こんにちは!マーケティングプラットフォーム本部 コミュニケーションデザイン部の大野です。
2018年8月24日(金)に、Web担当者Forumを運営するインプレス社が主催する 「デジタルマーケターズサミット 2018」 が開催されました。
本イベントは、広告主企業、ユーザー企業のCMO、マーケティング部門、経営企画部門の方々に向けた、「ビジネスを動かす」にあたって本質的なデジタル戦略の理解を深める事を目的としたイベントです。イベント全体を通じて、デジタルマーケティングの活用事例や最新動向を情報発信し、マーケターが「企業活動に果たすデジタル戦略の役割」を改めて考察しようという趣旨で開催されました。
今回、ブレインパッドの講演枠として、ゆこゆこホールディングス株式会社の小寺規晶様をパネラーとしてお招きし、温泉旅館予約サイト 「ゆこゆこネット」 のデジタルマーケティング戦略についてお話いただいたので、その様子をダイジェストでご紹介いたします!
セッション概要
「らしさ」を強みに転換。旅行業界を変革する ”ゆこゆこ”のマーケティングの目指す先
競合ひしめく「旅行業界」で、ゆこゆこ様がどのようにマーケティング戦略を描き、デジタル戦略を実現したのか、事業戦略の観点からデジタルマーケティング戦略立案、そして施策の実施までを、過去からの変遷とともにお話いただきました。
〈登壇者紹介〉
株式会社ブレインパッド
マーケティングプラットフォーム本部
本部長
近藤 嘉恒
ゆこゆこホールディングス株式会社
経営戦略室室長・マーケティング部
部長
小寺 規晶氏
知る人ぞ知る温泉旅館予約サイト、 「ゆこゆこネット」 とは
冒頭では、小寺様にゆこゆこホールディングス株式会社の事業内容やこれまでの変遷についてお話いただきました。
ゆこゆこ様は、温泉旅館・ホテル予約サイト「ゆこゆこネット」と、お宿情報誌「ゆこゆこ」を展開しています。新聞広告や会員向けDMで宿泊プランを紹介し、電話で予約をとる「カタログ通販型」のサービスで、会員数を700万人まで伸ばしてこられました。その会員の多くを占めるのはシニア層です。
そんなシニア層の熱い支持を受け、2017年度に行われた旅行予約サイト顧客満足度ランキングで、ゆこゆこネットが著名企業を抑え「第6位」にランクイン※した事をみなさんご存知でしょうか。今や「知る人ぞ知る “温泉旅館” 予約サイト」としてテレビ番組でも特集され、業界内でひときわ注目を浴びる存在となっています。
※2017年オリコン顧客満足度ランキング旅行予約サイト国内旅行
このように、「カタログ通販型」を強みとしてきたゆこゆこ様ですが、2016年の経営体制変更を機に、デジタルシフトを核とした新戦略を打ち出すなど、「第2創業期」として新たな成長を目指しています。
その実現に向け、ゆこゆこは思い切ったシフトチェンジを進めています。もともとのシニア向け宿泊・旅行事業という位置付けを、敢えて “温泉” という領域に特化した事業展開と再定義することで、「ゆこゆこ様だからこそ提供できる価値=ゆこゆこ ”らしさ” 」の創造を目指しています。
オンライン旅行予約サイト(OTA)業界での差別化を改革につなげるため、専門性を強みに、より「温泉旅」に特化したサービス展開をはじめられたゆこゆこ様は、社員一人一人が、お客様にとって宿や温泉地のことならどんなことにでもお応えできる “温泉コンシェルジュ” である必要があると、社内に啓蒙されています。
社員の「温泉コンシェルジュ化」を目指して取り組まれたのが、 “温泉ソムリエ認定” を全員で取得されるという戦略です。合計112名の方が取得され、「日本で最も温泉ソムリエが多い会社」になった事で、社員ひとりひとりの「温泉(サービス)への向き合い方」が変わってきたとのこと。
スクリーンには小寺氏が取得された「温泉ソムリエ認定証」が映され、小寺氏のプレゼンは温泉愛に溢れていたのがとても印象的でした。
そんな「事業戦略の転換期」となったゆこゆこ様が行ったデジタルマーケティング方針について、代表的な戦略施策をいくつかお話いただきました。
データを使ったデジタルマーケティング戦略へ
ゆこゆこ “らしさ” をWeb上で形にするために必要だったのが、”データによるお客様の理解” でした。断片的なデータだけでなく、あらゆるデータを一元的に蓄積することで、お客様を網羅的に可視化・理解し、そのうえで適切な価値提供の実現を目指しました。
お客様の 「予約データ」や温泉宿の「閲覧データ」だけではなく、コンテンツメディアの「記事閲覧」、さらには泉質などの 「温泉データ」 とさまざまなデータの一元化を構想化し、「お客様の “価値” の可視化」を目指しました。
小寺様:「タビナカ直前の“予約”のところだけでお客様の“心理”を理解しようとするのは、やはり不可能だと思っています。タビマエやタビアトへ(お客様との接点を)広げることによって、「温泉旅行のプロセス全体」のデータを網羅して取得していく。そして取得できたデータを基に、心理を察し、あらゆるコミュニケーション接点、特に“予約”のところでスムーズに情報をお返ししていくことで、「温泉のことなら、やっぱりゆこゆこだな。」 という独自の世界観が作れるのではないかと考えています。」
実際にデータを活用したデジタルマーケティング施策をいくつかご紹介いたします。
【施策事例】データを高度に活用したパーソナライズ施策
ゆこゆこネットに訪れるお客様は、さまざまなシチュエーションにあります。今までは「宿」の閲覧履歴に応じたコンテンツの出し分けを画一的に行っていましたが、ブレインパッドのRtoasterを導入し、「さまざまなデータを蓄積する仕組み」を作り、「データを高度に活用するアルゴリズム」を回し、お客様一人一人に「ピッタリの宿や温泉地」をおすすめする、ゆこゆこ独自のパーソナライズ・レコメンド施策を行っていきました。
施策例❶ 予約サイトの行動データとメディアの記事閲覧データの双方を学習したレコメンド
お客様の「ゆこゆこネット」で取得できる予約・行動データと「YUKOTABI」にあるメディア記事の閲覧データの双方を学習した新たなレコメンドを施しました。両方のデータを学習することで、お客様の閲覧履歴や予約履歴だけでなく、お客様の「趣味・嗜好」や「行動パターン」も掛け合わせて学習することが可能になり、より深い顧客理解による、趣のあるレコメンドが実現できました。
施策例❷ 「宿」軸の閲覧・予約データと「温泉」軸のデータを加味した新たなレコメンド
また、お客様の閲覧・予約傾向に基づいたレコメンドだけでなく、ゆこゆこだからこそ有する「温泉の泉質」や「宿の特徴」なども加味した新たなレコメンドも行いました。お客様の趣味・嗜好に寄せていくだけでなく、「この温泉が好きなら○○の温泉地もおすすめです」 といった、「宿軸」だけではない、「温泉軸」でのレコメンドを施策に組み合わせることで、レコメンドを通してお客様に「新しい発見」を与えることができるようになりました。
お客様にとって温泉コンシェルジュのような存在に
これらのデジタルマーケティング施策を通してゆこゆこ様が目指したのは、お客様にとって温泉コンシェルジュのような存在になることです。お客様の好みやニーズを理解し、お客様一人一人にピッタリの宿や温泉地を紹介できるサイトになりたい。そんな 「温泉コンシェルジュ構想」 の第一歩となったのが、Rtoasterの導入で実現された「データ取得」「データ活用」、さらには「パーソナライズ施策」でした。
小寺様は、Rtoasterの効能が明確に見えたので、今後はさらにその活用を促し、Webやコールセンター、MAなど、お客様とのコミュニケーションチャネルすべてで「“温泉コンシェルジュ”のような接客」が実現できるよう、デジタルマーケティング施策の加速化を目指していきたいと仰っておりました。
パートナーに求めることは?
最後に、小寺様に「お仕事を一緒に行う際のパートナー選定に求めること」についてお話いただきました。
小寺様は、パートナーを選ぶうえでもっとも重要なポイントは、 「自分たちのビジネスに寄り添い、伴走してくれるかどうか」 、そして 「柔軟性とスピード感」 だとお話頂きました。
小寺様:「私たちって、温泉や宿に対しての想いと同様、やりたい事への想いがとても強いんですよね(笑)。とはいえ、実施したい戦略や施策内容も、ときにはフワッとしている事もあります。その中で、そんなシチュエーションを同じ目線で見てくれて、一緒に走りながら、“ああいう感じがいいね、こうできたらいいよね。”と、こちらのこだわりにとことん付き合ってくれる姿勢が、とても大切だと感じています。」
「また、スピード感はすごく大事です。旅行業界は競合参入が激しいので、まさにスピード感がすべてなんですよ。そのシーンをしっかり汲んで、施策をどんどん実行し、サイクル早く改善していける、そして弊社のスタッフを巻き込み、“我々以上に”ゆこゆこのことを好きになってくれて、伴走してくれるのがブレインパッドさんの魅力でした。」
「温泉へのこだわりを理解して、一緒に成長していけるようなパートナーであること」が、ブレインパッドを選んだ理由だと伺い、聴講した私も大変感慨深く思う一言でした。
最後に
今回は、パネルセッションをダイジェストでご紹介しましたが、ゆこゆこ様とのプロジェクトストーリーを事例としてご用意しております。こちらからお読み頂けますので、是非ご覧ください!