マーケティング領域以外にもデータ活用の幅を広げる手段とは!? -J-WAVE×ブレインパッドのデータ多角的活用プロジェクト講演レポート-

2018年11月30日(金)に開催されたトレジャーデータ株式会社主催イベントにて、ブレインパッドは株式会社J-WAVE i様と共同で講演を行いました。講演テーマは「J-WAVEのリスナーと番組理解による先端のデータ活用」というもの。マーケティング施策に偏りがちなデータ活用を、サービスの改善や企画立案に活かす最新事例をレポートします。

J-WAVE×ブレインパッドのデータ多角的活用プロジェクト

こんにちは。マーケティング担当の秋田です。

顧客体験のデジタル化が進み、企業のデータ活用はより一層進んでいます。しかしその範囲は、レコメンデーションやMAなどのマーケティング領域の施策に留まることが多く、それ以外の用途にデータが活用されるケースはそれほど多くありません。

せっかくの貴重な企業のデータを、マーケティング施策だけでなく、顧客理解や自社商品・サービスへの理解、さらにはサービスの改善や企画立案など、もっと幅広くビジネスに活かすことができるとブレインパッドは考えています。

こうした課題意識から、ブレインパッドは様々な企業とデータ活用の可能性を広げる取り組みを行ってきました。私たちのクライアントである株式会社J-WAVE i様もそんな企業の1社。2018年11月30日に開催されたトレジャーデータ株式会社主催のイベント「Treasure Data ”PLAZMA” 2018 in Digital Belt」では、ブレインパッドがJ-WAVE i様と進めるデータ多角的活用プロジェクトの一部を講演の形でご紹介させていただきました。

プレゼンテーターを務めたのは、ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部副本部長 佐藤 洋行。ゲストには、株式会社J-WAVE i 代表取締役社長 小向 国靖様をお招きしました。以下、講演内容のレポートをお送りいたします。

株式会社J-WAVE i 代表取締役社長 小向 国靖様(写真左) 株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 副本部長 佐藤 洋行(写真右)

テキストデータを活用したJ-WAVE i様での取り組み

J-WAVE i様は、ラジオにおけるデータ活用の取り組みを積極的に推進しています。取り組みの一環として、2018年4月には新たなWebサイト「MY J-WAVE」をローンチされました。ブレインパッドは、このWebサイトの企画段階からプロジェクトに参加し、J-WAVE i様のデータ活用の取り組みを支援しています。

「MY J-WAVE」Webサイト (https://www.j-wave.co.jp/myjwave/

「MY J-WAVE」は、これから放送されるJ-WAVEの番組情報(コンテンツ)や、radikoタイムフリーで聞ける聞き逃し番組の情報、イベント・プレゼント情報などを提供するWebサイトです。リスナー一人ひとりの年齢・性別・興味にあわせた情報を提供することで、パーソナライズされたラジオ体験を届けることを狙いとしています。


リスナーにパーソナライズされたラジオ体験を届けるためにまず「MY J-WAVE」サイト内の各番組情報コンテンツが持つテキスト情報から、コンテンツの内容を象徴するキーワードを自動で抽出します。次にリスナーが「MY J-WAVE」のコンテンツ(キーワードが抽出された)を閲覧すると、そのコンテンツがもつキーワードがリスナーの興味関心のあるジャンルとして蓄積されます。従って、リスナー一人ひとりの興味関心をキーワードレベルで把握することが可能になります。

なお、この「MY J-WAVE」において、テキストデータを用いたパーソナライズは、自然言語処理エンジン「Mynd plus(マインドプラス)」とレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster(アールトースター)」で実行しています。

リスナーの興味関心を正確に把握する事がカギ

これまでリスナーやユーザーの興味関心をキーワードレベルで把握する取り組みは一般的に、人力で「タグ」をコンテンツに付与することで行われてきました。しかし人力タグの場合、コンテンツの内容を大きく要約して、「グルメ」「カフェ」など数個のタグを付与することが多いため、リスナーやユーザーの興味関心をざっくりとした形でしか把握できませんでした。

一方、今回の取り組みでは、コンテンツ内に含まれたテキスト情報そのものを、無限に増殖するタグのような形で管理しています。「グルメ」「カフェ」と要約された形ではなく、「表参道」「ブックカフェ」「有機野菜」「オーガニックコーヒー」「キッシュ」etcといった風に、コンテンツ内で実際に使用されている全ての単語の中からキーワードをピックアップするので、ユーザーの興味関心を正確に把握することが可能になります。

もちろん、手間やコストを厭わなければ、同等のアウトプットを人力で行うことは不可能ではありません。実際に、米大手ネット動画配信サービス「Netflix」は、タガーと呼ばれる専門職を30名ほど擁し、作品にタグを付与する作業を人力で行っています。しかし、一般企業が「Netflix」と同様の取り組みを行うことは現実的に難しい状況にあります。

そこでブレインパッドは、「Mynd plus」「Rtoaster」を活用し、短期間に低コストで、詳細なタグ付けを実現する方法を提案しています。「MY J-WAVE」では、わずか1カ月という短期間で、この仕組みを構築することに成功しました。

【データの多角的活用1】リスナーの興味関心に基づくコンテンツレコメンド

それでは、こうした仕組みで取得したリスナーの興味関心データを、具体的にどう活用しているのでしょうか。最初にご紹介したのは、データ活用の王道とも言えるコンテンツレコメンドの事例です。

例えば、「MY J-WAVE」にてリスナーAさんが『ビートルズ』『ジョン・レノン』に関するコンテンツを閲覧したとします。これらの閲覧情報から「リスナーAさんは『ビートルズ』『ジョン・レノン』に興味がある」という興味関心のキーワード情報を蓄積し、同時にその他に『ビートルズ』『ジョン・レノン』について書かれたコンテンツがないかを探し出し、類似コンテンツをリスナーAさんにレコメンドします。

さらに「MY J-WAVE」では、こうしたリスナーの興味関心に加えて、アンケートで取得した属性情報もレコメンドに反映しています。下記は「MY J-WAVE」で行われている、初訪ユーザー向けアンケートのイメージです。

質問内容は[年齢][性別][気になるジャンル]を問う簡単なもの。質問に回答するとリスナー情報を蓄積するのと同時に、その次の画面において即座にパーソナライズされたコンテンツの表示を開始します。

コンテンツのレコメンドでは、ユーザーのWebサイト閲覧履歴がある程度蓄積されるまで、ふさわしいレコメンドが行われない「コールドスタート問題」があります。「MY J-WAVE」では、初訪リスナー向けの簡易アンケートを実装することで、この問題を回避するだけでなく、リスナー情報をさらに厚く取得することに成功しています。

【データの多角的活用2】番組理解から営業時の提案へ

では、本講演のテーマである、リスナーの興味関心データをマーケティング以外の領域に活かそうとする2つの取り組みをご紹介しましょう。

取り組みのきっかけは、J-WAVE内の番組情報を元にリスナーと番組、それぞれに関する詳細なキーワード情報が取得できたことにあります。これらを分析することで、サービスの改善や、企画立案のヒントが得られるのではないか?こうした仮説から取り組みがスタートしました。

まずは番組データを分析し番組を理解する取り組みを行いました。各番組が持つキーワードを抽出し、その内容に基づいてクラスタリングを実施。その結果、番組は合計12個のクラスターに分類されました。

以下は、その中から2つのクラスターを取り上げ、それぞれを構成するキーワード群で表現したものです。

番組情報を元に各番組をクラスタリングしたこの取り組みについて、J-WAVE i 小向様はこのように印象を語りました。

「データの観点から番組をクラスタリングすると、“この番組とこの番組が同じくくりになるんだ!”という新鮮な驚きがありました。今やこういったデータや数値の裏付けがなければ、広告への投資判断ができないという企業やマーケターの方も増えていますので、分析結果を営業ツールに活用していくのは、有効な取り組みなのではないかと感じました」

【データの多角的活用3】リスナー理解から番組の企画立案へ

続いてはリスナーを理解する為の分析です。番組情報とリスナーの行動・閲覧履歴を元にリスナーのクラスタリングを行いました。リスナーも合計12個のクラスターに分類され、そのうち5つのクラスターで全体の75%を占めることがわかりました。

次に、各クラスターのリスナーが、J-WAVEのどの番組に興味を持っているかを分析しました。その結果をラジオ番組表上に展開したものが下記の図です。これはJ-WAVEリスナーの番組への興味を示すヒートマップとも言えます。

「MY J-WAVE」ではアンケートによってリスナーの属性情報も収集していますので、これを各クラスターの情報に重ね合わせると、「あるクラスターは、30代女性が大半を締めており、主に○○と▲▲をテーマにした番組に興味がある」といった情報が得られるようになるかもしれません。

こうした示唆は、広告主だけでなく、番組を制作するJ-WAVE様にとっても有効なものになるはずです。番組の企画立案や、パーソナリティーの起用、ゲストのキャスティングなど、データを番組づくりに活かす未来がすぐそこに迫っています。

自社独自のデータから多角的なデータ活用に

蓄積されたデータから顧客の興味関心を浮き彫りにし、その過程で得られた示唆や知見を、マーケティング以外の領域に活かしていく事例をご紹介させていただきました。

ご紹介した事例は、いずれも取り組みの初期段階ではありますが、J-WAVE i様が独自に持っているデータを活用しています。自社の独自データから今後取り組みをさらに深化、洗練させることで、J-WAVE様・リスナー・広告主の3者によるエコシステムの形成に貢献したいとブレインパッドは考えています。

蓄積されたデータを、マーケティング領域だけでなく、サービスの改善や企画立案など、幅広くビジネスに活かしていきたい──このような希望をお持ちの企業は、ぜひブレインパッドにお声がけいただければと思います。

未来を切り拓くデータ活用を、みなさまとともに考えていきたいと思います。


J-WAVE

Rtoaster

最後に、「ブレインパッドで働いてみたい」と思っている方や「このイベントでブレインパッドに興味を持った」という方は、お問い合わせください!

www.brainpad.co.jp