届ける”こと」であると述べ、その一方で、機械学習においては「工数」「開発環境」「セキュリティ」に懸念点があるも示唆しました。

その後も三大クラウドベンダーによる三者三様のAIの民主化論が繰り広げられ、それらの持論を総合すると、確実に、「AIがちょっとした時間、お小遣い程度で試せる時代」がそう遠くない未来に近づいてきているのだと感じることができました。


【Tips6】これからの小売業は、デジタルの力で顧客に寄り沿い“絆”を築く


Session:ECのカイゼンで進む小売業のデジタル化。髙島屋と三陽商会が挑む「これからのDX戦略」とは?
株式会社髙島屋 EC事業部 事業部長 西名香織氏
株式会社三陽商会 デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 兼 EC運営部長 安藤裕樹氏
株式会社ブレインパッド ビジネス総括本部 カスタマーサクセス部長 柴田 剛


このセッションでは、小売業界におけるDX活用例を、老舗百貨店・髙島屋とアパレルメーカー・三陽商会の事例をふまえて解説しました。

「小売業界でなぜDXが必要か?」の問いに、髙島屋・西名氏、三陽商会・安藤氏ともにこう答えます。

「お客さまが変化してきているため、小売業というビジネスも変わる必要があるのです」

“モノ”から“コト”へ。
商品を手に入れるためだけであればECを使えば済むかもしれませんが、それでもお客さまが店に足を運んで商品を買うのは、“体験”を求めていることが前提にあるのだと、お二人は語ります。

安藤氏は、DXにおいては、まずインフラが重要であることを指摘。

「DXにトライして分かったのは、インフラ全体の整備が重要だということ。爆発的に増えているデータ量やITデバイスの増加による顧客接点の多様化に対応するためには、部分的なデジタル化は無意味だと感じた」(安藤氏)

そうは言っても長年増築を繰り返してきたインフラを一新するのは至難の業です。三陽商会のインフラマップを見て、髙島屋・西名氏は「当社のマップかと思った。まさに同じ難題を抱えている」と共感を示しました。

続いて西名氏は、髙島屋が「顧客体験」「ワークスタイル変革」「インフラ変革」の3つの視点で実施している「デジタルイノベーションプロジェクト」について言及し、その中の「ワークスタイル変革」として、販売員の動静をリアルタイムで可視化するというDXを実践し、業務効率の向上を実現した成功例を解説しました。
そして、

「百貨店・小売業はライフステージに必要なものが揃います。ビジネスの原点に立ち返り、お客さまの人生に寄り添うライフタイムコンシェルジュとして、LTVベースの事業モデルにシフトしていくことが私たちのDXです」(西名氏)

と今後の展望を語りました。



次の2つのセッションは、残念ながら詳細をお伝えすることができないので、Tipsからその内容を感じ取っていただければと思います。(このような誌面にできないマル秘話を披露するのも「DOORS」の特徴なので、次回もぜひご参加ください!)


【Tips7】ゲスト1人ひとりの行動をカスタマイズ。エンタテインメントを最大限演出するパーソナルレコメンド


Session:USJが目指す「世界最高のEntertainment」にデータはどのように活用されたか?
~年間1500万人来場「ゲスト心理」に寄り添い続けるプロジェクト体験記~
合同会社ユー・エス・ジェイ マーケティング本部 デジタルマーケティング マネージャー 柿丸 繁氏
合同会社ユー・エス・ジェイ マーケティング本部 スーパーバイザー 豊島 拓巳氏
株式会社ブレインパッド ビジネス統括本部 マーケティングビジネス部長 堀川 亮


【Tips8】DXはアーティストの価値をさらに高める。エンタメ領域のデータマーケティングでファンを増加


Session3-B:avexの第三創業期改革。「最強のコンテンツホルダー」が描く、エンタメテック推進におけるデータ活用。
エイベックス株式会社 新事業推進本部 デジタルクリエイティヴグループ ゼネラルマネージャー 山田 真一氏
株式会社ブレインパッド アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部長 奥園 朋実


【Tips9】データから顧客のペインを読み取り、顧客の行動ひいては市場を理解する


Session:DXの中で「マーケティング」はどのように位置づけられるか?
~データ分析の発展的な可能性をデータサイエンティスト達が語る~
株式会社デジタルガレージ CDO 渋谷 直正氏
株式会社日本経済新聞社 DX推進室 データドリブングループ マネージャー/データサイエンティスト 山内 秀樹氏
株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 データビジネスエバンジェリスト 佐藤 洋行


デジタルガレージの渋谷氏、日本経済新聞社の山内氏、モデレータの当社佐藤は、DX実現のためのキー職種となるデータサイエンティストです。このセッションでは、「ユーザー理解のためにデータはどのような役割を果たすか」をテーマに、データサイエンティスト視点でのディカッションが繰り広げられました。

山内氏は、「日経電子版」のビジネス拡大のためにデータマーケティングを取り入れ、記事の閲覧傾向などを分析してその結果をマーケティング施策に活かすことで、現場にデータ活用を定着させた実例を紹介しました。

「編集の現場に入ってみると、良いコンテンツなのに読まれてない記事がある、という課題を発見しました。データに基づいて分析していくと、どの時間帯にどんな記事をアップすれば良いのかなどの傾向が掴めてきて、読者目線の編集・配信が自然なサイクルで回り出し、お客さまのエンゲージメントも上がっていきました」(山内氏)

しかし、現場にデータ活用を定着させるには工夫が必要だったと言います。

「現場は忙しいので、なかなかデータ分析ツールを使えない。そのため、ツールの仕様を変え、見たいデータをツークリックで見れるようにしたり、大きなモニターにデータを投影して皆の目に触れるようにしたり。とにかくデータが見える状況を身近にして、議論が誘発されるように工夫することで、社内のマインドチェンジを図りました」(山内氏)

続いてデジタルガレージの渋谷氏は、「デジタルマーケティングの力でユーザーを理解することが最も根本的で重要である」と語り、「ユーザーを理解する、イコール市場を理解することに繋がる」と解説しました。

「いくら集積したデータで立派なカスタマージャーニーマップを作っても、自分たちがこうあってほしいという願望を予測するだけでは意味はない。『ポイントが即日使えないところが不便』『入力が面倒なサイトだったら登録しない』など、顧客の“ペイン(痛み)”がどこにあるのかをデータ活用によって可視化し、解決すべき課題をつかむことが重要です」(渋谷氏)

そして、ディスカッションの最後には、

「データはユーザーの全てを表しているわけではないので、DXの実現にはデータからユーザーと市場の状況を推察する現場の力が重要」(山内氏)、「お客さまのWeb上での行動から生成された、いわばお客さまから私たちがいただいたデータをサービス改善に役立て、お客さまに還元していくことこそが、これからのデジタルマーケティングの本質である」(渋谷氏)

と提言しました。


【Tips10】食の安全底上げのためのAI活用、協調領域で発揮されるFoodTechの進歩


Session:日本の生命線、食の安全・安心。それを加速させるキユーピー発、「ビジネス協調思考のFoodTech」に迫る。
キユーピー株式会社 生産本部 生産技術部 未来技術推進担当 部長 荻野 武氏
株式会社ブレインパッド 取締役 塩澤 洋一郎
株式会社ブレインパッド CDTO 太田 満久


このセッションでは、キユーピーの荻野氏が、キユーピーが食の安全のために挑戦したAIによる原料検査装置の開発と「協調領域」(業界共通課題)の取り組みについて語りました。

荻野氏は冒頭で「最先端化学の分野で、日本はアメリカや中国に追いついていない現状があった。そのまま個々の企業が業界内で競争しているだけでは、技術者を輩出できる人口の多い国が勝つのが必然だった」と指摘。
このプロジェクトを構想した背景について「AIで何か取り組めることはないか、という役員からの勧めもあって、食の安全に関わる“業界全体の底上げ”を狙い、AIを導入した検査装置の開発に舵を切った」と語りました。

これまで食品業界においても、「協調領域」(業界共通課題)に取り組むのは主にベンチャー企業で、キユーピーのような大手メーカーが他企業との差別化を度外視して新たな挑戦に臨むのは稀有な例だったと荻野氏は振り返ります。

「プロジェクトを始めるに当たり念頭にあったのは、『良い製品は良い原料からできる』というキユーピーの創業者・中島董一郎氏の理念でした。まずは利益でなく志だよね、と。中小企業が多い食品の原料メーカーのためにも、食の安全の価値を高める技術(FoodTech)を役立てる。そういった理由から、同業の食品メーカーも活用できるものを開発しようという目標を定めました」(荻野氏)

AIのビジネス活用経験が豊富ではなかったキユーピーがパートナーとして選んだのがブレインパッドでした。ブレインパッドは、不良品のデータを学習するという従来の発想を一新。良品を学習しそれ以外を弾く「異常検知」を用いて検査精度を向上させることに成功し、キユーピーとともに食品業界内への普及に取り組み続けています。

荻野氏は、日本企業に求められるDXの本質として、
「DXとは、技術を採用することではなくイノベーションを起こすことだと思います。イノベーションは自社の企業理念に賛同するパートナー同士であれば、協力して創り上げていくことができます。各ブランドの差別化では思いっきり競合企業と戦って、協調領域のところは“One for all、All for All”で助け合う。これがイノベーションを促進させる理念です」と語り、講演を締めくくりました。


<最後に>

たくさんの来場者をお迎えし、各セッション満員御礼のうちに今回の「DOORS-BrainPad DX Conference-」は幕を閉じました。各業界のDXへの取り組みとその成果に触れていただいたことを通じて、皆さまが何かしらの気付きやヒントを得、DXの「扉」を開く第一歩を感じていただけたのであれば幸いです。

今後も、ブレインパッドは日本企業のDX推進パートナーとして、データ活用をトータルサポートしてまいります。まずはお気軽にご相談ください。

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