バズワードとしての「人工知能」【第1回】

バズワードとしての「人工知能」

ブレインパッドグループ、Mynd株式会社の原です。
「ビッグデータ」、「IoT」(※1)、「機械学習」(※2)などに続いて「人工知能」という言葉も世間を賑わせるようになりました。しかし、実際のところ、「人工知能」はどれくらいの社会的インパクトを持っているのでしょう?そして、ビジネス領域、その中でも特にマーケティング領域にどのような影響を与えるのでしょう。

もちろん未来のことは分からないのですが、正しい技術センスのある方ほど、今の「人工知能」はバブルの匂いがするなぁ…と感じているのではないでしょうか。(ちなみに、こういう時は「バブル」より「ハイプ(“Hype”誇大な宣伝の意)」という言葉を使う方が技術通な感じがします)。

実際、「人工知能を搭載した」であるとか、「人工知能を応用した」といった謳い文句の製品やサービスのあれこれを見るに、どうも単に「コンピュータによって自動化されている」に過ぎないのではないか、と感じる人も少なくないかもしれません。

そこで当ブログで2回にわたって、人工知能研究の第一人者である松尾豊先生(※3)の提唱するキーワード、「人工知能のS型とD型」の視点から、世間で起こっているいわゆる「人工知能」のブームを整理してみたいと思います。


深層学習のインパクトと統計/機械学習のパワー

「人工知能」ブームのきっかけを考えてみるに、二つの要素がありそうです。一つは深層学習(Deep Learning)(※4)、もう一つは統計学と機械学習への注目です。深層学習というものがブレイクスルーと言って良いほどの圧倒的な性能を叩き出したらしい、画像認識ではもう人間を越えたらしい、という話題。後者は、統計学や機械学習の応用によって、コンピュータがデータから自動的に「学習」して、状況をコントロールしていくようなアプリケーションが広がってきた、という事実です。

深層学習は機械学習の一分野ですから、どうやら機械学習が発展して、人間を越える認識力を持つようになり、機械が人間の知能を代替できるようにさえなりそうだ、それどころか、とてつもないことが実現しそうな気がしてきた、という感じでしょうか。

人工知能のD型とS型

そんな状況を曇りなく理解するための手がかりが、「D型 / S型」の区別です。
9月中旬に松尾先生をお招きし、ブレインパッド社内限定で講演をしていただいた際に、私自身もこの「D型 / S型」を知って、霧の晴れるような思いがしました。D型のDは“Disruptive”(破壊的)、S型のSは “Sustaining”(持続的)の頭文字からとられたそうです。「Dは赤ちゃん、Sはオトナ」というキャッチーな説明もされていました。

次回は、このD型/S型について説明しながら、それがビジネスやマーケティングの世界にどう関係するのか、ブレインパッドとMyndを例に書いてみたいと思います。

(※1)「Internetof Things(モノのインターネット)」の略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するさまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

(※2)コンピュータが収集した過去のデータの中から導き出した知識やルールを、新たに収集したデータに適用することで、そのデータの意味を認識・分類したり、未来に起きることを判断・予測したりする技術のこと。

(※3)松尾 豊先生ご紹介
東京大学大学院工学系研究科 総合研究機構(若手育成プログラム)/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻 准教授
東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 消費インテリジェンス寄付講座 代表
http://ymatsuo.com/japanese/

(※4)多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習のこと。(「ニューラルネットワーク」:脳機能の特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデル)