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こんにちは。アナリティクスサービス本部の多根です。
現在、当社には70人超のデータサイエンティストが在籍しています。各プロジェクトでは顧客企業が抱えるさまざまな課題に対してチームを形成し、仮説を立てながら最新かつ最適なロジックを組み立てて検証し、課題解決にあたっています。我々が提供しているアナリティクスサービスは、在庫の最適化、マーケティング施策の改善、異常検知、最新のディープラーニングを使った画像解析など、多岐にわたります。
その中から今回は、「最適在庫問題」をテーマに、リスクを最小化し、利益貢献度の高い運用ロジックを生成する事例をご紹介します。
■「最適在庫問題」を解くにあたって
データ分析やソフトウェア開発を行う際には、ビジネスとして大きな投資(最適化モデルの導入)をする前にPoC(Proof of Concept:実ビジネス投入前の効果検証)を行うことが一般的です。今回ご紹介する事例においても、最初に、おおよその収益改善の余地を知るためのPoCとして、在庫管理の実データから在庫変化率の時系列データを生成・分析して商品の収益比較をし、在庫最適化施策のインパクトの試算を行いました。
■期待需要と最適在庫の関係とは
商品在庫の保有が必要なビジネスにおいて、期待需要と最適在庫はどのような関係になっているのでしょうか。例えば、予測した需要量に対し、実現値が上振れした場合は在庫不足となり “機会損失” が発生します。逆に予測した需要量に実現値が届かなかった場合は “保管コスト”(他の需要のある商品を保管すべき)となります。しかし、“機会損失” と “保管コスト”は同額ではなく、非対称性があるため、それぞれの関係は “期待需要量 ≠ 最適在庫量” となります。以下は、在庫量の日々の変化を表したイメージ図です。
図の在庫の予想誤差分布の中心が将来の期待在庫量ですが、実際に観測される需要量はノイズを含むため、在庫不足が生じて販売機会を逃したり、過剰に在庫を抱えたりすることで保管コストが大きくなってしまいます。そして、予測誤差分布自体は期待値を中心に対称な形状となっていたとしても、商品1単位当たりの保管コストの大きさと販売機会の逸失利益(機会コスト)は異なります。期待値が実現されずに、このようなコストが発生する確率が上記の予測誤差分布で表されることになります。機会コストが保管コストよりも大きければ、期待値よりも多めに在庫を用意する必要がありますし、逆に保管コストの方が大きければ在庫を少なめに保有するほうが良いことになります。このように、最適在庫数を導出するためには、 “機会損失” と “保管コスト” を考慮する必要があります。
今回の事例では4つのステップを実施しました。
- 期待需要量を期待利用回数として推定する
- 需要の経験分布から、期待在庫に対して過不足が生じるパターン・シナリオを生成する
- 在庫数を変化させ、在庫数に応じた収益額を計算する
- 収益が最大となる在庫数を最適在庫数とする。ただし、多期間最適化問題は計算コストが高いため、シングルタームの最適化問題を解いている
日々仕入れができるわけではないために在庫の調整間隔は不定期となること、そして需要量も曜日によって異なるため、シナリオ数と在庫数の組み合わせは膨大となります。
■モデリングにおける課題と対策、そして検証
【課題と対策】
モデリングするにあたって、以下のように3つの課題を解決しました。
【モデルの検証方法と結果】
モデルの効果を検証するために、ABテストによる実験を行いました。ABテストでは、テスト店舗とコントロール店舗を在庫水準が同程度となるように選定し、売上額を比較。その結果、実運用に合った制約を設けることによって約7%の売上額の改善効果を得ることができました。
■本事例はOR学会の春季研究発表会でも講演!
この事例は、今年3月に沖縄県市町村自治会館にて開催された「オペレーションズ・リサーチ(OR)学会 春季研究発表会」でも、アナリティクスサービス本部 副本部長の角谷 督が発表を行いました。OR学会は2,000名以上の個人会員と約60社の賛助会員が所属し、今年創立60周年を迎える歴史ある学会です。春季研究発表会にも、多くの企業や大学から400名を超える参加者が集まりました。
当社は、2016年にOR学会の企業奨励賞を受賞しており、その受賞を記念した招待講演として参加しました。
学会という学術的な話題が多い場において、研究の成果がどのようにビジネスに活用されているのかをテーマとした本講演は、会場にいた多くの方々に新たな視点・関心を提供することができたと思います。講演後には会場の参加者から、データの取得方法や分析手法だけでなくビジネス上の課題についても、多くの質問が寄せられていました。
▲沖縄で開催された研究会。写真(右)が、角谷が登壇した講演の模様です。
今後も当社は、データ活用のリーディングカンパニーとして企業のビジネス創造と経営改善に貢献するために、技術の向上を追求してまいりますので、どうぞご期待ください!
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